急性腎盂腎炎の症状・原因・治療方法について
急性腎盂腎炎(読み方:きゅうせいじんうじんえん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
名城 文雄 医師 なしろハルンクリニック院長
急性腎盂腎炎とは
尿路感染症は通常尿道から細菌が侵入することにより発症します。侵入した菌がどこで増殖し、人に害を与えるかにより、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎などに分類されます。これらの尿路感染症で一番症状が強く、 時には敗血症の原因となるのが急性腎盂腎炎です。急性腎盂腎炎は通常膀胱で増えた細菌が尿管を通して腎盂まで達して発病します。
引用:医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/files/000145730.pdf
急性腎盂腎炎の症状
急性腎盂腎炎の場合、膀胱炎と同様に排尿時痛、頻尿、残尿感などの症状に加え、発熱、全身倦怠感などの全身症状、腰や背中の痛み、さらには悪心、嘔吐などの消化器症状を認めることもあります。子どもやお年寄りでは脱水による意識障害がみられることもあります。また、細菌が腎臓から血流に乗って全身へ広がった場合(敗血症)、血圧低下(敗血症性ショック)、急性腎不全、多臓器不全となり命にかかわることがあります。
引用:徳洲会グループ
https://www.tokushukai.or.jp/treatment/internal/nephrology/jinujien.php
・全身倦怠感
・食欲不振
・腰痛および背部痛
・膀胱炎症状
なお、高齢者の場合には症状がでない場合もありますので注意が必要です。
急性腎盂腎炎の原因
本来、健康な人は膀胱から尿管、腎盂には細菌は存在しません。それが何らかの原因で細菌が侵入して炎症を起こすのです。細菌の侵入経路で、もっとも多いのは尿道の出口から侵入した細菌が尿の通り道を遡り腎盂に達して起こるケースです( 上行性感染)。稀に、血管を通って腎臓に感染することもあります( 血行性感染)。主に大腸菌、緑膿菌などグラム陰性桿菌と腸球菌です。なかでも大腸菌による感染が約90%にも達します。
引用:杏林大学医学部付属病院
http://www.kyorin-u.ac.jp/hospital/introduction/kenkou/kenkou_16.html
急性腎盂腎炎の検査法
診断は臨床症状と検査結果により行う。急性腎盂腎炎の臨床症状は悪寒・戦慄を伴う高熱、患側の側腹部痛、肋骨脊椎角部叩打痛、悪心・嘔吐などがあり、全身症状が強い。検尿にて膿尿、細菌尿、血尿を認め、腎実質への感染の波及時には沈渣にて白血球円柱が認められる。血液検査では好中球を主体とした白血球増加、CRP 高値などの炎症反応を認める。
引用:医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/files/000145730.pdf
【問診】症状発症から現在までの状況、熱型(発熱の パターン)等を確認します。
【触診】腎臓や膀胱部の痛み、腎盂腎炎以外に他の病気が隠れていないかを確認します。
【尿検査】尿中の炎症細胞(白血球)、細菌、血尿、タンパク尿の有無を検査します。
【尿中細菌培養検査/薬剤感受性検査】原因菌を調べ、最も治療効果の高い抗生剤を確定して治療に役立てます。
【画像診断】超音波検査、レントゲン検査、CT検査等必要に応じて行います。
【血液検査】血液中の炎症反応、腎機能等を調べます。
急性腎盂腎炎の治療方法
急性腎盂腎炎の治療を開始する際、原因となる細菌が特定されない場合は広範囲な菌に効果がある抗菌薬を選択して治療を開始します。原因となる細菌が特定されると、その細菌に効果的な抗菌薬に変更して治療を継続します。症状を抑えるために、消炎鎮痛剤を用いることもあります。通常、4~7日ほどで症状はおさまってはきますが、治療は1~2週間ほどかかります。また治療が終了した後にも、さらに1~2週間あけて、再発していないか確認するために検査を行います。
引用:徳洲会グループ
https://www.tokushukai.or.jp/treatment/internal/nephrology/jinujien.php
【水分補給】経口もしくは点滴で水分補給を行い、尿量を増やす事で尿路のばい菌をおしっこから体外に排出するようにします。
【解熱剤投与】高熱に対して必要時には解熱剤を使用します。
【抗生剤投与】内服または点滴で抗生剤を投与します。
【急性腎盂腎炎の治療期間】症状が軽い場合には1~2週間抗生剤の内服を行い、自宅で安静療養をする事で症状は軽快します。 症状が重い場合は入院での加療を行います。
腎盂腎炎の原因となる疾患があれば、それぞれに対応した治療を行います。特に尿路結石等の尿路通過障害がある場合には緊急処置を行います(尿管ステント留置、ドレナージ等)。放置すると、敗血症といって全身にばい菌が拡散されて命にかかわる(敗血症性ショック)可能性があるからです。また、腎盂腎炎を繰り返す場合にも膀胱尿管逆流症等の原因となる疾患が隠れている場合がありますので泌尿器科での精密検査が必要です。