チックの症状や原因、治療法とは?
チック症とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
監修医師:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
チック・チック症とは
チック・チック症とは、突発的で、急に起きる、反復性の動きや発声であると定義されています。例えば、特に理由はないのに急に首を振る、その動作を反復する、といったものです。
村上先生の解説
一般的に子どもに見られ、ほとんどが一時的な症状で消失しますが、1年以上続く慢性チックや複数のチックが持続するトゥレット症候群という状態になることもあります。
チックはどんな症状が現れるの?
よく見られる症状としては、上記に例示した首振りといった動作や、まばたき、額にしわを寄せる、白目をむくといった動きをともなう運動性チック、咳払いをする、鼻をくんくんとならす、「うっ」「えっ」「んっ」などの声を出すといった音声チックです。これらは意識することである程度抑えることができると言われていますが、実際は評価が難しく、基本的には抑えられない症状として存在しています。そこには、「やらずにはいられない」という前駆衝動と言われる感覚が存在するためであると考えられています。
多くは上記のような軽い症状であり、いわゆる「くせ」としてとらえられるため、生活を送る上で問題にならないことがほとんどです。しかし、症状が激しい場合、具体的には激しく足踏みをする、急に飛び跳ねる、相手の動きを突発的に真似するといった「複雑運動性チック」、普段は人前で言わないような汚い言葉を突発的に出してしまう「複雑音声チック(汚言症)」という状態になると、社会生活に支障をきたしてしまいます。また、激しい動きをする上で、痛みを伴うこともあるため、身体的、心理的に苦痛を伴うことが多く見られます。
また、上記の症状で、複数の運動性チックおよび音声チックが1年以上持続する場合はトゥレット症候群と呼ばれています。
チックの原因は?
チックは、子どもの5~10人に1人は一時的にもチックを有すると言われており、大人になるにつれ消失する場合がほとんどです。疫学的には、チック、トゥレット症候群ともに男性が多いと言われています。チックの原因は、今のところ解明されていません。心理的要因、ストレスなど、脳の神経回路の異常、チックになりやすい素因の存在などが考えられています。
村上先生の解説
結膜炎やドライアイのためにまばたきを繰り返すことで、チックになることもあるようです。いろいろなきっかけや要素が混じり合ってチックは発症する可能性があります。
チックの検査方法・診断方法は?
チックは、主に診察時での問診や診察中の患者の状態から考えることが多く、診察中に出る症状、自宅や生活の中で出る症状を評価し、総合して診断します。チックは以下の3つの病型に分かれます。
一過性チック症:運動性チックまたは音声チックが1年以内に消失する場合
慢性チック症:運動性チックまたは音声チックのいずれかが1年以上みられる場合
トゥレット症候群:運動性チックと音声チックの両方が1年以上みられる場合
また、チックで悩んでいる患者の中には、ADHDや強迫性障害、自閉症スペクトラム障害などの病気が併存している可能性もあり、あわせて検査を行う場合もあります。検査にかかる時間は検査内容により異なりますが、短くて10分、長いもので2~3時間以上かかるものもあります。
チックの治療方法
チックに対する治療の基本は、心理教育です。家族や学校など、本人が長時間過ごす環境への情報共有を行い、本人が安心して過ごせる環境を可能な限り構築していくことが重要です。また、本人に対し、認知行動療法を行う場合もあります。治療を要する期間は個人差があります。なかなか症状が改善しない場合は、抗精神病薬を中心とした薬物療法を行います。最重度の激しい症状が持続する場合は、深部脳刺激療法という手術を行うこともあります。ただし、手術は患者本人への苦痛も大きいため、やむを得ず治療法として深部脳刺激療法を選択する場合には、専門医が慎重に判断します。
チック症の原因と予防方法
現時点でチックの原因は解明されていません。もともとの性格、心理的要因、ストレス、脳の神経回路の異常などの影響が考えられています。チックに対する確立された予防法はありませんが、チックの症状を軽くするために、自分自身の性格を把握することや、普段からストレスをためないよう心掛けることはが大事だと思われます。
大人と子どものチック症状の違い
子供のチックの特徴・治療
子どもの5~10人に1人はチックを有すると言われており、症状も一過性で消失することがほとんどです。その中で、1%程度は慢性チック、0.5%程度がトゥレット症候群へ移行すると言われております。治療としては、基本的には家族や学校への心理教育や情報共有などを行い、認知行動療法による治療を行うことが主となりますが、激しい症状や難治性の場合は薬物療法を行うこともあります。
大人のチックの特徴・治療
子どもの頃から持続して起きている慢性チックと、大人になってから生じる症状は区別する必要があります。子どもの頃は症状がなかったのか詳しく考える必要があります。子どもの頃から続いているチックに対しては、子どもの治療と同様に心理教育を主とし、薬物療法を行うこともあります。また、認知行動療法についても子どもへの介入と同様です。
村上先生の解説
大人になってから起きるチックのような症状は、うつ病、双極性障害、てんかんや脳の病気などが隠れている場合があり、精神科や脳神経外科へ相談することをお勧めします。
もしかしてチック症?初期症状・気になる症状を解説
ここではチックの初期症状や、チックの疑いのある症状、病院へ行くべき目安や対処法などをなどを解説します。
首の動き、首振り
何もないのに急に首を振る、激しく首を動かす、またストレスがかかった際に首を激しく動かすといった行動が見られる場合はチックの可能性があります。症状が軽くならない、1年以上続く、生活に支障がでるといった場合は病院へ相談することをお勧めします。
咳払い
反復して咳払いをするといった行動が見られる場合はチックの可能性があります。症状が軽くならない、1年以上続く、生活に支障がでるといった場合は病院へ相談することをお勧めします。咳払いには呼吸器系の疾患が隠れている場合もありますので、咳払いをしている理由(のどが痛い、息苦しい、いがいがする等)を聞いておくことも大切です。)
まばたき、白目、目の動き
意識があるのに、何もないのに激しくまばたきをするなど、場にそぐわない目の動きが見られる場合はチックの可能性があります。症状が軽くならない、1年以上続く、生活に支障がでるといった場合は病院へ相談することをお勧めします。結膜炎やドライアイといった疾患が原因で行動を起こしている可能性もあるので、眼科への相談も必要です。
村上先生の解説
意識が一過性になくなっている場合や本人が覚えていない場合は、てんかんや脳の病気の可能性もありますので、脳神経内科や脳神経外科へ相談することをお勧めします。
トゥレット症候群とチック症の違い
チック症は基本的には「動作性チック」「音声チック」がどちらか一方の状態をいいますが、「動作性チック」と「音声チック」の両方が1つ以上、1年以上持続する場合、トゥレット症候群と診断します。
トゥレット症候群の症状の重さには個人差がありますが、汚言でてしまう「複雑音声チック(汚言症)」や衝動的突発的な行動を起こす「複雑動作性チック」が持続することで、本人が著しい苦悩を感じる場合もあります。
治療としては、チックと同様に、心理教育が主になりますが、症状の重さに応じて抗精神病薬を中心とした薬物療法を行うこともあります。
村上先生の解説
チックの症状の背景に自閉症スペクトラム障害、ADHD、強迫性障害などが隠れている可能性もあり、児童精神科への受診をお勧めします。場合によっては、てんかんや脳の病気の可能性もあるため、児童精神科から他科へ紹介になる場合もあるかもしれません。気になる症状が続いていれば病院受診をすることをお勧めします。
まとめ
チックは、多くの場合、子どもの頃に自然となくなりますが、長く続き社会生活に支障をきたす場合は治療が必要となります。ストレスをためすぎないよう生活を心がけることがチックの症状を軽くすることに繋がります。
チックは疾患の一つであり、決して自分や周囲が悪いわけではありません。お子様や自分自身に気になる症状があれば、一人で悩まずに医師に相談することをお勧めします。
関連する症状
- まばたきを何度もする
- 首を振る
- 白目をむく
- 急に飛び跳ねる
- 咳払いをする
- 「うっ」「えっ」「んっ」など反復して発語する
- 場にそぐわない発語を繰り返し行う