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むし歯が原因で起こる頭痛の種類や頭痛以外の合併症など、むし歯を放置するリスクを解説!

 公開日:2025/01/16

歯が痛いと思っていたら、頭まで痛くなってきたなど、むし歯によって頭痛が生じているのではないかと感じている方もいるかもしれません。
むし歯は症状の程度や状況によっては、頭痛やその他の合併症を引き起こす可能性がある病気です。
この記事では、むし歯で頭痛が生じるケースや、対策方法などについて解説します。

むし歯で頭痛が起こることはある?

むし歯で頭痛が起こることはある?

むし歯と頭痛は一見するとそんなに関係がないような気もしますが、実はむし歯はその進行状況によっては頭痛などさまざまな合併症を引き起こす可能性のある症状です。
まずは、むし歯の進行度合いと頭痛の関係や、むし歯そのもののリスクについて紹介します。

むし歯の進行度合いと頭痛の関係

むし歯というと、歯が痛む病気というイメージを持っている方が多いと思いますが、実はむし歯の初期症状は、痛みなどの自覚症状がほとんど現れません。
むし歯は菌の作り出す酸によって歯が溶かされ、歯の外側であるエナメル質から歯の内部に向かって少しずつ菌の感染が広がっていく病気です。エナメル質には神経なども通っていないため、特に痛みなどは感じないのです。 しかし、むし歯が初期症状よりも進行して、エナメル質より内側の象牙質や歯髄と呼ばれる場所まで菌の感染が広がると、痛みが生じてくるようになります。
特に強い痛みを感じるのは歯髄と呼ばれる歯の神経や血管が集中している部位にまでむし歯が進行しているケースで、神経そのものが酸などの刺激を受けるため、ズキズキとした継続的な痛みが生じます。
一方で、象牙質は歯髄とエナメル質の中間にある層であり、直接神経が刺激を受けるわけではないので、常に痛みが出るというわけではありません。象牙質にむし歯が到達している状況で冷たいものなどをお口に含むと、その刺激が神経に伝わってしみるような痛みが生じるケースがあり、歯髄付近にまで進行していると痛みが出る可能性が高まります。 このように、むし歯は進行度合いによって痛みの感じ方や程度が変わってくる症状ですが、歯の痛みは三叉神経という神経によって脳に伝わります。
この三叉神経は、顎や頬、そして額と顔全体に分布している末梢神経であり、脳の手前で1本の神経となって、中枢神経、そして大脳へと接続されていきます。
そのため、むし歯で強い痛みを感じると、同じ神経が接続している側頭部周囲まで痛いと感じることがあり、頭痛が生じる場合があるのです。 頭痛が出るのは、歯髄までむし歯が進行して歯髄炎が生じ、強い痛みが持続するようなむし歯で多く、象牙質などに進行している程度では頭痛まで出るということは少ないといえます。 なお、上記のようなむし歯そのものの痛みが頭痛として現われるのではなく、むし歯が原因によって生じる歯性上顎洞炎などの病気によって頭痛が引き起こされるケースもあります。
いずれにしても、むし歯が進行すれば頭痛のリスクが高まりますので、むし歯は早期に治療を行うことが大切です。

むし歯を放置するリスク

むし歯は、菌が作り出す酸によって歯の組織が溶かされていく病気であり、溶かされた歯は自力で修復する機能を持ちません。
そのため、むし歯を放置してしまうと歯は溶かされてなくなっていく一方であり、治療しても完全に戻すことができないというリスクがあります。
また、むし歯が進行して歯の根元まで感染が広がると、菌が原因となってできた膿によって強い腫れや痛みが生じたり、場合によっては血管内部に菌が入り込んで敗血症などの原因になるリスクがあります。
むし歯は早めに治療ができれば歯を削る量も少なくすみ、リスクを抑えることができる病気なので、とにかく早期発見と早期治療を行うようにしましょう。

むし歯が原因の頭痛の種類

むし歯が原因の頭痛の種類

むし歯による頭痛は、むし歯が直接的な原因となって生じるものと、間接的な原因となって生じるものがあります。
直接的な原因としては、 むし歯が原因の頭痛には、いくつかの種類があり、痛みの感じ方などにも違いがあります。
それぞれについて解説します。

緊張性頭痛

緊張性頭痛は、筋肉の緊張(コリ)によって生じる痛みです。
むし歯ができると、痛みが出ない方の歯でばかり食事を噛むようになるなどして噛み合わせにズレが生じるため、筋肉の使われ方に偏りが生じて、緊張性頭痛を引き起こす場合があります。
緊張性頭痛の場合、頭痛のほかにも肩こりや首など、周囲の組織全体に痛みやだるさを感じやすくなります。

歯髄炎による頭痛

歯髄炎は、むし歯が進行することによって歯髄にまで細菌の感染が広がって引き起こされるもので、むし歯によって歯が痛いというのは、主にこの歯髄炎が原因です。
上述のとおり、歯の痛みは刺激が顎や額などに分布している三叉神経という末梢神経によって脳に伝わって行くものです。
三叉神経は脳に入る前に一つの神経に合流していくため、むし歯がある方の側頭部に痛みを感じる場合があります。
歯髄炎は歯に持続的なズキズキとした痛みを感じるのが特徴で、歯の痛みや頭痛のほか、強い口臭の原因にもなります。
歯髄炎が生じている場合は歯の神経を取り除く治療が必要となり、神経を除去することで痛みを解消することができます。

歯性上顎洞炎による頭痛

むし歯が歯髄にまで到達した後で、細菌が歯髄から副鼻腔という頬骨の内側にある空間に入りこみ、そこで炎症を引き起こすと、副鼻腔に膿が溜まって上顎洞炎という病気につながります。
上の奥歯のむし歯が進行すると引き起こされやすく、頭痛や顔の痛みのほか、副鼻腔は鼻水が出てくる場所でもあるため、鼻づまりなどの症状が現われます。
むし歯が原因の場合は歯性上顎洞炎と呼ばれますが、歯以外の原因でも上顎洞炎が生じることはあります。

脳炎による頭痛

脳炎は、白血球が脳のなかに入り込んで炎症を引き起こすものです。
むし歯が原因で脳炎につながるというケースはきわめて稀であり、過度に心配する必要は少ないといえますが、むし歯の進行によって生じる可能性は否定できません。
脳が炎症を起こすため、頭痛だけではなく発熱や吐き気、場合によっては痙攣や意識障害といった深刻な症状が現われるケースがあります。
むし歯による炎症が拡大するほどこうした合併症の可能性が高くなりますので、なるべく早めに治療を受けることが大切です。

脳静脈血栓症による頭痛

脳炎ではなくても、むし歯によって脳のトラブルにつながるケースがあり、その一つが脳静脈血栓症です。
脳静脈血栓症は、脳に血栓が作り出されることで、血流が阻害されて頭痛や嘔吐、痙攣、運動障害といったさまざまな症状を引き起こすものです。
血栓により血管が圧迫され、脳出血を引き起こす可能性もあり、緊急の対応が必要となります。
むし歯による脳静脈血栓症は、むし歯の原因菌が歯髄から血液のなかに入り込み、これが脳の静脈に達してしまうことで発症する可能性が考えられます。

顎関節症が原因の頭痛

顎関節症は、顎の関節や、咀嚼筋に何らかの異常がでることによって、顎の痛みやお口の開きにくさ、または顎を動かしたときにカクカクと音がなるといった症状がでるものです。
顎の関節周辺の筋肉が緊張状態になることで、筋肉痛による頭痛が生じる可能性があり、痛みの直接的な原因としては緊張性頭痛と同様です。
顎関節症は歯ぎしりや食いしばり、うつ伏せ寝といった顎への日常的な負担が原因となって生じるものですが、むし歯の痛みで顎に偏った負担がかかるなども、顎関節症の要因となります。
顎関節症が進行するとお口を開けにくくなって食事に支障が出るといったケースもありますので、しっかりとした治療を受けるとよいでしょう。

むし歯による頭痛以外の合併症

むし歯による頭痛以外の合併症

むし歯は、歯の痛みや頭痛以外にもさまざまな合併症を引き起こす可能性がある病気です。
むし歯によって発生する可能性がある、頭痛以外の合併症について紹介します。

副鼻腔炎、中耳炎

むし歯菌が副鼻腔に入り込むことで歯性上顎洞炎が生じると紹介しましたが、上顎洞炎は副鼻腔炎、または蓄膿症とも呼ばれます。
副鼻腔炎は頭痛だけではなく強い鼻づまりを引き起こし、嗅覚の低下や、口呼吸の習慣につながることでお口のトラブルをより引き起こしやすくなるといった変化にもつながります。
また、副鼻腔炎が進行していくと、耳の鼓膜の奥にある中耳というところに感染が広がって中耳炎となり、耳の聞こえにくさなどが引き起こされることもあります。

肺炎

むし歯菌が食事や唾液などに混ざり、肺に入り込んでしまうと肺炎につながる可能性があります。
通常、食事や唾液は食道を通じて胃に入りますが、誤って気管に入り込んでしまう場合があり、これを誤嚥といいます。
誤嚥によって引き起こされる肺炎を誤嚥性肺炎とよび、特に体力が低下している方の場合は命に関わるリスクにもなります。

敗血症

むし歯が進行していくと、菌が血液のなかに入り込んでしまう可能性があり、菌が慢性的に血液中に入り込む状態を菌血症といいます。
お口のなかには常に多くの菌がいるため、口腔内のトラブルは血液のなかに菌が入ってしまうきっかけとなりやすく、むし歯のほか、歯周病によっても菌血症のリスクが生じます。
通常であれば血液内に菌が進入しても、白血球がそれを退治してくれるのですが、何かしらの理由で免疫力が低下すると菌が除去しきれなくなり、敗血症のリスクが生じます。
敗血症になると、細菌が血液を通じて体中に広がってしまうため、さまざまな臓器へのトラブルにつながります。

動脈硬化

血液中にむし歯菌や、炎症を引き起こす原因物質が入り込むと、これが原因で血管の内膜が厚くなり、動脈硬化へとつながる可能性があります。
動脈硬化は心臓や血管の負担につながるほか、血栓などを引き起こす要因となり、場合によっては脳梗塞や心筋梗塞といった病気のリスクにもつながります。

細菌性心内膜炎

血液内に入り込んだ細菌が、心臓の内側にある心内膜や、心臓内の弁などに付着し、菌の塊となってしまう症状が、細菌性心内膜炎または感染性心内膜炎と呼ばれるものです。
心臓のトラブルであるため重篤な症状につながりやすく、命にかかわるような手術が必要となるケースもあります。
特に、心臓病の手術をして人工血管や人工弁などがある方などで高いリスクとなりやすいため、注意が必要となります。

むし歯による頭痛の対策方法

むし歯による頭痛の対策方法

むし歯によって頭痛が生じた場合、下記のような対策方法で頭痛を軽減するとよいでしょう。

鎮静剤(痛み止め)を服用する

頭痛を抑えるための方法として有効なのは、やはり鎮静剤の服用です。
鎮静剤は市販のものでも大丈夫ですので、すぐにでも痛みを抑えたいという方は、まずはドラッグストアなどで薬剤師と相談し、適切な鎮静剤を購入するとよいでしょう。
ただし、痛み止めはあくまでも一時的に症状を和らげるだけのものですので、そもそもの原因を解消するために、なるべく早めに歯科医院での治療を受けましょう。

歯や頭を冷やす

炎症によって歯や頭に熱が出ているような場合、患部を冷やすことで痛みが軽減する可能性があります。
冷やしすぎると凍傷などのリスクも生じるので、濡れた清潔なタオルなどを使用して、軽く冷やすようにしましょう。
なお、慢性的な痛みの場合はむしろ軽く温めた方が痛みが軽減する可能性もあります。

血流を促す行動を控える

血流が促進されると、炎症が広がって痛みが強くなったり、痛みの範囲が広がってしまう可能性があります。
激しい運動や入浴、サウナなどの血流が促される行為は痛みの原因となりますので、むし歯による痛みが出ている場合はなるべく控えた方がよいでしょう。

むし歯を治療する

むし歯は、放置しておいたら自然に治るということはありません。
むし歯の状態を改善させるためには、歯科医院でむし歯の感染箇所を除去するという治療を受ける必要があります。
治療を受けずに時間が経過すると、感染がより広がってさまざまなリスクへとつながり、歯を大きく削るまたは抜歯する必要が生じてしまいますので、とにかく早めの治療が大切です。 なお、むし歯を放置しておくと神経が死ぬことで一時的に痛みがおさまる場合があります。しかし、この場合も感染は残り続けているので、歯茎に膿が溜まって、再度強い痛みなどが生じる可能性があります。

むし歯の治療方法

むし歯の治療方法

むし歯の治療は、基本的には歯を削って感染部位を除去することによって行います。
菌をしっかり除去することができれば、むし歯がそれ以上に進行することはありません。
なお、歯を削った箇所は自然に元通りになることがないため、歯科用レジンなどの人工物で埋めたり、セラミックなどで作成した被せ物をして、噛み合わせを整えます。 むし歯が進行して歯髄に感染が広がっている場合は、歯の神経を除去する根管治療が必要となることもあります。
根管治療で神経を除去してしまえば痛みはおさまりますが、歯が脆くなるなどのリスクもあるため注意が必要です。 治療をしても歯の機能を回復させることが難しい場合や、周囲の歯に影響が出てしまっている場合は抜歯が選択されることもあります。
ただし、抜歯は最後の選択肢として、歯科医院ではなるべく歯を残すための治療が行われています。

まとめ

まとめ

むし歯によって歯髄に感染が広がると、歯だけではなく頭痛も生じる可能性があります。
また、むし歯が進行していくと菌が周囲の組織や血液内に広がり、さまざまな合併症につながってしまう可能性もあります。
むし歯は自然に治る病気ではありませんので、なるべく健康な歯を残すため、そして合併症を防ぐためにも、できる限り早めに歯科医院での治療を受けるようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
箕浦 千佳歯科医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

箕浦 千佳歯科医師(長谷川亨歯科クリニック 歯科医師 / 名古屋デンタルオフィス)

朝日大学歯学部卒業 / 現在は長谷川亨歯科クリニック非常勤勤務

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