アナフィラキシーショックの症状・原因・治療方法について
アナフィラキシーショック(読み方:あなふぃらきしーしょっく)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
川本 徹 医師 みなと芝クリニック 院長
アナフィラキシーショックとは
アナフィラキシーとは、急激なアレルギー反応によって、全身に症状が強くあらわれる状態のことをいいます。特に、血圧が低下して全身に十分な血液が回らなくなり、意識状態も悪化するなどの症状を来した状態をアナフィラキシーショックといい、速やかに病院で適切な対応を進めないと致命的になる重症疾患です。
アナフィラキシーショックの症状
アナフィラキシーの症状は、全身のいろいろな症状が同時に急激に進みます。じんましんやかゆみ、発赤などの「皮膚症状」は最初に起こることが多く80%~90%にみられます。それ以外にも、咳や喘鳴、息苦しさなどの「呼吸器症状」、目や唇の充血、腫れなどの「粘膜症状」、嘔吐や下痢などの「消化器症状」などが出現します。なかでも最も注意すべき症状は「神経症状」で、血圧が低下して脳に十分な血液が回らなくなり、意識もうろうになった状態です。これは、アナフィラキシーショックに陥っている可能性が高く、迅速に対応しないと命にかかわることがあります。
呼吸困難や血圧低下を伴い、ショック状態に陥り危険な状態となります。現在、応急処置薬のエピペン(アドレナリン自己注射薬)というものがあります。これはアナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。
アナフィラキシーショックの兆候があったら、すぐに注射をして医療機関を受診するのが望ましいです。特にアレルギーを持っている小さいお子さんがいる場合、周りの大人は十分に注意する必要があります。
アナフィラキシーショックの原因
アナフィラキシーの原因として、小児、特に小学生や中学生で生じる場合の多くは、卵や牛乳、えびなどといった食べ物が挙げられます。そのほかにも、ハチなどの虫刺されによるものや、天然ゴムによるラテックスアレルギー、薬品による薬物アレルギー、病院の画像検査で用いる造影剤などが原因となることもあります。
また、特定の食べ物を食べたあとに運動をすることでアナフィラキシーを起こすこともあり(運動誘発性アナフィラキシー)もあります。
アナフィラキシーショックの経過と対応
症状の出現時間は原因となる抗原へ曝露される様式によって異なります。
例えば、ハチに刺された場合は5~10分以内に症状が出現します。
食べ物の場合は消化管で消化、吸収される時間があるため食後30分~1時間くらいかかり、2時間以内に出現することが多いといわれます。
また、治療を受けた後などの、初期症状が改善した後に再度アナフィラキシーの症状が出現することもあります。アナフィラキシーを疑った場合には速やかに医療機関を受診する必要があります。また、以前に重篤なアナフィラキシーを起こした既往がある場合には、軽微な症状でもアナフィラキシーの前兆の可能性がありますので、医療機関の受診が勧められます。特に、じんましんなどの皮膚症状に加えて、呼吸困難やめまい、倦怠感、腹痛、嘔吐などの症状が出現した場合や、アレルゲンへの曝露が分かっている場合には、アナフィラキシーの可能性が高まりますので、救急車を呼んでください。
また、現場での対応としては、症状を悪化させないために原因を除去することが重要です。食物アレルギーのある食品を食べた場合には、口から出し、しっかり口をすすぎます。皮膚についた場合には流水でよく洗い流し、眼に入った場合にもよく洗眼します。ハチに刺された場合には、速やかにその場から離れることが大事です。
めまいや気の遠くなる感じなど血圧の低下を示す症状がある場合には、横になり(仰向け)嘔吐がなければ毛布などを用いて両足を上げます。足を上げることで心臓に戻る血流が増加するために血圧の上昇が期待できます。嘔吐する、あるいは、意識状態の悪い場合には、吐物をのどに詰まらせたり、舌が気道を狭くし呼吸困難を起こしたりする可能性があります。横向きで寝かせて、応援や救急隊が到着するのを待ってください。
アナフィラキシーショックの治療方法
アナフィラキシーは即時型アレルギー症状のひとつなので、症状を起こさないためには原因となるものを食べない(接触しない)ことが必要です。
アナフィラキシーが起こった場合には、その症状を抑える薬を投与します。
アナフィラキシーの症状を抑える第一選択薬は、速効性があり効果も高いアドレナリンの筋肉注射です。
このほかにじんましんや痒み、鼻水を抑えるための抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)や、遅れてでてくる症状を予防するためのステロイド薬などの飲み薬を一緒に使用する場合もあります。
なお、アナフィラキシーの症状は、一旦治まったように見えてから再び症状がでてくることもあるため、注意が必要です。
アレルギー体質に関しては、大人になるにしたがって少量ずつ抗原に曝露されていくと、減感作療法と同じように免疫が反応しにくくなるといったことはあるかもしれませんが、薬で完治するというのは難しいです。免疫抑制剤やステロイド剤を飲めば反応は抑えられますが、副作用が大きいので通常はこういったことは行いません。少しずつアレルギーの原因物質(抗原)を舌の下にいれる舌下法による減感作療法や、皮下注射による減感作療法もありますが、一時期この治療法でショックを起こして事故になったケースもあって、特に食物アレルギーでは専門家による入院での治療以外は推奨される治療法ではないと言われることもあり、難しいと思われます。
もう一つのアレルギーの経路として、食物アレルゲンが皮膚から入ってくることがあり、それによって自然に感作されて抗体を持ち、自分が食物アレルギーであることを知らずに原因物質を食べた後、アナフィラキシーショックになるといったこともあります。