乳腺症の症状・原因とは?
乳腺症(読み方:にゅうせんしょう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
川口正春 医師(せやクリニック 院長)
乳腺症とは
乳腺症は、特に30~40代によく見られるホルモンの影響による乳腺の“変化”であり、治療を必要とするいわゆる「病気」ではありません。
しかし、症状はがんと共通するものもあり、症状がある場合は自分で判断せずに、乳腺科で診察を受けることが大切です。引用:株式会社日立保険サービス
http://www.hitachi-hoken.co.jp/woman/illness/p12.html
乳腺症はさまざまな症状がある分、具体的にこれが乳腺症だとはっきり把握している人が少ないことも理由の一つです。そのため異常は認めているものの病名がわからず、乳がんなどの重篤な病気を疑って不安を抱く人も少なくありません。
乳腺症には乳がんに似た症状のものも多く、乳がんだと思っていたら乳腺症だったということが多い反面、乳腺症だと思っていたら乳がんだったという場合もあります。ただし両者に因果関係は今のところ認められておらず、乳腺症になったから乳がんになるということはありません。
いずれにせよおかしいと思ったら一人で考え込まず、早めに医師の診断を受けましょう。
乳腺症の症状
主な症状には、乳房が張る、痛む、硬くなる、触れるとしこりを感じるなどが挙げられます。月経前に症状が強くなり、月経が始まると和らぐのが特徴です。乳房内の乳腺の分布は一人ひとり異なっていて、乳腺の密度が高い人、密度が低く脂肪が多い人など、人それぞれです。乳腺の分布によって脇の方に痛みがある、全体に痛みがある、片方だけもしくは両方とも胸が痛いなど、症状の出る場所も変わります。
引用:株式会社日立保険サービス
http://www.hitachi-hoken.co.jp/woman/illness/p12.html#chapter2
多いのは乳房の腫れやしこり、乳房表面の異常(でこぼこができる)、乳房や周辺の痛み、乳頭からの分泌物などといったものが挙げられます。
症状も軽いものから、人によっては深刻な痛みを訴えるものまであり、一口に乳腺症と言っても人によってかなり異なります。同じ人でも体調や環境の変化によって症状に差が出ることも多く、生理時期に近づくと症状が出る人、症状が重くなる人もいます。
乳腺症の原因
乳腺は性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチンなど)の影響を受けています。エストロゲンは乳腺の発育に影響を与えていますが、その(プロゲステロンに対する)過剰状態が乳腺症を発生させるといわれています。従って、乳腺症の症状は生理と共にある程度の周期性をもっています。
引用:キッコーマン総合病院
hhttp://hospital.kikkoman.co.jp/shinryo/shinryoka/geka/nyusenshou.html
その中には痛みを伴うものや、しこりや腫れなど普段とは明らかに異なる症状になって表れる場合もあり、がんなどの重篤な病気を疑って来院する人も多いです。
そのうちの多くの患者さんは乳腺症だと診断されますが、残念ながら乳腺症は原因を特定することができず、よって予防もできません。これも乳腺症の特徴です。生理周期と連動して症状が現れる人も多く、閉経後になると発症頻度は減少するため、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌に関連しているのではと言われていますが、原因だとは言い切れません。
ただし痛みを軽減することはできます。乳腺症のなかには痛みが強く出る症状もありますので、気になる場合は我慢せず医師の診断を受け、痛みを抑える投薬治療を受けることをおすすめします。
乳腺症の検査法
大切なのは日頃のセルフチェックと定期検診です。セルフチェックで異常を感じた場合は、乳腺科を受診してください。乳腺科の診察では、乳がんが疑われる要素を一つずつ排除していきます。
まず、どういう症状か、いつからか、月経の周期は規則的かなどの問診後、触診でしこりの大きさや硬さ、動くかどうか、押すと痛いかなどをチェックします。しかし触診のみでは実際の腫瘍と乳腺症の症状を正しく区別することが難しいため、万が一、問診・視触診だけで「これは乳腺症だから大丈夫」と言われた場合は、超音波検査やマンモグラフィなどの画像検査を希望しましょう。引用:株式会社日立保険サービス
http://www.hitachi-hoken.co.jp/woman/illness/p12-02.html#chapter4
乳腺症の治療方法
乳腺症と診断されれば、原則として経過観察でよく、多くの場合、治療の必要はありません。痛みなどは、癌でないと説明を受けただけで気にならなくなってしまう人も多いようです。痛みが強く、患者さんが痛みを除いてほしいと希望する場合は、乳腺に作用するホルモンをブロックする薬剤を使用します。痛みに対しては比較的よく効きます。
引用:中澤プレスセンタークリニック
http://www.nakazawa-pcc.net/mastopathy.php
精密な検査がおこなわれなかった遥か昔から呼ばれていることもあり、今でも気軽に使われがちです。そのため近年では明確な病名を特定できない乳腺の異常をすべて乳腺症というカテゴリーに入れ、病気ではない乳腺系の異常があれば何でも「乳腺症」と呼んでいる医師も増えています。
患者のほうも、明らかな異常が見られるのに「なんでもありません」「どこも悪くありません」と言われるより「これは乳腺症の一種です」と病名を告げられることでむしろ安心する、という心理的な作用があることも影響しているのかもしれません。
ところがそのようにして乳腺症と診断されたものの中には、そもそも病気とは言えない程度の症状も含まれていることがあり、現在やや乳腺症という病名が一人歩きしている傾向があります。そのため当院では患者に無用な不安を植え付けないためにも、乳腺症という病名をむやみに使用しないようにしています。
病気とは言えない軽い症状は乳腺症と呼ばず、明らかに病気であるなら乳腺症以外の病名を特定し、適切な治療を行ないます。
ですから仮に乳腺症と診断されても「自分は病気なんだ」と重く受けとめず、担当医の指導に従って心身ともに快適な日常生活を心がけてください。
また、乳腺症と診断されたからといって安心せず、定期的に乳がん検診を受けることも大切です