自力で出っ歯を治す方法はあるの?出っ歯の原因や放置したらどうなるのか詳しく解説します
出っ歯は、上の前歯が前に飛び出た状態の歯並びであり、顔の印象にも関わる歯並びです。そのため、歯並びを治したいと考えている方も多いでしょう。
治す方法はさまざまですが、自力で治す方法はないものかと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、自力で出っ歯を治す方法はあるのかについてご紹介します。出っ歯の原因や放置したらどうなるのかについても詳しく解説するので参考にしてください。
監修歯科医師:
古田 博久(歯科医師)
目次 -INDEX-
出っ歯は自力で治せる?
出っ歯が気になっている方の中には、自力で治したいと考えている方もいるでしょう。しかし、結論からいうと、出っ歯を自力で治すのは難しいです。
歯並びが自然に治癒することはありません。そのため、何らかの器具を用いて治療を受けなければ歯並びの矯正は難しいです。
そのため、ご自分で矯正することは難しく、歯科医による歯列矯正を受ける必要があります。
無理にご自分で力を加えて治そうとすると、重大な損傷を負う可能性もあるため、決してご自分で治そうとしないようにしましょう。
出っ歯の原因とは?
出っ歯を適切な治療で矯正するためには、原因を把握することが大切です。
また、小さいお子様であれば、歯列の形成段階であるため、出っ歯の原因の把握が防止にもつながる場合もあります。そのためにも原因の把握は非常に重要です。
前歯が大きい
出っ歯の原因の1つが、前歯が大きいことです。歯が大きくなる要因としては、遺伝が考えられています。
口腔内で見える歯の大きさ自体は、生後4~5歳の時点で完成しており、遺伝が大きく関係しているといわれています。
さらに、顎と歯の相対的なバランスも前歯が大きくなる要因の1つです。これらの要因から前歯が大きくなってしまうと、前歯が収まるスペースが足りなくなってしまいます。
その結果、前歯は前に突出するような歯列となってしまうため、出っ歯になってしまいます。
子供の頃のおしゃぶりの使いすぎ
子供の頃のおしゃぶりの使いすぎも大きな原因です。乳幼児期におしゃぶりを長期使用していると、出っ歯を起こしやすくなります。
これは、おしゃぶりによって上の前歯が圧迫された状態が続いたり、下顎が下がったりするためです。
同様の理由で、指しゃぶりや爪を噛むような行為も原因に考えられます。少なくとも3歳ごろまでには指しゃぶりの癖は治した方が良いです。
口呼吸をしている
出っ歯の原因としては、口呼吸をしていることも挙げられます。口呼吸には、舌の位置が関係します。
通常、舌は口内の天井部分であるスポットと呼ばれる位置にあり、上顎の歯列内に収まっている状態が正常です。
その状態が、舌への圧力・唇の力・頬の粘膜からの圧力がバランスを取れている状態であり、歯並びを正しい位置に導くようにできています。
しかし、口呼吸をしてしまっている方は、舌が下がった状態です。そのため、上顎から離れて力のバランスが崩れてしまい、頬粘膜からの圧力が優位な状態となってしまいます。
頬からの力が強いため、歯列が内側に押されて狭くなってしまい、出っ歯になってしまうのです。
舌で前歯を押す癖がある
舌で前歯を押す癖も、出っ歯の原因の1つに挙げられます。この癖は、舌突出壁とよばれるもので、会話したり飲み込んだりするときに無意識に舌を前の方に出す癖のことです。
強い力ではありませんが、継続的に前歯を押す力がかかってしまうため、徐々に前歯が動いてしまいます。その結果、出っ歯になることがあります。
遺伝の影響
遺伝の影響も大きな原因です。骨格は、環境因子もありますが、両親からの遺伝情報によっても形成されます。
そのため、両親や祖父母が出っ歯である場合には、遺伝によって出っ歯を生じている可能性が考えられます。
原因の中でも、遺伝を原因とした出っ歯は3~4割を占めると考えられているため、非常に大きくかかわることがわかるでしょう。
出っ歯を放置するとどうなる?
出っ歯を自力で治すのは難しいため、そのままでも良いと考える人も少なくありません。しかし、出っ歯を放置するとさまざまなリスクがあります。
普段の生活に支障をきたすものもあるため、放置するリスクにどのようなものがあるかもしっかりと把握しましょう。
口が乾燥しやすくなる
出っ歯を放置すると、口が乾燥しやすくなります。ドライマウスと呼ばれるもので、さまざまな悪影響を招くため注意が必要です。
出っ歯の場合、口が閉じにくくなってしまうため、口を開いたまま呼吸する口呼吸の状態が続きます。
口呼吸が続いてドライマウスの状態となると、唾液による抗菌作用が低下します。それにより、虫歯や口臭が発生しやすくなってしまうのです。
顎に負担がかかる
顎に負担がかかる点も、放置によるリスクの1つです。出っ歯の状態は、前歯で食べ物を噛めないため、奥歯で無理に噛み切る癖がついてしまいます。
これは顎関節への負担となり、この状態が続くと顎関節症を引き起こすリスクを高めます。
滑舌が悪くなる
出っ歯の放置は、活舌にも悪影響を与える可能性が高いです。歯並びは舌の動きや顎の動かし方に大きく影響します。
前歯が突出していると、歯と歯の間に隙間ができてしまうため、空気が漏れてしまってきちんと発音できなくなってしまいます。
特に、サ行・タ行・ナ行・ラ行の活舌が悪くなり、聞き取りにくくなるでしょう。重症化するとさらに聞き取りにくくなる可能性があるため注意が必要です。
唾液の分泌が減る
唾液の分泌が減ることも考えられます。先述したように、出っ歯になると口が閉じにくいために口呼吸となります。
すると、唾液の分泌量も減ってしまうのです。唾液には抗菌作用があるため、分泌量が減ると虫歯・歯周病・細菌の増殖などさまざまな要因による口内環境の悪化を招きます。
また、これらの影響によって風邪などのリスクも高まると考えられています。
出っ歯の治療法
出っ歯の治療方法には、次のようなものが代表的です。
ご自分に合った矯正方法を把握するためにも、それぞれ特徴をしっかりと把握しておきましょう。
マウスピース治療
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の矯正器具を装着して歯列を矯正する方法です。
マウスピースは市販のものではなく、患者様1人1人に合わせて作成します。また、治療中は、状態に合わせて段階的にマウスピースを交換しながら少しずつ歯を動かします。
マウスピース矯正のメリットは次の通りです。
- 金属アレルギーの方でも使用できる
- 取り外しができる
マウスピースは、主に樹脂などで製作します。そのため、金属アレルギーの方でも使用ができます。
また、自由に取り外しできる点もメリットです。食事やお手入れの際など、自由に取り外せます。しかし、次のような注意点もあります。
- 装着時間など守るべきルールがある
- 対応できない症例がある
マウスピース矯正は自由に取り外しが可能ですが、決められた装着時間を守らなければ、きちんと効果が得られない可能性があります。
1日22時間程度は装着しなければならないため、その時間を装着できるように時間を守りましょう。
また、その他のルールとしては、注意して飲食する点が挙げられます。マウスピースを装着したままの飲食は基本的には不可能です。
そして、コーヒーなどの濃い色の物は着色の可能性もあるため注意が必要です。これらのルールを守りながら、矯正を進めなければなりません。
さらに、マウスピース矯正では対応できない症例があることも注意点の1つです。
例えば、空隙歯列や重度の骨格性の出っ歯の場合などは、マウスピース矯正では対応できない可能性があります。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、ブラケットと呼ばれる器具を歯の表面に装着し、ブラケットにワイヤーを通して歯に力を加えて矯正する方法です。
奥歯までを含めた全ての歯列を整えられる全体矯正と、前歯などの一部分だけを整える部分矯正の2種類があります。
また、ワイヤー矯正は、次のような3通りの矯正方法に分けられます。
表側矯正は、最もオーソドックスなワイヤー矯正で、歯の前面に矯正器具を装着する方法です。ワイヤーが目立ちやすいですが、舌に触れないため発音に影響しにくいです。
また、表側矯正は、対応できる症例が多い点も大きなメリットです。
しかし、矯正器具によって口元に厚みが出たり、矯正器具に食べかすが引っかかって見えてしまったりといったデメリットもあります。
裏側矯正とは、歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着する方法です。表側矯正とは違って目立ちにくい点がメリットです。
しかし、歯の裏側に矯正器具を取り付けるのは難易度が高いため、表側矯正と比べると矯正費用が高額となります。
矯正期間についても、表側矯正よりも長期化する傾向があるため把握した上で選びましょう。
ハーフリンガル矯正は、上側が裏側矯正で下側が表側矯正にする方法です。
上の歯のみを裏側矯正にすることで、治療費を抑え、裏側矯正よりも治療期間を短くできるメリットがあります。
しかし、表側矯正に比べて、対応できる症例が少ないことや治療費が高額になるなどのデメリットもあります。
セラミック矯正
セラミック矯正とは、歯を削り、その場所にクラウンと呼ばれるセラミック製の被せ物を使って整える方法です。クラウンは元の歯の色に近いため、見た目も目立ちません。
痛みが少なく、矯正期間が短い点が大きなメリットです。一方で、噛み合わせを改善できない点や、健康な歯を削らなければならない点がデメリットに挙げられます。
矯正と名前がついていますが、一般的に言われている「矯正治療」とは全く異なります。ご自分の健康な歯を削らなければならないため、この矯正方法を避ける歯科医もいます。また、虫歯や歯周病のリスクが高まる点もデメリットの1つです。
治療の前に注意すること
矯正治療を行う前には、注意するべき点があります。これらのポイントを押さえておかなければ、想定通りの効果を得られないかもしれません。
そのようなトラブルを起こさないためにも、しっかりと治療前の注意点を把握しておきましょう。
丁寧な歯磨きを心がける
治療前に注意する点として、丁寧な歯磨きを心がけることが挙げられます。特にワイヤー矯正の場合は、自由に取り外しが行えません。
いつもの歯磨きとは違い、矯正器具の周囲にも食べかすなどが付着しやすいため、普段以上に丁寧な歯磨きを行うようにしましょう。
矯正器具についた食べかすは、そのまま放置してしまうと口臭や虫歯のリスクを高めます。
効果的な歯磨き方法としては、食後の歯磨きやマウスウォッシュなどを使ったこまめなケアです。ヘッドの小さな歯ブラシで丁寧に磨くなども有効です。
器具を使うなら保定期間を把握する
器具を使うなら保定期間を把握する点も、注意点の1つに挙げられます。特にマウスピース矯正の場合、自由に取り外しが可能なため、保定期間が十分出ないケースがあります。
もちろん、会話や食事などで取り外しは問題ありませんが、1日に22時間程度は装着しなければ想定通りの矯正効果は得られません。
そのため、食事と歯磨き以外の時間は、可能な限り装着を徹底しましょう。万が一保定期間が十分でなければ、矯正の長期化を招く可能性があります。
出っ歯を治すために必要な費用とは
出っ歯を治すために必要な費用は、10万円~150万円程度です。しかし、この費用は矯正方法の種類・歯列矯正の範囲・歯科医院によっても大きく異なります。
例えば、マウスピース矯正の場合でも10万円~100万円程度と非常に幅広いです。ワイヤー矯正の場合でも、表側矯正よりも裏側矯正の方が高額です。
それぞれの症状に合わせて、矯正方法は変わってきますので、費用も大きく変わると把握しておきましょう。
また、矯正時には、検査代・診察代・保定観察費なども発生します。
これらの費用も歯科医院によって異なるため、具体的な費用を知りたい場合には、歯科医院に相談してご自分の症状に必要な矯正費用を把握するようにしましょう。
自力で出っ歯を治すことについて知りたいときは?
自力で出っ歯を治すことは、非常に難しいです。歯並びは自然に治ることはなく、適切な矯正をしなければ、改善できません。
そして、その矯正は歯科医によって適切に行われる必要があります。症状に合わせて、適切な矯正方法を用いなければならないためです。
矯正は高額と思われている方も多いでしょう。金額は、症状・矯正方法・歯科医院によっても異なります。
詳しい矯正方法や費用について知りたい場合には、専門の歯科医院に相談して、適切な治療方法を教えてもらいましょう。
編集部まとめ
出っ歯は、歯並びだけの問題ではなく、口元の印象に大きくかかわる問題です。そのため、できればご自分で治したいと思っている方もいるでしょう。
しかし、出っ歯の改善はご自分では難しいです。自力で、正確に正しい歯並びに治せないためです。治すためには、歯科医による矯正が必要です。
どのような矯正が最もふさわしいかなどを教えてもらい、適切な治療を進めましょう。
参考文献
参考サイト
- どんな出っ歯も可能な治療法と、自力で治すデメリット|医療法人社団 千美会 ザ・ホワイトデンタルクリニック
- 自力で出っ歯を治す方法はある?歯医者での矯正の種類やメリット・注意点を解説|医療法人 梅田リンガル マウスピース矯正歯科医院 北浜オルソ
- 軽度の出っ歯の治し方とは?治療法を費用感も含めて解説!|hanaravi歯科矯正blog
- 前歯が大きいのはなぜ?原因と対処法、子供の場合は歯並びに影響する?|大崎シティデンタルクリニック
- 出っ歯は自力で直せる?4つの治療方法を紹介!|共立美容外科
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