心筋梗塞の症状・原因・治療方法のご紹介
心筋梗塞(読み方:しんきんこうそく)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
品川 弥人 医師(しながわ内科・循環器クリニック院長)
心筋梗塞とは
心臓は全身へ血液を送り出すポンプです。心臓を構成する心筋へ血液を送る血管を冠動脈といいます。冠動脈が完全に詰まり、血流がとだえてしまうとその部分の心筋が壊死してしまいます。この状態を心筋梗塞といいます。
心筋梗塞の症状
心筋梗塞の症状として最も特徴的なのは、脂汗が出るほどの激しい胸の痛みです。「痛み」というよりも、胸が締め付けられるような圧迫感、焼けつくような感じ、と表現する人もいます。
狭心症とは違って、症状が一時的(数分から15分程度)ではなく30分以上続くので、恐怖感や不安感を伴います。
痛む場所は、主に胸の中央部から胸全体にかけてですが、左胸から顎のあたり、左肩から左腕にかけて広がる場合もあります。このため、心臓から来る痛みとは思わず、胃痛や歯痛などと勘違いする人もいます。背中が痛むこともあります。
呼吸が苦しい、冷や汗が出る、吐き気がする、といった症状を訴える人もいます。顔面が蒼白となり、脱力感を覚え、動悸やめまい、失神、ショック症状を呈する場合もあります。
心筋梗塞の原因
心筋梗塞の原因は、動脈硬化がほとんどです。
高血圧や脂質の過剰摂取などのさまざまな要因で血管が柔軟性を失い、硬くなってしまう現象を動脈硬化といいます。動脈硬化が進むと、血管壁が厚みを増し、血管の内径が狭くなります。こうして血流が悪くなった状態が狭心症です。心筋梗塞の大部分は、その動脈硬化の進んだ血管壁の内側に、脂質(脂肪分)から成るコブのようなものができることで発症します。
まず、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血液中に増えすぎると、傷のついた内皮細胞(動脈の血管壁を形作っている一番内側の細胞)のすき間からLDLコレステロールが血管壁の内側に入り込みます。
続いて、それを退治しようとする免疫細胞や、その他の細胞も入り込むため、血管壁がコブのように膨れ上がります。この「アテローム(粥腫【じゅくしゅ】)」と呼ばれる脂質のコブ(プラーク)が大きくなって破裂すると、そこに急速に血の塊(血栓)ができ、血管が塞がれてしまいます。これが心筋梗塞です。
心筋梗塞の検査法
詳細な問診を行ったうえで、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図検査、心臓超音波検査を行います。
血液検査
心臓にかかる負担を客観的に示す数値(NT-proBNP, BNP)や心筋梗塞の有無を迅速に調べる項目などがあります。また、虚血性心疾患の危険因子を評価することもできます。
胸部レントゲン検査
心臓拡大の有無や心不全の有無を確認することができます。
心電図検査
心筋梗塞の有無、心臓肥大、心筋障害、不整脈の有無などを調べることができます。
心臓超音波検査
心臓の機能、心筋の動き、心臓弁の状態、心室壁の厚さ、左心室や左心房の大きさなどを把握することができます。
さらに、狭心症が疑われる場合は運動負荷心臓超音波(エコー)検査を行います。心筋梗塞が疑われる場合や運動負荷心エコーで異常所見があった場合は、造影剤を用いた心臓CT検査やカテーテル検査を検討します。
心筋梗塞の治療方法
主な治療法としては、薬物療法、経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス手術があります。
薬物療法
血圧を下げる降圧薬、心臓への負担を軽くするための血管拡張薬、冠動脈を拡張させる硝酸薬、血液をさらさらにする抗血小板薬、体内の水分を排泄する利尿薬、心筋の収縮を助ける強心薬などを、それぞれの症状に合わせて使用します。経皮的冠動脈インターベンション
手首や腕の血管からカテーテルをすすめ、冠動脈の狭くなった部分を内側から膨らませ、血液の流れを良くする治療法です。体に大きな傷を付けることなく、局所麻酔で行うことが出来ます。冠動脈バイパス手術
冠動脈の詰まった部分の先に迂回路(バイパス)を作り、狭心症や心筋梗塞の原因となっている心筋の血流不足を改善する手技です。
経皮的冠動脈インターベンションよりも侵襲性は高いのですが、それぞれメリットとリスクが異なるため、症状や年齢、健康状態などを勘案して選択します。