子どもも歯周病になる!? いつから気をつけたらよい?
こんにちは、たまプラーザの日本歯周病学会認定歯周病専門医が在籍する歯医者「美しの森デンタルクリニック」院長の村野嘉則と申します。
歯周病は細菌の感染症です。お口の中には様々な細菌が住んでいますが、歯周病はお口のなかに感染した歯周病原菌によって引き起こされます。成人の8割以上が歯周病、またはその予備軍と言われています。ギネスブックに世界で一番かかっている人が多い病気として登録されているほどです。
誰でも発症する危険性のある歯周病、子育て世代の30代や40代の方達にも多い病気です。子供に移ったりしないのか、心配な方も多いと思います。今回は「子供も歯周病になるのか?いつから気をつけたらよい?」をテーマに詳しくご説明したいと思います。
執筆歯科医師:
村野 嘉則(日本歯周病学会専門医)
日本臨床歯周病学会認定医。日本歯周病学会認定歯周病専門医。厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医等。
《自己紹介》
美しの森デンタルクリニック院長の村野です。歯を失う原因である歯周病の治療を専門としておりますが、歯周病は歯だけでなく、全身の健康にも被害を及ぼすのではと懸念されている疾患の一つです。各科の専門医と協力することで、「なるべく歯を残す治療」を心がけています。
目次 -INDEX-
歯周病は何が原因?
歯周病の大きな原因は歯周ポケット内に溜まったバイオフィルム(歯垢やプラークとも言われる)です。バイオフィルムの中にいる歯周病菌が関係していますが、どんな種類の歯周病菌が住んでいるかで病原性が変わってきます。病原性の高い悪玉歯周病菌がいるかいないかで歯周病の程度が変わってきます。
歯周病菌とは
歯周病の原因となる細菌は、その病原性により様々なグループに別れています。これらの細菌の中で最も病原性の高いグループを「レッドコンプレックス」といい、「P.gingivalis」「T. forsythia」「T. denticola」の3種類が歯周病の原因菌であると言われています。この他にも歯周病関連菌と言われる病原性の低い細菌のグループがたくさんありますが、主に悪さをするのは「レッドコンプレックス」で、3つの細菌が揃うことでそれぞれが高い病原性を発揮するようになると言われています。そして、この3種類の中でも最も病原性の高い最強の菌がP. gingivalisです。
歯周病菌にはいつ感染する?
それでは歯周病の原因菌はいつ感染するのでしょうか。
病原性の高い「レッドコンプレックス」のうちT. forsythiaやT. denticolaやその他の歯周病関連菌と言われる病原性の低い細菌たちは小学生から高校生ぐらいまでに感染定着します。そして、一番病原性が高い「レッドコンプレックス」のP. gingivalisは18歳以降に定着し始めることがわかっています。
よって、乳幼児期のお子さんのお口には歯周病菌は感染しません。(虫歯の原因菌は乳幼児期から感染します!)
どうやって細菌に感染する?気をつけることは?
歯周病菌はどのようにしてお口の中にやってくるのでしょうか?答えは唾液を介して感染します。先ほど書いたように小学生の頃より歯周病菌の感染定着は始まりますので、少なくとも歯周病に限ってはその時期から気をつけることが必要です。しかし、虫歯菌も同様に唾液感染しますが、その多くが乳幼児期に母親から感染することが多いようです。歯周病菌への感染予防の為にも、小さな頃より箸やスプーンを子供と別にして使用したり、両親や他人の唾液のついた食べ物を与えないなどの注意が必要なのかもしれません。
また、最強の歯周病菌であるP. gingivalisは18歳以降に感染することがわかっています。このうち家族から移ったと思われるものは半分程度でその他は他人の唾液から感染したと推測されます。さらに40歳までの歯周病を発症していない方の唾液を検査すると、その半分からP. gingivalisが検出されたデータもあり、現在ではお口の中に普通に存在する細菌(常在菌)であるとも言われています。絶対に感染したくなければ他人の唾液には細心の注意を払う必要があります。
子どもも歯周病になる?
答えはYesです。前述した通り、歯周病菌の定着は小学生の頃からはじまります。
子供に多い歯周病はプラーク性の歯肉炎と言われるもので小中高までの思春期の時期に、多くが不十分な清掃により付着したバイオフィルム(プラーク)によって起きます。適切なブラッシングやクリーニング、歯石除去により改善するものがほとんどです。また、この時期には病原性の高い細菌への感染は少ない為、バイオフィルムの病原性も低いと考えられます。しかし、適切な処置やブラッシングなどの清掃をせずに放置すると18歳以降のP. gingivalisの感染により、病原性の高い歯周病発症につながる恐れがありますので注意が必要です。
まとめ
歯周病の発症は歯周病菌に感染したからといって必ず発症するとは限りません。私たちの体がもつ免疫力と歯周病菌のもつ病原性とのバランスが保たれていれば、一番病原性が高い「レッドコンプレックス」のP. gingivalisに感染していても歯周病を発症することはありません。予防は可能なのです。その為には、歯周病菌の量をコントロールする必要があり、その一番の対策法は、毎日の適切なお口の清掃と定期的な歯科医院での検診やクリーニングだと考えられます。幼少の頃より歯科医院に通うことは虫歯の予防だけでなく将来の歯周病予防にもつながります。ぜひ一度、歯周病予防のためにご家族でかかりつけの歯科医院もしくは日本歯周病学会が認定する歯周病専門医・認定医の在籍する歯科医院を受診されると良いでしょう。