肝硬変の症状や原因、治療方法について
肝硬変(読み方:かんこうへん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長
肝硬変とは
肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。
引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/肝臓の線維化と肝硬変/肝硬変
B型やC型の肝炎ウイルス感染による肝炎に関しては、輸血血液のチェックやワクチン、医療の進歩により、近年減少傾向ですが、その一方、アルコールや生活習慣(肥満など)にともなう肝炎が注目されています。
慢性肝炎になると、その後20年近くかけ進行し、肝硬変へと進みます。肝炎の場合、治療によって改善は可能ですが、肝硬変までになってしまうと、不可逆な(もうもとの状態に戻らない)状態になってしまいます。
また肝硬変の症状だけでなく、高い確率で肝臓がんが発生してしまいます。非代償期の肝硬変になるともう改善は困難になりますので、早期からの治療・生活習慣改善が非常に重要になります。
肝硬変の症状
・くも状血管拡張:首や前胸部、頬に赤い斑点ができる。
・手掌紅班:掌の両側が赤くなる。
・腹水:下腹部が膨満する。大量に貯まると腹部全体が膨満する。
・腹壁静脈拡張:へその周りの静脈が太くなる。
・黄疸:白目が黄色くなる。
・羽ばたき振戦:肝性脳症の症状のひとつで、鳥が羽ばたくように手が震える。
・女性化乳房:男性でも女性ホルモンがあるが、肝臓での分解が低下するため乳房が大きくなる。
・睾丸萎縮:男性で女性ホルモンが高くなるため睾丸が小さくなる。引用:国立国際医療研究センター肝炎情報センター
http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/kankouhen.html
黄疸などの症状が現れてきたときには、既に肝臓の障害がかなり進行しています。肝臓の機能が低下すると上記のような症状が出てきます。
定期的に健診を受けることや、万が一症状が出た場合には、早めにかかりつけの先生に相談をすることをお勧めします。
肝硬変の原因
肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的なアルコール乱用、慢性ウイルス性肝炎、飲酒によらない脂肪肝です。
引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/肝臓の線維化と肝硬変/肝硬変
肝硬変の検査法
通常、肝硬変の診断は、症状、身体診察の結果のほか、慢性的なアルコール乱用などの肝硬変の危険因子の有無に基づいて下されます。身体診察の際には、脾臓の腫大、腹部の膨隆(腹水が疑われます)、黄疸、皮膚内での出血を示す発疹など、肝硬変に典型的な徴候がしばしば見つかります。
医師は肝臓の評価のため、血液検査を行います。血液検査は比較的感度が低く、肝臓は損傷を受けても長期間機能を維持できるため、結果が正常であることもよくあります。肝臓は、機能が80%低下しても本来の機能を遂行できます。また、血算を行い、貧血やその他の血液の異常を調べます。血液検査では、肝炎や原因として考えられる他の異常がないかも調べます。
画像検査では、肝硬変を正確に特定することはできませんが、一部の合併症が明らかになることがあります。超音波検査またはCT検査で、肝硬変を示唆する肝臓の萎縮や構造の異常がないかを調べることがあります。超音波検査では、門脈圧亢進症と腹水を検出できます。核医学検査( 核医学検査)では、肝臓が機能している部分と瘢痕化している部分が画像化されます。
それでも診断がはっきりしない場合、通常は肝生検(組織サンプルを採取して顕微鏡下に観察する検査— 肝生検)を行い、診断を確定します。生検やときには血液検査も肝硬変の原因の特定に役立ちます。
引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/肝臓の線維化と肝硬変/肝硬変
血液検査では、肝炎や原因として考えられる他の異常がないかも調べます。また、よく健康診断などで測定されるGOT(AST)、GPT(ALT)、γGTPは肝細胞内にある酵素で、肝細胞に異常が現れると細胞から血中に漏れ出すため高くなります。
進行して肝機能が悪化してくると、血小板や、肝臓で作られるアルブミン(栄養)や血液凝固因子(血をとめるもの)が低下していきます。
ただし肝臓は機能が低下していても、余力の十分にある臓器ですので、早期では血液検査は結果が正常に近いこともあります。
また原因についても、ウイルス、アルコール、肥満以外にも、自己免疫性や胆汁うっ滞性などもあり、診断がはっきりしない場合、肝生検(組織サンプルを採取して顕微鏡下に観察する検査)を行う場合もあります。
画像検査では、主に超音波検査、腹部造影CT検査・MRI検査、合併症検査のための上部消化管内視鏡検査が行われます。
超音波検査はもっとも手軽で侵襲も少なく、肝臓の形の評価や、腹水の有無、悪性腫瘍の早期診断に使われています。
造影CTやMRIは、肝硬変だけでなく肝がんの早期発見にも非常に大切な検査になります。また肝硬変になり肝臓が硬くなると、本来肝臓にいくはずの血流が入りにくくなり、脾臓の腫大や食道・胃の血管が拡張するため、その評価も行えます。
肝硬変の治療方法
肝硬変そのものを治療できる薬剤はほとんどありません。
・B型肝炎ウイルスが原因の場合には、エンテカビルやテノホビルルジソプロキシルフマル酸塩(TDF), テノホビル アラフェナミド(TAF) という抗ウイルス薬を内服することによって肝機能の改善が期待できます。
・C型肝炎ウイルスが原因の場合には、肝機能が良好な肝硬変(代償性肝硬変と言います)に対して、インターフェロン単独治療、インターフェロン・リバビリン併用治療、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法、さらに2014年以降にはChild-Pugh分類Aに限られますが、インターフェロンフリーの経口剤治療が健康保険で認められています。
・肝硬変では分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が低下するため、これを薬として補充することによって肝臓でつくられるアルブミンなどのタンパク質が改善します。
・肝移植:腹水や黄疸が一般的な治療によって改善しない場合には、基準を満たせば肝移植を受けられるようになりました。
引用:国立国際医療研究センター肝炎情報センター
http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/kankouhen.html
そのため、ウイルスが原因の場合は抗ウイルス療法、アルコール性の場合は禁酒、肥満性の場合は生活習慣改善など、なるべく代償期で肝機能が保たれているうちに原因に対する治療を行うことが大切です。
一方、非代償期に入ると、肝機能の低下によるさまざまな症状・合併症が出てきます。
非代償期では、むくみや腹水、食道静脈瘤、肝性脳症の対する治療など、肝硬変の合併症に対する治療が中心となります。また肝臓がん、消化管出血、肝不全といった合併症のコントロールが非常に重要であり、そのために原因に対する治療を行う必要もあります。