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反対咬合(受け口)は 遺伝するって本当?原因や治療方法、予防方法を解説

 公開日:2025/12/23

反対咬合(はんたいこうごう)は一般に受け口とも呼ばれ、下の歯や下顎全体が上の歯や上顎よりも前に出ている状態を指します。

このような噛み合わせのずれは、見た目だけでなく発音や咀嚼にも影響を与え、日常生活にさまざまな支障をきたす可能性があります。

特に子どもの成長期に見られる場合、「将来、自然に治るのだろうか」「親の歯並びが遺伝したのだろうか」と心配される保護者の方も多いでしょう。

この記事では、反対咬合の原因や種類、治療法や適切な治療開始時期について解説します。

そして原因には遺伝がどの程度関わっているのか、また、家庭でできる予防法や対処法についても紹介します。正しい知識を身につけ、子どもの将来に役立てましょう。

反対咬合(受け口)の原因と遺伝について

指しゃぶりをする子供3

反対咬合にはどのような種類がありますか?
反対咬合は、大きく下記の3種類に分類されます。
  • 歯性反対咬合
  • 機能的反対咬合
  • 骨格性反対咬合

歯性反対咬合は、上下の顎の骨格には大きな問題がなく、主に歯の傾きや位置関係が原因です。上の前歯が内側に傾きすぎていたり、下の前歯が外側に傾きすぎていたりすることで、噛み合わせが逆になっています。程度は軽く、歯の移動だけで改善しやすい傾向です。機能的反対咬合は 、特定の癖や習慣によって、一時的に噛み合わせが反対になっているタイプです。舌を前に突き出す癖や、無意識に下顎を前に突き出すような噛み方をすることで起こります。骨格性反対咬合は顎の骨格の大きさや位置に問題があるタイプです。上顎と下顎の成長のバランスなどが原因で、噛み合わせのズレが生じます。遺伝的要因が強く、治療が難しくなる場合もあります。

反対咬合の原因を教えてください。
反対咬合の原因には、遺伝的要因と環境的要因の両方が関係します。遺伝的要因では、骨格の形や顎の成長パターンが受け継がれます。環境的要因については以下に挙げました。
  • 舌を下の前歯の裏側から前に突き出す癖
  • 口呼吸や指しゃぶり
  • 長期間にわたる頬杖や下顎を前に出す癖

こうした生活習慣によって、正常な顎の発達が妨げられることもあります。

反対咬合は子どもに遺伝しますか?
骨格性反対咬合は遺伝する傾向があります。顎の形や成長のスピード、歯の大きさや生える角度といった要素は遺伝しやすく、子どもが反対咬合になる確率が一般より高いです。ただし、必ず遺伝するわけではありません。また、遺伝的な要素があっても、早期治療により改善できるケースも少なくありません。
反対咬合のデメリットを教えてください。
反対咬合の放置によるデメリットは、以下のとおりです。
  • 咀嚼機能の低下
  • 発音の障害
  • 顎関節への負担
  • 外見上の問題

咀嚼がうまくできず消化に負担がかかったり、サ行やタ行などが発音しづらく、発音が不明瞭になったりします。また、歯や顎の関節に負担がかかり、顎関節症の原因になることもあります。見た目のコンプレックスから心理的な負担を抱える方も少なくありません。

反対咬合の治療方法

マウスピースを持つ子どもの手

反対咬合はどのようにして治療しますか?
治療方法は、年齢と原因、そして重症度によって異なります。子どもの場合は、以下のような装置を使用した方法が有効です。
  • マウスピース型矯正装置(ムーシールド・プレオルソなど)
  • 上顎前方牽引装置(フェイシャルマスク)

どちらも、顎の成長を利用して骨格を整え、自然な噛み合わせを促します。成人の治療は、歯列矯正(ブラケット矯正やマウスピース型矯正)によって歯の位置を整える方法が一般的です。ただし、骨格のズレが大きい場合は、外科的歯列矯正手術(顎変形症手術)を行うこともあります。

子どもの反対咬合は何歳から治療を始めたらよいですか?
治療期間は、年齢や症状の程度によって大きく異なります。大まかな目安は以下のとおりです。
  • 子どもの歯列矯正:1〜2年程度(一期治療)
  • 大人の歯列矯正:1.5〜3年程度
  • 外科的歯列矯正治療:3〜4年程度

子どもの場合、一期治療として顎の成長を利用した噛み合わせの改善を図りますが、必要に応じて永久歯が生えそろった後に二期治療へ移行します。大人の歯列矯正期間は、通常のワイヤー矯正やマウスピース型矯正で歯を動かす場合です。手術を伴う外科的歯列矯正治療では、術前の歯列矯正期間や手術、手術後の仕上げの歯列矯正期間を含めると、全体的に期間は長くなる傾向です。また、どの治療法でも、歯並びを安定させるための保定期間が必要な点には注意しなければなりません。

反対咬合の治療期間はどのくらいですか?
治療方法は、年齢と原因、そして重症度によって異なります。子どもの場合は、以下のような装置を使用した方法が有効です。
  • マウスピース型矯正装置(ムーシールド・プレオルソなど)
  • 上顎前方牽引装置(フェイシャルマスク)

どちらも、顎の成長を利用して骨格を整え、自然な噛み合わせを促します。成人の治療は、歯列矯正(ブラケット矯正やマウスピース型矯正)によって歯の位置を整える方法が一般的です。ただし、骨格のズレが大きい場合は、外科的歯列矯正手術(顎変形症手術)を行うこともあります。

反対咬合の治療にかかる費用を教えてください。
反対咬合の治療費用は、治療法や歯科医院によって大きく変動しますが、一般的な目安は以下のとおりです。
  • 子どもの歯列矯正:10〜50万円(税込)
  • 大人の歯列矯正:80〜120万円(税込)
  • 外科的歯列矯正治療:100〜150万円(税込)

子どもの場合、顎の成長誘導が主目的で、二期治療へ移行する際は別途費用が必要です。大人の歯列矯正は、選択する装置の種類や難易度によって費用は変動します。外科的歯列矯正治療で、手術が保険適用となる顎変形症と診断された場合は、費用負担が大幅に軽減されます。

反対咬合の予防方法や対処法

鏡を覗き込む親子

反対咬合を予防する方法はありますか?
主な予防方法には下記のようなものがあります。遺伝的要素が関わる骨格性反対咬合は予防が難しいですが、環境的要因による悪化を防ぎ、軽度の反対咬合を改善するためには有効です。
  • 悪習癖の早期改善
  • 適切な口腔機能の発達促進
  • 哺乳瓶・おしゃぶり・離乳食の適切な選択
  • 定期的な歯科検診

指しゃぶりや爪噛みは、4歳頃までにやめさせましょう。舌突出癖や口呼吸、下顎を前に出す癖などの悪習癖は、見つけ次第直すよう促します。また、鼻呼吸の習慣づけや、お口を閉じている時間を増やすトレーニングも有効です。哺乳瓶やおしゃぶりは吸う力を使う形状のものを選び、成長に合わせた食品を与え、しっかり噛んで食べる習慣をつけさせます。そして、乳歯が生えそろう3歳頃から、定期的に歯科医師にチェックしてもらいましょう。早期に異常を発見できれば、より負担の少ない治療で改善できる可能性が高まります。

反対咬合を改善するために家庭でできる対処法はありますか?
家庭で日常的にできることは、主に悪習癖の改善と、お口周りの筋肉を正しく使うトレーニングです。
  • MFT(口腔筋機能療法)の実施:舌のトレーニング・お口を閉じるトレーニング
  • 食事中の意識:正しい噛み方・噛む回数
  • 保護者による観察と声かけ:口呼吸・舌の位置

まず、舌を正しい位置に置くように意識させます。歯科医院で具体的なトレーニング方法を指導してもらうのが効果的です。また、唇を取り囲む口輪筋を鍛えるために意識的にお口を閉じたり、息を吹き出す運動や吸う運動を取り入れたりします。食事は一口30回を目安によく噛んで食べるように促し、左右均等に噛むように意識させましょう。保護者が子どもの状態に気を配り、気付いたときに優しく声をかけ、正しい状態に導くことが大切です。

編集部まとめ

歯科衛生士が口を開けて検診する男性

反対咬合(受け口)は、遺伝の影響を強く受ける可能性がありますが、悪習癖などの環境的要因も発症や悪化に大きく関わっています。

見た目の問題だけでなく、発音や食事、将来の顎の健康にも影響を与えるため、早期発見と早期対応が重要です。

特に子どもの顎骨がやわらかく成長が活発な3~10歳頃までは、マウスピースや牽引装置などを用いた小児歯列矯正によって、顎の成長をよい方向にコントロールできます。

この時期に適切な治療を受けることで、外科手術が必要になるような重度の不正咬合になるリスクを減らし、将来的に身体的・精神的な負担を軽減できる可能性が高まります。

不安を感じたら、まずは3歳頃を目安に小児歯列矯正を専門とする歯科医師に相談し、早期に診断を受けることが大切です。

家庭での悪習癖の改善と、専門家による適切な治療のタイミングの見極めが、子どもの将来のために有効な策といえるでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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