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カンピロバクター食中毒の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

カンピロバクター食中毒(読み方:かんぴろばくたーしょくちゅうどく)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
春名 令子 医師(はるなクリニック副院長)

カンピロバクター食中毒とは

カンピロバクター菌とは古くからウシやヒツジなどの家畜で流産や腸炎を起こす菌として注目されていましたが、1970年代に入りヒトにも腸炎を起こすことが判明し、我が国においても1982年には食品衛生法で厚生省に報告する食中毒事件票の「病因物質の種別」の中に加えられ、食中毒起因菌として指定されました。カンピロバクター属の内で、ヒトに腸炎を起こす菌種としてカンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリが知られていますが、実際に検出されるのはほとんどカンピロバクター・ジェジュニです。

引用:愛知県衛生研究所生物学部
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/67f/campylobacter.html

春名令子 医師(はるなクリニック副院長)ドクターの解説
カンピロバクター食中毒は、サルモネラ食中毒と同じ「感染型」で、少量の細菌でも強い感染力があるため、細菌を食べ物に付着させないことが重要です。気をつけたい食物は生肉、特に鶏肉です。バーベキューの際に手洗いが不十分だったり、不衛生な調理器具を介して細菌が他の食品に付着したり、肉を生焼けのまま食べてしまったりすることで、集団感染を起こすケースもあります。包丁やまな板などの調理器具や調理する人の手は常に衛生的に保ち、しっかりと乾燥させ、調理を開始した食材はなるべく早く、十分に加熱するよう心がけましょう。

カンピロバクター食中毒の症状

原因となる食品を食べてから、平均2~3日の比較的長い時間を経て発症します。腹痛、下痢、発熱、頭痛、嘔吐等を起こします。

引用:日本食品衛生協会
http://www.n-shokuei.jp/eisei/sfs_index_s09.html

春名令子 医師(はるなクリニック副院長)ドクターの解説
カンピロバクター食中毒が多発するのは、主に夏場です。血便が出ることと、潜伏期間が長いことが特徴で、血便の症状を訴える患者さんには、受診前日だけでなく数日前まで遡って何を食べたか確認することになります。患者さんに心当たりがなくても、生肉だという認識がないまま食べてしまったというケースもありますので詳しく聞き取ります。カンピロバクター食中毒は、食中毒の中では子どもが感染しやすい傾向があります。嘔吐などの症状が出て安静にする場合は、もし吐いても吐瀉物が気道をつまらせないよう、仰向けで横にならないように注意が必要です。

カンピロバクター食中毒の原因

下痢等の症状があるか、もしくは一見健康そうな家畜(牛、豚、鶏)、あるいはペット(犬、猫)などの腸管内にもカンピロバクターは存在し、これらの動物の排泄物により汚染された食品や水を介して人に感染します。また、比較的少ない菌量(100個程度)で感染が成立することから、小児ではペットやヒトとの接触によって直接感染することもあります。鶏肉などの肉類は本菌により汚染されている可能性も高く、そのため、これらの食品はカンピロバクター食中毒の主要な原因食品にもなっています。また、この菌は低温に強くて4℃でも長期間生存しますので、一般の細菌と同様に、または、それ以上に冷蔵庫の過信は禁物です。

引用:愛知県衛生研究所生物学部
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/67f/campylobacter.html

カンピロバクター食中毒の検査法

便のサンプルを採取し、検査室で細菌を増殖させる検査(培養検査)を行います。ただし、常に便サンプルの検査が行われるわけではありません。便サンプルの培養は完了までに数日間かかるうえ、通常は下痢の原因菌を特定しなくても効果的な治療が可能なためです。とはいえ、血性下痢(出血を伴う下痢)がみられる場合や患者が重篤な状態に見える場合は、通常は便の検査が行われます。

細菌が特定されたら、その菌に効果を示す抗菌薬を調べる検査(感受性試験)を行います。

血液の感染が疑われる場合は、血液サンプルを採取して培養検査を行います。

引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/16-感染症/細菌感染症/カンピロバクター-感染症

春名令子 医師(はるなクリニック副院長)ドクターの解説
カンピロバクター食中毒を調べる際は、主に便の検査を実施しますが、結果が確定するまでに数日かかります。このため実際の診療では、患者さんが希望しない限り特に検査は実施せず、最近食べたものや血便が出ていないかなど、問診で聞き取った内容からカンピロバクター食中毒と推察して対症療法を開始する流れが一般的です。もし患者さんに血便の症状があり、嘔吐など他の症状も重度の場合は、専門的治療が可能な医療機関への受診を勧められるでしょう。

カンピロバクター食中毒の治療方法

多くの場合、特に治療をしなくても1週間程度で状態が改善します。

患者によっては、静脈または口からの水分補給が必要です。高熱、出血を伴う下痢、重度の下痢がみられる場合や症状が悪化した場合には、アジスロマイシンを3日間、またはエリスロマイシンを5日間使用します。これらの薬は経口で使用されます。

血液に感染が及んでいる場合は、イミペネム、ゲンタマイシン、エリスロマイシンなどの抗菌薬を2~4週間使用します。

引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/16-感染症/細菌感染症/カンピロバクター-感染症

春名令子 医師(はるなクリニック副院長)ドクターの解説
カンピロバクターは細菌ですが、抗生剤を使うと体外への排出を遅らせてしまうことがあります。治療の基本は対症療法で、嘔吐や下痢などで細菌を体外に排出して体が自然と回復していくのを安静にして待ちます。脱水症状を改善するために経口補水液や点滴で十分な保水を心がけます。体内の水分バランスを整える「五苓散」という漢方薬も効果的です。嘔吐をしている急性期の食事は固形物を避け、水分摂取を基本に、電解質を含むものや吸収の良いものを選びましょう。家庭で看護する場合は感染拡大を防ぐために手洗いや消毒を心がけましょう。

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