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傷痕ケロイドの症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27
傷痕ケロイド

傷痕ケロイドとはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

傷痕ケロイドとは

外傷やニキビなどで皮膚が傷つくと、傷痕ができることがあります。本来なら時間経過で自然に傷痕は消失。ところが、その傷痕がもとのサイズよりも拡大して赤く盛り上がってしまうことがあり、このような症例をケロイドといいます。

他人の目に触れるような部位にできれば、強い精神的負担を抱えることになりかねません。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

手術後の傷などが一旦治ってから1-2か月して赤く盛り上がることがあります。これは、傷の治る際に原因不明の炎症が過剰に続いている状態とされています。この赤く目立つ傷は、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)とケロイドとに分けられます。周囲に拡大せずに、数か月から数年かけて自然に萎縮するものを肥厚性瘢痕といい、もともとの傷の範囲を越えて、周りの皮膚にまで盛り上がるものをケロイドといいます。

肥厚性瘢痕とケロイドの区別は、見た目だけでは難しいと言われています。

傷痕ケロイドの症状

傷痕ケロイドの症状は、赤く盛り上がり、痛みや痒みを伴うことがあります。ときにはケロイドの部位がひきつって動きに制限が生じます。

皮膚は外側から内側に向かって表皮、真皮、皮下組織という構造になっていますが、ケロイドは真皮が傷つき、炎症を起こす疾患です。傷痕ケロイドのできやすさや大きさは、そのときの傷の深さや状態だけでなく、本人の体質(ケロイド体質)にも影響してきます。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
赤く盛り上がるという見た目の問題もありますが、肥厚性瘢痕やケロイドには痛みや痒みを伴うことがあります。赤く盛り上がって広がるときが強くなることがあり、さらに、大きな塊になっている場合は、塊の中に埋もれた皮膚成分が化膿して痛みを伴うことがあります。

傷痕ケロイドの原因

傷痕ケロイドとなる原因として、火傷や手術の傷からできるものが多くみられます。ピアスを作るときにできた傷が原因になることもあります。また、知らない間にケロイドができてしまうことがあります。たとえば、皮脂腺の多い背中や胸のあたりなどにできたニキビの存在に気づかず、小さなケロイドができたときに、やっと気づくというケースも少なくありません。

また、ケロイドは皮膚の濃い人ほどできやすく、白人の方はできにくいといわれています。妊娠などもケロイドの原因になることがあります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

肥厚性瘢痕やケロイドの原因は、いまだ解明されていません。

一般的には、傷の治り具合は体質の影響が大きいと言われています。遺伝的な要素としてケロイドができやすい体質(いわゆるケロイド体質)というものはありますが、他の要因も多く存在します。

皮膚の緊張が強いところ(引っ張られる部位:胸や肩など)や傷が化膿した場合(傷が治るのに時間がかかった場合)などにケロイドができやすいと言われます。また、ピアス後の耳たぶ、帝王切開後の下腹有毛部もよく見られまる部位です。

傷痕ケロイドの検査法

傷痕ケロイドの検査ですが、よく似た疾患がいくつかあり、治療前に鑑別する検査を行います。ケロイドとよく似ているのは、肥厚性瘢痕という疾患。ケロイドとは治療方針が異なる場合があり、治療前にケロイドと肥厚性瘢痕を鑑別する検査が必要です。そのほかにも、まれにですがケロイドの状態によっては悪性腫瘍との鑑別検査もします。

検査方法は生検が一番確実ですが、皮膚を採取する行為がさらにケロイドを拡大してしまうリスクがあります。そのため、数多くの症例を診てきた専門医の下で検査することが重要です。

傷痕ケロイドの治療方法

傷痕ケロイドの治療法は、ケロイドの部位や状態によって決めていきます

手術をしない保存治療法には内服薬(一般名:トラニラスト、商品名リザベン)、ステロイド局所注射、外用剤、レーザー治療(保険適用なし)、圧迫・固定治療、シリコンジェルシート治療(シリコンジェルのシートを長期貼布)などです。

一方、保存治療法で改善されない場合、あるいは人目につくような部位にケロイドがある場合などは手術を選択することがあります。これまでの手術法では再発しやすく、また、再発によってケロイドがさらに拡大することが少なくありませんでした。しかし、近年は手術時の縫合手技の工夫や改善、手術後の放射線治療などで改善率が上昇しています。ただ、再発防止のため、術後2年間は経過観察が必要です。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

肥厚性瘢痕やケロイドの部位や状態によって考えていきます。

外科的療法
ケロイドを手術で切除する方法です。テーピングや電子線照射または、ステロイド局所注射を併用します。最も根治的な治療法であり、経過が良好な場合は1本の白い線にすることが可能ですが、経過が悪い場合はもとのケロイドより悪化する可能性があります。

保存的治療
ステロイド剤の局所注射あるいはテープ貼付などによって、かゆみ・痛みといった症状の軽減や、ケロイドの盛り上がり、硬さの改善が期待できます。注射の痛みが強いことが欠点として挙げられます。また、ステロイド剤の副作用として、皮膚が薄くなってしまったり、変形したり、月経不順(女性の場合)などがあります。
また、抗アレルギー薬であるトラニラストの内服も行われます。肥厚性瘢痕、ケロイドの原因である、皮膚繊維過増殖を抑える効果があります。切除術と併用することもありますが、切除術後の再発を抑える効果もあります。

傷痕ケロイドの予防方法

傷痕ケロイドの予防法は、なるべくニキビや傷を作らないようにすることであり、とくにケロイド体質の人や近親者にケロイド体質の人がいる場合は、要注意です。

最近はお化粧の仕方でもケロイドを薄く、あるいはわからなくさせることができるようになったといわれています。とはいえ、ケロイドもほかの病気と同じように早期発見、早期治療が第一であることは、いうまでもありません。

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