目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 歯科TOP
  3. 矯正歯科TOP
  4. 矯正歯科コンテンツ
  5. 歯周病だと矯正治療はできない?矯正できるケース・できないケースやメリットを紹介

歯周病だと矯正治療はできない?矯正できるケース・できないケースやメリットを紹介

 公開日:2023/02/08
歯の模型

歯周病とは、口腔内で細菌の感染によって発生する炎症性疾患で、歯肉と呼ばれる歯茎や歯を支える骨などが溶けてしまう怖い病気です。

歯周病を患っている状態で、歯科矯正治療を受けられないというのは本当でしょうか。今回は、歯周病がどんな病気かについて解説をします。

さらに、歯周病の時に矯正治療ができる場合とできない場合にはどんな違いがあるかについても分かりやすく解説します。

今回の記事を読んだ方には、歯周病と矯正治療の関係をきちんと理解し、正しく歯科治療を進めることに役立てて頂けると幸いです。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

歯周病は現代病とも呼ばれる病気

歯ブラシ
歯周病は、近年では現代病といわれることもある病気です。なぜ現代病と呼ばれるのかというと、日本国民の多くが歯周病を患っている、あるいは歯周病予備軍となっているからといわれています。
歯周病は「歯の周りの病」と書きますが、読んで字のごとく歯そのものではなく歯の周りの歯茎や歯肉及び歯を支える骨が傷んでしまう病気です。歯磨きなどのメンテナンスで除去し残した汚れが歯垢や歯石となり、細菌を繁殖します。
細菌が毒素を出し、歯茎や骨にダメージを与えることで発症してしまう病気で、歯を支えられなくなる恐れがあります。

歯周病の有病率

歯周病の有症率は、年齢が高くなるほど上昇していくとされています。厚生労働省の調査によると、45歳以上の過半数が歯周病の原因となる深い歯周ポケットを持っているとのことです。
歯周病は決して他人事の病気ではなく、意識的に対策を取らないと発症してしまう恐れがあるという意識を持つべきなのかもしれません。

歯周病の症状

歯の模型
歯周病にかかると、どんな症状が現れるのでしょうか。兆候としては、口臭や起床時のお口の中のネバネバ感が増えてくるとされています。
また、歯茎から血が出たり赤く腫れてきたりします。歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなったり、歯が浮いているような感じがしたりするのなら、歯周病を疑うべきでしょう。
初期症状は重大な自覚症状がないため見過ごされがちですが、気になることがあれば早めに対処することをおすすめします。
歯周病を発症させないためには、予防段階で早めの対策を取ることが非常に重要です。定期的に歯科医を受診して、点検や口腔内の清掃をしてもらうのも良いでしょう。

歯周病だと矯正治療はできないって本当?

マウスピース
歯周病の治療中では、歯並びを正しくする矯正治療が受けられないといわれることがありますが、果たして本当でしょうか。
矯正治療は子供の段階で受けるものだと認識している方が多いですが、大人になってから治療に臨むケースも少なくありません。
大人の段階で矯正治療を受ける場合には、歯周病をはじめとして虫歯などの口腔内のトラブルを抱えているケースが多いです。
歯周病と矯正治療は、同時に進行させることは可能なのでしょうか。実は、治療の状況によって一概にいえないという面があります。

矯正治療できるケースとできないケース

矯正
実は、歯周病を治療している最中に矯正治療ができる場合とできない場合があります。
基本的には歯周病だからといって矯正治療をしてはいけないということはありません。しかし症状の進行状況によっては、矯正治療を行うことで歯周病が悪化してしまうケースもあり得るのです。
以下に、歯周病を患っている最中において、矯正治療ができるケースとできないケースを紹介します。いずれにしても、自分で安易に判断することなく治療を受けている医師に相談して治療を進めることをお勧めします。

矯正治療できるケース

歯周病の進行度が軽度であれば、特に問題なく矯正治療を進めることが可能です。矯正治療をすることで、歯周病の治療にもプラスに働くこともあります。
しかし、歯周病の進行度は見た目では判断するのが難しく、意外に症状が進行してしまっているというケースもあります。矯正治療を開始する前にレントゲン検査を受けるなどして歯周病の進行度をきちんと把握したうえで実施してもらいましょう。

矯正治療できないケース

歯周病が進行している状態だと、矯正治療を並行して行わない方が良いケースがあります。矯正治療は、歯の周囲に意図的に軽い炎症を起こして歯の位置を正しくするという手法です。
このため、歯周病の進行によりすでに重度の炎症が起こっている状態だと、矯正治療を行うことで重大なトラブルに見舞われる恐れがあります。
歯並びが悪く、見た目を気にするあまり早く矯正治療を受けて歯並びを治したいと考える方もいるかもしれません。
しかし、歯周病との関連を考えて、焦って治療すると思わぬトラブルになってしまう恐れがあります。必ず医師と相談して、無理な治療をすることがないように気を付けましょう。

歯周病の方が矯正治療を行うメリット

マウスピース
歯周病の方が矯正治療を受けることには、実はメリットがあります。歯周病にかかっている時には矯正治療はしない方が良いという見方がある反面、同時に行うことにメリットがあるとする見解もあるのです。
以下に、歯周病の方が矯正治療を行うメリットについて2項目紹介します。

  • 歯磨きしやすくなる
  • かみ合わせがよくなる

病状の進行度合いによっては、メリットを重視したほうが良いケースもあるため、正しく理解しましょう。

歯磨きしやすくなる

矯正治療をすることで、歯磨きがしやすくなるというのは歯周病対策にとってもプラスになります。
歯周病の原因の1つに、歯磨きの際にきれいに汚れを除去できないことが挙げられますが、歯並びが悪いとがたつきがありすき間もできやすく汚れが残りやすい状態になってしまうのです。
矯正治療を行って歯並びをよくすることで、歯と歯のすき間やがたつきを減らす効果が得られ、伴って歯磨きがしやすくなります。歯周病治療において、日々の歯磨きはとても重要です。
歯並びを改善して歯磨きをしやすくし、きれいに汚れを落としていることは歯周病治療にも大きな効果が期待できます。

かみ合わせがよくなる

矯正治療を行うことでかみ合わせが良くなり、歯周病が改善する効果が期待できます。歯周病は、かみ合わせの悪さによって悪化するという側面もあるのです。
かみ合わせが悪い状態で歯を食いしばると歯にダメージが及んでしまい、その結果、歯周病の進行を早めてしまう原因になります。
強い力が歯に加わると、歯を支える組織が耐えきれなくなり損傷を起こす「咬合性外傷」という状態になる恐れがあるのです。
咬合性外傷は、歯茎や歯の骨にダメージを与える歯周病をさらに悪化させる要因になってしまいます。
かみ合わせを良くすることで、歯茎や歯の骨に与えるダメージを減らし、歯周病の進行を遅らせることにつなげられるのです。

歯周病の方が矯正治療を行うリスク

歯ブラシ
歯周病の方が矯正治療を行うことには、一定のメリットがあることを紹介してきました。しかし、歯周病の方が矯正治療を行うことには、大きなリスクもはらんでいます。
以下に、歯周病の方が矯正治療を行うことの主なリスクを3つ紹介します。

  • 歯周病の悪化
  • 歯肉退縮
  • 歯が抜ける

医師とよく相談をしたうえで、適切な治療を行っていきましょう。

歯周病の悪化

矯正治療を行うことで、歯周病が悪化するリスクがあります。矯正治療の主な手法は、意図的に歯茎に炎症を引き起こして歯の位置を調整するというものです。
歯周病は歯肉の炎症が進行した状態であるため、矯正治療を行う事でさらに歯周病をひどくしてしまう恐れがあります。
歯茎の炎症の状態を良く観察して、矯正治療を行っても良いか判断する必要があるでしょう。ご自身では判断できる内容ではないため、医師の判断を仰ぎ、適切な治療を進める必要があります。

歯肉退縮

歯
歯周病の状態で矯正治療を行うことで、歯肉退縮を引き起こしてしまうリスクがあります。歯肉退縮とは、歯茎が何らかの原因で下がってくる状態です。歯肉退縮が起こる原因は様々ありますが、矯正治療を行うこともその1つとされています。
矯正器具を歯に装着した状態では、歯や歯茎に常に力が加えられていることになりますが、適切な器具の設置ができている限り、歯肉退縮は起こりません。
ただ、長期間の器具着用により器具の位置が変わったり歯茎の形状が変化したりすることにより、不適切な力が加えられます。そうなると余計な力が歯茎に加えられ、歯肉退縮を引き起こしてしまうことがあるのです。

歯が抜ける

歯周病の時に矯正治療を行うことで、歯が抜けてしまうリスクがあります。前述のように、矯正治療を行うことにより歯周病の進行を早めてしまう恐れがあるため、場合によっては歯が抜けてしまうかもしれません。
歯周病が進行すると、歯を支える歯茎や骨を溶かしてしまい、歯が支えられなくなってしまいます。本来は、歯が抜けないように対処するのが歯周病治療ですが、矯正治療をすることで歯周病治療の妨げになってしまう恐れがあるのです。

歯周病で矯正治療を行う場合の流れ

歯 
歯周病の時に矯正治療を行う場合には、どんな流れで実施するのが良いのでしょうか。これまで紹介したように、歯周病にかかっている状態では、正しく対処しないと病状が悪化してしまうリスクがあります。
歯周病と矯正治療を適切に実施するため、基本的な治療の流れを理解して対処しましょう。

一般的には歯周病の治療が先

一般的には、歯周病の治療を先にしたうえで矯正治療に臨みます。歯周病の進行度によって、矯正治療に取り掛かるタイミングを図るのです。
歯周病が進行してしまっている状態で矯正治療を行ってしまうと、さらに歯周病を悪化させてしまいかねません。歯周病の状態が改善されてきたことを確認したうえで、矯正治療に取り掛かるのが一般的な対処方法といえるでしょう。

歯周病治療として歯列矯正を行う場合も

歯周病治療を先に行って矯正治療を行うのが一般的な流れではありますが、歯周病治療の一環として歯列矯正を行った方が良いケースもあります。
歯列の矯正を行うことで歯のすき間やがたつきを減らし炎症を抑えるというメリットがあるため、歯周病の進行具合によっては同時に行う方が良いケースもあるのです。
同時に行う事のメリットとデメリットの両方を考慮して、どのような治療をするべきか、その都度医師と相談しながら進めることが肝要です。

まずは信頼できる歯科医に相談しよう

医療従事者
以上のように、歯周病治療および矯正治療は、同時にしない方が良いケースもあれば同時にすることによるメリットを優先するべきケースもあります。
どちらが適切かの判断は、素人では判断できません。医師と相談の上で決めていかないといけないでしょう。
このため、経験豊富で信頼のおける歯科医院を選択することが大変重要です。自宅の近くで診療をしているからなど、安易な理由で受診する医院を選択するのではなく、信頼感のある歯科医を比較しながら探すことをおすすめします。
当サイトでは、診療内容ごとにおすすめの歯科医院をたくさん紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

編集部まとめ

歯
歯周病は、自覚症状が少ないものの歯を失うことになりかねない怖い病気です。予防を含め適切な対応を取らないといけません。

一方で、歯の見た目を気にして矯正治療を早めに受けたいと思っている方もいるでしょう。歯周病の進行状況によっては、矯正治療を受けることで歯に思わぬ悪影響が及びかねません。信頼できる歯科医で納得いくまで相談をして、治療を進めていきましょう。

この記事の監修医師