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脊髄空洞症の症状や原因、治療法とは?

 更新日:2023/03/27
D0649 脊椎空洞症

脊髄空洞症とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

脊髄空洞症とは

脳や脊髄は液体(脳脊髄液)の中に浮かんで、外部からの衝撃から守られています。

脊髄空洞症では、脊髄の中に脳脊髄液がたまり大きな空洞ができることで、脊髄を内側から圧迫して、いろいろな神経症状や全身症状をきたす病気です。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

日本では、有病率は人口10万人あたり2人という珍しい病気です。

男女差なく20歳から30歳代の発症が多いのですが、あらゆる年齢層にみられます。

学童期の検診では側弯症をきっかけに、空洞症が早期診断される場合があります。

どんな症状が現れるの?

はじめのうちは、片手のしびれや脱力を感じるようになり、温度や痛みに対する感覚が鈍くなります。

進行すると、両手足の脱力や、筋肉のやせ、つっぱりなどがみられます。

出現するさまざまな症状は、空洞のできた場所や広がりによって異なります。

例えば、首の付近の脊髄(頚髄)に空洞がある場合は、しびれや脱力は手や腕に認められます。

空洞が拡大するにつれて、他の部分に症状が広がっていきます。

もし、上方の延髄(頭と首の境目あたり)まで空洞が広がると、顔や口、喉などの動きが悪くなることがあります。

その他に、発汗障害や排尿障害など自律神経症状を伴うこともあります。

また、明らかな神経症状がない方に見つかることもあります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

空洞症によって脊髄の機能は数年から10数年かけてゆっくり低下します。

治療せずに放置した場合、約半数の人は20年以内に下肢にも麻痺が及び、車椅子が必要になるといわれています。

小児期に発症した場合は、脊柱の側弯(背骨が左右に曲がった状態)を多く認めます。

学校の検診で側弯症を指摘されて精査を行う中で脊髄空洞症が見つかることもあります。

脊髄空洞症の原因は?

脊髄に空洞のできる原因は、たくさんあります。

脊髄の炎症や、腫瘍、脊髄の血管障害(梗塞や出血など)、外傷、先天奇形などが挙げられます。原因が特定できないこともあります。

多くの場合、キアリ奇形といって、生まれつき小脳の一部(小脳扁桃)が脊柱管内に落ち込んでしまっている状態が原因で起こります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
脊髄空洞症は、遺伝することはないといわれています。家族歴のある患者さんがいることも報告されているため、脊髄空洞症の一部に遺伝的要素が関わっている可能性が示唆されますが、詳細は不明です。

脊髄空洞症の検査法は?

身体診察と画像検査で診断可能です。

診察では、片側あるいは両側の筋力低下や感覚障害などの症状の有無を確認します。

他に、発汗障害や規律性低血圧などの自律神経障害、嚥下障害などの脳神経症状の有無、側弯症の有無などを評価します。

また、画像検査で空洞所見があれば診断できます。

頭部MRI検査では、小脳扁桃が脊柱管内に落ち込んでいることが確認できます。

脊髄MRI検査では、脊髄空洞症の有無や空洞の広がりの程度を診断することができます。

CT検査やレントゲン検査で頭蓋骨の形成異常や、側弯症などの脊椎の変形を評価できます。

検査時間は施設によって変わりますが、頭部MRI検査は20−30分間程度かかります。脊髄MRI検査は、首の付近(頚髄)から胸部(胸髄)、腰部(腰髄)と広い範囲を撮像するため、30分から1時間程度が目安です。

リハビリ

リハビリを行う期間は、症状の重症度や、復帰する生活形態を考えた上でのゴール設定によって、患者さんごとに異なります。

手足のやせや筋力低下などの機能障害ある場合には、運動療法などのリハビリ治療を行い、補助器具を使うこともあります。

また、巧緻性(手先をうまく使う力)向上のために、作業療法も行うこともあります。

嚥下障害(飲み込みの悪い状態)がある方は、摂食・嚥下のリハビリ治療を行います。さらに、とろみ食などの飲み込みやすい食品を選択して、水分、栄養補給に注意をする必要があります。

脊髄空洞症の治療方法

現時点では、手術を行う以外に治療法はありません。

無症状の場合は、まず経過観察を行います。
何らかの症状のある例や脊髄空洞症が進行する例では、手術をお勧めします。

手術の目的は、空洞を縮小させて症状の進行を予防するものであり、すでに出現している運動麻痺や感覚障害を回復させるものではありません。

大後頭孔部減圧術といって、頭蓋から脊柱管に移行する部分(大後頭孔部)を拡大することで、脳脊髄液の流れを改善する治療を行います。

また、空洞―くも膜下腔短絡術(S-Sシャント術)といって、空洞の中の水がカテーテルを通じてくも膜下腔に流すようにする手術も行われます。

手術後、運動障害の症状は改善することが多いのですが、脊髄空洞症による側彎や温痛覚障害は改善しにくい傾向にあります。

脊髄空洞症の予防方法

脊髄空洞症を予防する方法は現在のところありません。

ただし、早期の診断と治療を受けることは大切な病気です。

感覚障害や運動障害の重症度は、発症から診断または手術までの期間と相関することが知られており、発症からの期間が長いほど神経症状は重症化する傾向があるためです。

手術のタイミングや手術方法の選択は、担当医とよく相談するのが良いでしょう。

脊髄空洞症の症状が進行してしまったら

脊髄空洞症がみつかり症状が進行した際には、手術が勧められます。手術治療を行うことで、すっかりよくなる方もいますが、追加治療が必要な方もいるのが現状です。定期的に外来受診を行って、病状の進行がないかどうかを評価することが重要です。

脊椎空洞症が治ったあとに気を付けること。予後は?仕事はできる?

症状の進行に対して手術を行い、症状が治る場合もあります。運動障害は割と改善しやすいのですが、感覚障害は改善しにくい傾向にあります。

また、手術により脊髄にできた空洞は縮小しますが、完全には無くならずに残存することもあります。

まれに再拡大することもありますが、その場合は再手術を必要とする可能性があります。

空洞症の診断・治療を受けた後も、専門医を定期的に受診して病状の評価を行い、必要ならば速やかに治療を受けられるようにしておくと良いでしょう。

また、今後の生活への助言を得ることも大切です。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

手術治療からしばらく経過して、症状の進行が止まって落ち着き、体力も回復すれば、後遺症の程度にもよりますが、仕事復帰や運動を行うことは可能です。

後遺する症状は患者さんそれぞれで異なりますので、定期的な通院を続けて、外来で担当医に気になることを相談していくと良いでしょう。

まとめ

脊髄空洞症は、放置していると徐々に症状が進行していき重い後遺症を残すことになることから、早期の発見と早期の治療が大切な病気です。
また、治療後も定期的に外来通院し、経過を見ていく必要があります。

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