補聴器のメリットや種類、使用方法は?
補聴器(読み方:ほちょうき)とはどんな器具なのでしょうか?補聴器を使用するメリットや、種類、使用方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
森口誠 医師(森口耳鼻咽喉科院長)
目次 -INDEX-
補聴器(ほちょうき)とは
補聴器は普通の大きさの声で話される会話が聞き取りにくくなったときに、はっきりと聞くための管理医療機器(※)です。遠く離れた音や特別に小さな声を拡大して聞くものではありません。
どの程度の聴力になったら補聴器を使えばよいかは、その人の生活によって異なります。自分が日常の会話で聞き取りにくいことが多くなったと感じたり、重要な会話が正しく聞けないと感じたら補聴器を使うことを考えてください。(※管理医療機器:平成17年4月1日に改正された薬事法により、補聴器も管理医療機器に分類が変更された。管理医療機器を販売する場合、営業所の管理者の届出が必要となる。管理医療機器は医療機器のリスク分類(副作用・機能障害を生じた場合の人の生命・健康に対するリスクの大きさ別に3つに分類)のなかで、クラスIIの「リスクが比較的低い」に分類されている。)
引用:日本耳鼻咽喉科協会
http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/yasasii.html
聞きづらさを感じているのに「補聴器はまだ早い」と考えていませんか?補聴器が必要なレベルまで聴力が落ちているのに、補聴器=高齢者というイメージから抵抗を感じて、使用の検討すらしていない人が意外と多いのです。また、補聴器に頼ると聴力低下に拍車がかかるのではないかと心配する人もいますが、定期的な聴力検査を実施して、耳の状態がデリケートな時は使用を控えるなど、適切な使い方をすれば身体に負担がかかることもありません。
補聴器のメリット
ご家族との会話がスムーズ
お孫さんやご家族との円滑な会話をサポート。テレビもご家族と同じ音量で楽しめるので、家族だんらんがよりいっそう楽しめます。
趣味や活動の幅が広がります
「きこえ」の改善で趣味や生涯学習に挑戦できるようになり、旅行への参加も気軽。ボランティア活動では、あなたの豊富な人生経験が活かせます。
聞き返しが減って、仕事がしやすい
聴力の衰えは、働き盛りの40代から。仕事での聞き違いはトラブルの原因です。男性の方はぜひご覧ください。
自分に自信がもて、いきいきと暮らせます
難聴がすすむと、ちょっとしたことでもご家族の助力が必要に・・・補聴器で「きこえ」が改善すると、様々なことが自分でできるようになり、自分に自信がもてるようになります。
引用:一般社団法人 日本補聴器工業会
http://www.hochouki.com/select/type.html
補聴器の購入には診断書や処方箋が必須ではありませんが、まずは耳鼻科に相談してみてください。聴力が落ちていても、通院治療や手術で回復可能な病気もあるため、病気を鑑別して、本当に補聴器が必要かどうかという点から検討する必要があります。患者さんの目的や耳の状態に合った補聴器を知りたい場合は、補聴器のスペシャリストである認定補聴器技能者や、言葉や聞こえなどの専門的知識を有する言語聴覚士がいる補聴器販売店を選んで相談するといいでしょう。
補聴器の種類
耳あな型
耳あなに収まるタイプ。耳あなにスッポリ収まる小型のものから、耳の外にまでくる大型のものまでいくつかのタイプがあります。耳あなの形状ときこえの程度にあわせてつくるオーダーメイドタイプが一般的です。
耳かけ型
耳にかけて使用します。操作が簡単で扱いやすいのが特長。汗が入りやすいのが難点ですが、汗に強い機種も出ています。
ポケット型
本体をポケットに入れ、イヤホンとコードをつないで使用。操作は比較的簡単で、機種によっては高出力が得られます。コードが邪魔になったり、たまに衣ずれ音が入ることがあります。
メガネ型
メガネのツルの部分に補聴器を内蔵させています。メガネと補聴器を併用できる利点はありますが、レンズと補聴器の両方を調整する必要があります。
特殊補聴器
離れた場所に設置したFM送信機から手元の補聴器に音を送る、騒音に強いタイプや、高音域の子音を聴き取りやすいよう周波数を圧縮するものまで、特殊な用途で使う補聴器もあります。
引用:一般社団法人 日本補聴器工業会
http://www.hochouki.com/select/type.html
日本補聴器工業会の国内の補聴器出荷台数の調査によると、最も出荷台数が多いのは「耳かけ型」となっています。耳かけ型は、耳あな型と比べると高齢者でも扱いやすいことがメリットで、特に近年は小型化・軽量化しているため、装着していても目立ちにくくなりました。販売価格は6万円程度からで、高いものでは30万円程度の商品もありますが、最もポピュラーなタイプは10万円台です。比較的年齢が若く、普段から眼鏡をかけている人は、眼鏡のつるが当たらない耳あな型が便利でしょう。また、比較的難聴の程度が高い方は、オーダーメイド型を選択する人が多い傾向です。補聴器の寿命は5〜6年が目安です。
補聴器の使用方法
聴力障害の状態には、小さい会話が聞こえない、会話を誤って聞く、音が不快に聞こえるなどの点で個人差があります。簡単な聴力検査だけではその人のことばの聞こえ方は分かりません。ことばがどのように聞き取れているかを調べることで、補聴器を使う場合にどこまで聞こえるか、どのような限界があるかを予測できます。
難聴疾患のために障害を受けた耳の残された聴覚を使って、ことばを聞き分ける能力を最大限に発揮させることが、補聴器を最も効果的に使用できる重要な要素ですから、補聴器相談医の診断に基づいて調整をしてもらうことが必要です。微細な調整は素人やコンピュータではできません。医師の正しい方針と熟練した言語聴覚士、補聴器技能者などの技術が必要です。引用:日本耳鼻咽喉科協会
http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/yasasii.html
補聴器を使い始めるときはできるだけ長く使用することが大切です。聞こえが悪い状態が長期間続くと、脳は音がない状態に慣れてしまっています。このため、補聴器を使って音が復活した場合、時間をかけて音に慣れる「脳のリハビリ」を行う必要があるのです。リハビリ期間は3ヶ月〜半年が目安で、毎日できるだけ長時間、補聴器を使って音を聞きます。なかなか慣れない人は必要な時しか補聴器を使っていないケースが多いです。使用しながら補聴器専門店で特定の周波数をカットしてもらうなどの調整を繰り返して、最も快適に使用できる状態を目指していきます。また、補聴器を使う人は電池切れに注意してください。使用時間が長ければ4〜5日間隔で電池交換が必要になりますので、常に予備の電池を用意しておくと安心です。