水腎症の症状・原因・治療方法とは?
水腎症(読み方:すいじんしょう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
名城 文雄 医師 なしろハルンクリニック院長
水腎症とは
水腎症とは腎臓で作られた尿の流れがせきとめられて、尿の通り道や腎臓の中に尿がたまって拡張した状態をいいます。拡張の程度はさまざまで、腎臓が尿でボールのように膨らんで見える場合もありますし、正常に比べてわずかに拡張しているだけで病気とはいえない軽いものまであります。尿は川の流れのように腎臓から尿管、膀胱、尿道へと流れて体外に出て行きます。この流れの途中に狭い場所、流れにくい場所があるとそこより上流の尿路が拡張して水腎症が生じます。こういう病態を「尿路閉塞」と呼びますが、完全に閉塞しているわけではなく多くの場合、狭窄があっても尿は流れています。
引用:東京女子医科大学病院 泌尿器科
http://twmu.ac.jp/KC/Urology/disease/child/hydronephrosis/
水腎症の症状
腎臓や尿管に尿が貯留して大きくなったため,これをお腹のしこりとして触れたり,お腹の痛み( 鈍痛,疝痛 )を示したり,あるいは貯留した尿に細菌が感染して高熱を出すこともあります.まれに両側の強い水腎症のため 腎不全 症状を示すこともあります.このように何らかの症状がきっかけで発見される水腎症の他に,胎児期から新生児・乳児期にかけての 超音波検査 で発見される機会も増えています.
引用:日本小児外科学会
www.jsps.gr.jp/general/disease/gu/66ytr6
水腎症の原因
子供で見つかる水腎症のほとんどは先天性の原因で尿の通りが悪くなったものです.尿管の壁自体の動きが悪かったり,腎盂から尿管が出る位置が高過ぎたり, 血管などにより外部から圧迫されていることもあります.その他,結石や腫瘍などの後天的な原因で水腎症が発生することもあります.
引用:日本小児外科学会
www.jsps.gr.jp/general/disease/gu/66ytr6
水腎症の検査法
問診により、いつから水腎症が指摘されているのか・水腎症による症状の有無などを確認します。
水腎症の程度は超音波検査で行います。水腎症の程度はSFU分類がよく使われており、程度の軽い1度から程度の強い4度の間で評価を行います。
1-2度の比較的程度の軽い場合には、定期的な超音波検査による経過観察を行います。
3-4度の比較的経過の強い場合には核医学検査にて腎臓の働きの評価が必要になります。自然軽快も期待されるため、腎の働きに異常のない場合には超音波検査と核医学検査により経過を見てゆくことになります。引用:北海道大学大学院医学研究院 腎泌尿器外科学教室
http://toms.med.hokudai.ac.jp/patient/shouni/shouni05/
・超音波検査:痛みや放射線被爆もなく患者さんの負担が少ない検査です。ベッドサイドで手軽に行え、水腎症の程度や尿路通過障害の状態を調べるのにとても有用です。また、産婦人科での出生前検査で胎児の先天性水腎症を見つける事が可能です。
・CT検査:超音波検査より情報量が多く、水腎症の程度や尿路閉塞の部位と原因を発見するのに有用です。
・排尿時膀胱尿道造影:膀胱にたまった尿が腎臓へ逆流する病気(膀胱尿管逆流症)が疑わしい場合に行います。
・腎シンチグラム:腎臓の機能および尿路狭窄の程度を調べる検査です。この検査は小児の水腎症の治療過程でも良く行われます。小児の水腎症は高度の水腎症でも腎機能が保たれている場合が多く適切な治療により水腎症の回復が期待できるので、水腎症の治療前後の腎機能を評価する目的で利用します。
水腎症の治療方法
症状がなく見つかる水腎症は自然によくなる場合も少なくないため、特に治療を行わず経過観察を行います。水腎症側の腎臓の働きが低下する場合や尿路感染、腹痛などの症状を呈するときには手術による治療を行います。
引用:北海道大学大学院医学研究院 腎泌尿器外科学教室
http://toms.med.hokudai.ac.jp/patient/shouni/shouni05/
小児の先天性水腎症:子供さんの年齢、水腎症の程度,腎機能の程度,尿路通過障害の程度,痛みや感染の有無などを総合的に評価して手術適応の有無を判断いたします。手術法は 尿路通過障害の原因によって方法は異なります。
成人の水腎症:尿路結石、前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)、前立腺がん、尿路腫瘍(腎盂腫瘍、膀胱腫瘍)、炎症、転移性がん等原因となる疾患がみつかった場合にはこれらの治療が基本となります。尿路閉塞を解除するために、一時的に尿管ステント留置、尿道カテーテル留置、経皮腎瘻造設、経皮膀胱瘻造設等を行う場合もあります。