《歯の固定》歯周病における歯のギブス!?
こんにちは、埼玉県さいたま市浦和区にある『ナカニシデンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の中西伸介と申します。
歯周病が進んでしまうと歯を支えている歯槽骨が溶けてしまい、支えが少なくなってきます。結果として歯の揺れが大きくなり、最終的には歯を失ってしまうことになります。
もちろん歯周病を初期に治療するのは大事なことですが、既に歯に揺れが生じている場合、例えば手足の骨折の際ギプスで固定するのと同じように歯も固定して治療を進めていくことがあります。
今回は歯周病治療における歯の固定についてお話しさせていただきます。
目次 -INDEX-
歯周病における歯の揺れの原因は?
歯周病の治療では原因の検査や治療が非常に重要です。揺れ(動揺)の原因としては
- プラークや歯石などが原因の炎症で歯槽骨の吸収があり揺れている場合
- 噛み合わせや一部の歯が強く当たる(早期接触)場合
- 歯ぎしりや食いしばりなどの外傷性咬合がある場合
などがあります。
治療の優先度としてはまず細菌感染に対する治療(プラークコントロールや歯石除去など)を行い、その後に揺れが残っている場合に噛み合わせの調整や動揺歯の固定を行います。
なぜ固定が必要なのか?
固定の目的として
- 咬合圧を分散させ、歯の安静を図る
- 動揺歯の保存可否を判定する
- 歯の移動や提出(上に伸びてしまう)を防止する
- 食片圧入(歯と歯の間に食べ物が詰まってしまうことにより歯周組織への悪影響が出てしまう)を防止する
- 歯周外科治療後の同様の増加を予測して咬合性外傷の予防のために行う
などの様々な役割があります。
固定の種類は?
固定は大きく分けると暫間固定(一定の治療期間のみ固定する)と
永久固定(治療終了後も装置をつけたまま歯の連結を行い続ける)の2つに別れます。
暫間固定の種類として
- ダイレクトボンディングシステム
強力な接着剤を歯と歯の間に塗布し接着させる方法です。歯の表面処理を行ってから接着させるので歯を削らない状態でも行えます。また透明であるため主に前歯の部分に使用されます。
強い力が加わると外れてしまうことも多いためワイヤーを補強線として併用する場合もあります。
- A-splint
奥歯に用いられます。奥歯の咬む面に細い溝を掘り、そこにワイヤーを設置し接着剤を流し込んで接着させます。
- プロビジョナルスプリント
いわゆる仮歯による固定です。最終的に補綴処置(被せ物等を行う処置)が必要となる歯に連結した仮歯を装着します。固定する役割だけではなく、仮歯は調整しやすいという特徴があるため、歯の形態や長さなども調整できるので見た目や発音等に有利です。治療終了後にそのまま最終的な被せ物に置き換えていきますので治療の予測が立てやすいです。その反面元々被せ物が入っていない歯の場合、歯を削る量が多くなってしまうといったデメリットがあります。
- ワイヤーで結紮する方法
- 床矯正装置
- マウスピース
などが挙げられます。
永久固定の種類としては
- 連続した被せ物による固定
治療後も動揺が残っている歯に対し、隣接した歯も含めて被せ物を連結する固定です。被せ物の種類や形態によって変わりますが非常に強力な固定となります。差し歯を連結したりブリッジを装着することも永久固定となります。
- 接着性レジンによる固定
先ほどのダイレクトボンディングシステムと同じです。主に前歯に用いられます。接着剤のみの場合もありますが裏側に補強せんとしてワイヤーを設置したり舌面板と呼ばれる金属製のプレートを接着させる方法もあります。
固定する期間は?
歯の状態によりますので一概には言えませんが、歯周病の治療では初診時、初期治療が終了した後、また歯周外科治療や再生療法を行った後に再評価(歯周ポケットや歯の揺れ、歯肉の状態などの評価を行う)をしますのでその都度判定して行きます。初診の段階から歯の揺れが大きいケースでは固定する期間もやはり多くなってきます。
また歯周外科治療が必要な歯に関しては暫間固定が必要となってくる場合がほとんどです。最終的な評価の際に外すか永久固定とするのかの診断を行います。
気をつけなければいけないことは?
治療中に行う暫間固定の場合は強度があまりないので固定した場所で硬いものを噛んだりすると外れたり破損することがあります。
また連結したところはデンタルフロスの使用ができなくなりますのでプラークや歯石が溜まりやすい場所は歯間ブラシの使用が必須となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?歯周病による歯の揺れに対しては固定が必要となるケースが多く、有効な治療となります。しかしながらやはり一番大事なのは感染症である歯周病の治療においては、まずはしっかりとしたプラークコントロールと歯石などの感染源の除去を行うことが必要です。またむやみに連結してしまうことで他の歯への負担が増えてしまったり連結した歯の歯周病が悪化がしてしまうこともありますので、しっかりとした診断と治療計画が必要となります。歯の揺れが気になる場合はぜひ歯周病認定医、専門医の在籍する医院への受診をおすすめします。