目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. オールオン4とインプラントの違いは?メリット・デメリットや治療の流れも解説

オールオン4とインプラントの違いは?メリット・デメリットや治療の流れも解説

 公開日:2025/12/14

歯を失うと食事や会話が困難になり、生活の質が大きく低下します。この場合、部分入れ歯やブリッジなどの治療方法以外に、インプラント治療は天然歯に近い噛み心地を得られる方法として知られています。しかし、複数の歯を失った場合に1本ずつインプラントを埋め込むと費用や治療期間が増大します。こうした背景から、数本のインプラントで歯列全体を支えるオールオン4(All‑on‑4)治療が生まれました。この記事ではオールオン4と一般的なインプラント治療の特徴や違い、メリット・デメリットを丁寧に比較します。両者の治療期間・費用・適応条件などへの理解を深め、どちらが自分に適しているかを考える手がかりとしていただければ幸いです。

オールオン4の特徴

オールオン4は、4本のインプラント(症例によっては6本)で片側の歯列全体の人工歯を支える治療法です。従来のように失った歯の本数だけインプラントを埋め込む必要がなく、前に2本、後に2本という構造でしっかりと人工歯を固定します。手術当日に仮歯を装着できるため、歯がない期間をほとんど経験せずに済むことも大きな特徴です。

インプラントの特徴

インプラント治療は、失った歯の位置にチタン製などの人工歯根(インプラント体)を骨に埋め込み、その上に連結部分(アバットメント)と人工歯を装着して噛む機能を回復させる方法です。1本の歯を失った場合にはその位置に1本ずつインプラントを埋め込むため、咬合力を歯ごとに受け止める独立した構造になっています。

オールオン4とインプラントの違い

オールオン4と一般的なインプラント治療はどちらもインプラント(人工歯根)を骨に埋め込むという点では同じですが、インプラント本数・治療期間・適応条件など多くの点で異なります。こちらでは項目ごとに違いをまとめます。

治療期間、治療完了までの流れの違い

治療期間、治療完了までの流れの違いは下記のとおりです。

比較項目オールオン4従来のインプラント
インプラント本数片側で4本(症例によっては6本)で全歯列を支える失った歯ごとに1本ずつ埋入
治療期間仮歯を即日装着でき、全体の治癒期間は約3〜6ヶ月各インプラントが骨と結合するまで3〜6ヶ月、総治療期間は6〜12ヶ月が一般的
治療の流れ1回の手術で4本を埋入し仮歯を装着、治癒後に最終補綴物歯ごとに手術を行い、結合を待ってから人工歯を装着する段階的な流れ
骨造成後方の傾斜埋入により骨の少ない部位を避けるため不要な場合が多い骨が不足する場合は骨造成やサイナスリフトが必要
仮歯の装着即日仮歯を固定しやわらかいものから噛める仮歯は後日装着することが多く、治療中は仮義歯や入れ歯で過ごす

どちらのインプラント治療方法が適しているかは骨の状況や残っている歯、顎骨の状態で決まりますので、必ずしも全員にオールオン4をすすめるわけではありません。

治療を受けられる条件の違い

オールオン4は、多数の歯を失っており、総入れ歯や部分入れ歯に不満がある方、骨量が少ない方、治療期間や費用をできるだけ抑えたい方に向いています。骨の治癒能力が 極端に低い場合や全身疾患が重い場合は適用できません。
従来のインプラントは、 健康な歯が残っており、欠損している歯が少ない場合に適しています。周囲の歯や骨の状態が良好であり、全身状態に問題がないことが重要です。

手術方法の違い

オールオン4は、一回の手術で4本のインプラントを埋め込む治療法です。前の2本はまっすぐ、後ろの2本は斜めに角度をつけて顎骨に入れていきます。この斜めに入れるというのがポイントで、骨が少なくなってしまった部分を上手に避けられます。そしてもう一つ患者さんにとってうれしいのが、手術したその日に仮歯を装着できることです。「歯がない状態で帰らなきゃいけないのかな…」と不安に思われる方も多いのですが、その日のうちに歯が入るので見た目も機能も回復することができます。

従来のインプラントは、失った歯一本一本に対してまっすぐインプラントを埋め込んでいく方法です。それぞれのインプラントが骨としっかりくっつくまで治癒期間が必要なので、何本も入れる場合は段階的に手術を進めていくことが多いため、治療期間も長くなりがちです。ご自身の骨の量が足りないときは骨を増やす処置(骨造成)や、上顎洞を持ち上げるサイナスリフトという追加の手術が必要になることもあります。しっかり治療できる反面、身体への負担や通院回数も増えやすい手術方法です。

費用の違い

オールオン4の費用相場は、片側で200〜400万円、上下両方となると400〜800万円程度といわれています。このなかには診査診断料や手術費用、インプラント本体の代金、仮歯から最終的な被せ物まで、さらに通院にかかる費用なども含まれます。使う素材や通院される歯科医院によって幅があるので、事前にしっかり確認しておくと安心感があります。一度にまとまった金額が必要になるのは事実ですが、長い目でみると、一本ずつ何本もインプラントを入れるよりコストを抑えられるケースもあります。

一般的なインプラント治療の費用は、1本あたり30万〜40万円が目安になります。何本も歯を失っている場合は、当然ながら本数に応じて費用が増えていきます。複数本となれば数百万円に達することも珍しくありません。さらに、骨を増やす処置が必要だったり、被せ物に高価な素材を選んだりすると、追加の費用が発生します。治療内容によって総額が変わってくるので、治療計画を立てる段階で詳しく相談しておくことが大切です。

見た目の違い

オールオン4でも従来のインプラントでも、被せ物にはセラミックやジルコニアといった素材を使うことが多いので、見た目を自然に仕上げやすい点は共通しています。ただ、構造そのものが違うため、実際につけたときの感覚や審美的な印象には差が出てきます。

オールオン4は、歯列全体を一体型のブリッジで置き換える形になるので、歯茎の部分も人工的な素材で覆うケースが多くなります。歯と歯肉が一体化したデザインになるわけです。

手術当日から仮歯を入れられるので、見た目を早く回復できるのは大きな魅力です。ただ、すべてが連結された構造のため、一本一本の歯が独立して動くわけではありません。そのため噛んだときの感覚が違うと感じる方もいらっしゃいます。

従来のインプラントは、一本ごとに独立した被せ物(クラウン)を装着する形です。天然の歯に近い噛み心地が得られやすく、口腔内での違和感も少ないことが多いといわれています。歯茎との境目も自然に仕上がりやすいのが利点です。ただし、歯並び全体を短期間で一気に回復させるのは難しい面もあります。治療期間がかかる分、段階を踏んでじっくり進めていく治療法といえるかもしれません。

オールオン4とインプラントのメリット・デメリット

オールオン4も従来のインプラントも、どちらもインプラント治療です。全身の状態やお口の中に残っている歯の本数、骨の状態によって適応はさまざまですが、それぞれの一般的なメリット・デメリットを解説します。

オールオン4のメリット・デメリット

オールオン4の代表的なメリットは下記のとおりです。

  • 治療期間が短く、手術当日に仮歯を装着できる(最終的な被せ物まで3〜6ヶ月程)
  • 片側4本のインプラントで済むため、外科的負担が軽い
  • インプラントを斜めに埋め込むことで骨を増やす処置を回避しやすい
  • 固定式で硬い食べ物でもずれにくく、安定した噛み心地
  • すべての歯を失っている方が短期間で見た目と機能を回復できる

オールオン4は手術当日に仮歯が入り、治療期間も3〜6ヶ月程度で済むのが大きなメリットです。少ない本数のインプラントで歯列全体を支えられるため、外科的な負担を抑えながら早期に見た目と機能を回復できます。

一方でオールオン4には下記のようなデメリットが生じることもあります。

  • 自由診療で費用が高額(片側200万〜400万円、上下で倍近く)
  • 持病や骨量不足で適用できない場合がある。術後に痛みや腫れが出ることも
  • 一部分の破損でも全体の作り直しが必要になる可能性がある
  • 一体型構造と歯肉の間に汚れが残りやすく、専用器具での清掃が必要

オール4は一体型の構造ゆえに修理が難しかったり、費用が高額になりやすかったりする面もあります。

インプラントのメリット・デメリット

従来のインプラントは一本ずつ独立して埋め込むため、天然歯に近い噛み心地が得られ、隣の健康な歯を削る必要もない点が大きなメリットです。

  • 天然歯に近い噛み心地で満足度が高い
  • セラミックやジルコニアで自然な見た目を再現できる
  • 隣の歯を削らないため、健康な歯を守れる
  • 骨に刺激を伝えて顎骨の吸収を抑制できる
  • 失った歯だけを個別に治療できる柔軟性
  • しっかり噛めることで脳への刺激が増え、心身の健康向上が期待できる

一方で、インプラントには下記のようなデメリットもあります。

  • 1本30〜40万円程度で、複数本は高額になる(自由診療)
  • 治療完了まで半年から1年以上かかることもある
  • 歯茎を切開する外科手術を伴い、術後に痛みや腫れが出ることがある
  • 骨量不足の場合は骨を増やす処置が必要で、期間と費用が増える
  • プラーク蓄積によるインプラント周囲炎予防のため定期メンテナンスが必須
  • 糖尿病や骨粗鬆症などの持病がある方は治療が難しい場合があり、主治医との相談が必要

インプラントは、自然な見た目と機能性の高さが魅力ですが、治療期間が長くなりやすく、複数本となると費用もかさみます。

オールオン4とインプラントで迷ったときの選び方

オールオン4と従来のインプラントは、それぞれ向いている患者さんのタイプが違います。迷ったときは次のポイントを参考に歯科医師と相談してください。選ぶときのポイントは下記の5点です。

  • 失っている歯の本数
  • 骨の状態
  • 費用と支払い方法
  • 口腔衛生とメンテナンス
  • 健康状態と生活習慣

失っている歯の本数が1本から数本なら独立したインプラントで一本ずつ補う方が自然な噛み心地が得られ、ほかの歯への負担もありません。多くの歯を失っている方や総入れ歯に満足できていない方はオールオン4が選択肢になります。

骨量が十分で健康状態も良好なら従来のインプラントで問題ありません。骨量不足でもオールオン4なら斜めに埋め込むことで骨を増やす処置を回避できることが多いです。ただし骨が極端に痩せている場合はインプラント専門の歯科医師に相談してください。

時間に余裕があり一本ずつ着実に治療したい方は従来のインプラントが、短期間で機能と見た目を回復したい場合は、仮歯を即日装着できるオールオン4が向いています。

また、従来のインプラントは1本30〜40万円、オールオン4は片側で200〜400万円が目安です。失っている本数が多い場合、オールオン4の方が総額を抑えられる可能性もあります。

オールオン4は専用フロスや水流洗浄器具でのケアが必要です。個別のインプラントは通常の歯ブラシとデンタルフロスで清掃できますが、本数が多いと手間がかかります。どちらも歯科医院での定期チェックは欠かせません。

糖尿病や骨粗鬆症がある場合は治療が制限されることがあります。喫煙やセルフケア不足はインプラント周囲炎のリスクを高めるので、生活習慣の改善も視野に入れましょう。治療法選択では、費用や期間だけでなく日常ケアのしやすさや長期維持の負担も考慮が必要です。

オールオン4は一体構造なので特殊なブラシやフロスでの手入れが必要です。従来のインプラントは独立しているため通常の清掃用具で対応できます。毎日のケアにかけられる時間も選択基準になるでしょう。

長期的な耐久性も重要です。従来のインプラントは一本単位で管理でき、一本のトラブルがほかに影響しにくい特徴があります。オールオン4は4本で全体を支えるため一本の問題が全体に響く可能性があり、ケアや定期検診を怠ると周囲炎や破損リスクが高まります。

また、持病がある場合は主治医と連携が必要です。喫煙や口腔衛生不良はインプラント周囲炎リスクを高めるため、術前から禁煙や歯磨き方法の習慣改善に取り組むことが大切です。

治療法選択には多角的な検討が必要です。費用や期間だけでなく、維持管理の負担、セルフケア意識、生活習慣や全身状態を総合的に考え、自分に合った治療を歯科医師と選んでください。複数の医療機関でセカンドオピニオンを受けることも納得のいく決定につながります。

まとめ

オールオン4と従来のインプラント治療は、どちらも骨に人工の歯根を埋め込んで歯を補う方法ですが、インプラントの本数や治療期間、費用、適応できる条件などに大きな違いがあります。オールオン4は4本のインプラントで歯列全体を支えるため、骨を増やす処置を回避しやすく、治療期間を短くできるのが特長です。ただし自由診療なので費用は高額になりますし、骨の状態や全身の病気によっては適用できないこともあります。従来のインプラントは一本ごとに独立していて、天然歯に近い噛み心地や自然な見た目を得られるのが利点です。その反面、治療期間が長くなりやすく費用もかさみがちで、骨を増やす処置が必要になる場合もあります。

治療法の選択は、失った歯の本数、骨の量、全身の健康状態、治療期間の希望、費用といった要素を踏まえて検討する必要があります。まずは信頼できる歯科医師に相談して、複数の医療機関で意見を聞きながら自分に合った方法を選ぶことが大切です。適切な治療と日々のメンテナンスで、噛む喜びと美しい笑顔の多い豊かな毎日を送っていただきたいと思います。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

記事をもっと見る