歯列矯正で口ゴボを治す方法|治療を行うメリットや治療期間、費用相場も解説

口ゴボは口元が前に突き出している状態を指し、見た目の印象に大きく影響を与えます。横顔のバランスが崩れて見えたり、不自然な印象を与えたりしてしまうこともあるでしょう。
特に写真や会話の際にコンプレックスを感じやすく、改善したいと考える方も少なくありません。
口ゴボの原因は骨格や歯並び、唇や軟組織の影響などさまざまで、その根本的な改善には歯列矯正が有効です。
本記事では口ゴボの特徴や原因をはじめ、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正など治療方法の違い、必要な期間や費用相場を詳しく解説します。
さらに、治療によって得られるメリットや歯科医院選びのポイントも紹介するため、口ゴボ改善を検討している方は参考にしてもらえれば幸いです。

監修歯科医師:
小田 義仁(歯科医師)
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
目次 -INDEX-
口ゴボとは

口ゴボとは医学的な専門用語ではありませんが、一般的に口元全体が前に突き出て、こんもりと盛り上がって見える状態を指します。
正式な歯科用語では、上下顎前突や上顎前突などが近い状態です。日本人はもともと骨格的に欧米人より口元が出やすい傾向があるため、口ゴボに悩む方は少なくありません。
口ゴボかどうかを簡易的に判断するために、Eラインが基準に用いられます。
Eライン(エステティックライン)とは、横顔の美しさの基準とされるもので、鼻の先端と下顎の先端を直線で結んだラインのことです。
鏡の前で、ご自身の鼻先と顎先に定規や指を当ててセルフチェックをしてみましょう。上下の唇が、Eラインに触れるか、少し内側にある状態が理想とされています。
反対に、上下の唇、あるいはどちらか一方の唇がEラインよりも大きく前に出ていると口ゴボの傾向があります。
とはいえ、これはあくまで簡易的な目安です。鼻の高さや顎の発達具合によってもEラインは変化するため、正確な診断には歯科医師による精密な検査が必要です。
口ゴボは、見た目のコンプレックスにつながりやすいだけではありません。お口が閉じにくいことで口腔内が乾燥し、むし歯や歯周病、口臭のリスクを高めるなど健康面にも影響を及ぼすことがあります。
口ゴボの程度は人によって異なり、軽度であれば本人も気付かないまま過ごしていることもあります。
しかし、写真や鏡に映った自分の横顔を見て気になり始めると、コンプレックスにつながる方も少なくありません。
そのため、美容面と健康面の両方から改善を希望し、歯列矯正に踏み切る方が増えています。
口ゴボの原因

口ゴボになってしまう原因は一つではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。
ここからは口ゴボの原因を大きく3つに分け、それぞれの原因を詳しく解説します。
骨格の問題
口ゴボの大きな要因の一つが、顎や歯槽骨の骨格的な問題です。
上下の顎が前に出ている上下顎前突や、特に上顎が大きく前に張り出している上顎前突などの場合は骨格そのものが突出しているため、口元が全体的に前に出て見えます。
これは遺伝的な影響も大きく、両親の骨格に似て現れるケースも少なくありません。
骨格性の口ゴボは歯並びだけを整えても根本的な改善が難しい場合があり、必要に応じて外科的矯正や大がかりな治療が検討されます。
歯の向きの問題

骨格には大きな問題がなくても、前歯が前方に傾斜して生えていると口元が押し出されたように見え、口ゴボの印象を与えます。
特に日本人は顎が小さく歯が並ぶスペースが不足しやすいため、歯が前に出たりデコボコに生えたりするケースが少なくありません。
この場合、歯列矯正で歯の向きを正しく整えることで、横顔のラインを大きく改善できる可能性があります。
抜歯を伴う矯正によってスペースを確保し、歯を奥に移動させる治療が行われることもあります。
唇や軟組織の問題
骨格や歯並びに加え、唇やその周囲の筋肉や軟組織も口ゴボの原因の一つです。もともと唇が厚かったり、鼻が低かったりすると、相対的に口元が前に出ているように感じられます。
また顎の先端が小さかったり、後退したりしているとEラインが崩れやすく、口元が突出した印象を与えてしまうケースもあるでしょう。
これらに加え、幼少期からの指しゃぶりの習慣や舌の位置の悪さが影響し、後天的に口ゴボの原因となることもあります。
歯列矯正で口ゴボを治す方法

口ゴボの原因が主に歯の傾きや位置にある場合、歯の向きや位置を整える歯列矯正が改善には有効です。
ここでは代表的な治療方法のワイヤー矯正やマウスピース型矯正、部分矯正のそれぞれの特徴や向いているケースを解説します。
ワイヤー矯正
歯の表面や裏側にブラケットと呼ばれる小さな装置を取り付け、そこにワイヤーを通して力をかけることで少しずつ歯を動かしていく歯列矯正方法です。
歯科医師が直接ワイヤーを調整して歯を動かすため、ミリ単位の精密なコントロールが可能で、重度の口ゴボや複雑な歯並びにも対応しやすいのが特徴です。
ただし、装置が目立ちやすく、治療中の見た目が気になる方にとってはデメリットとなることがあります。近年では、白や透明の目立ちにくいブラケットも選択できます。
また歯の裏側に装置を取り付ける裏側矯正(舌側矯正)は、外からは装置がほとんど見えないため、見た目を気にする方に注目されている治療方法です。
とはいえ表側矯正に比べて費用が高くなる傾向があり、慣れるまでは滑舌に影響が出たり、舌に違和感を覚えたりするケースがあります。
マウスピース型矯正

患者さん一人ひとりの歯型に合わせて作製された、透明なマウスピースを段階的に交換していくことで歯を動かす歯列矯正方法です。
取り外しが可能で目立ちにくいため、社会人や人前に立つ機会が多い方にも選ばれやすい治療法です。口ゴボの改善では、歯の軽度な前突や傾斜を整える場合に適しています。
一方で、歯を大きく後退させる必要があるケースや骨格的な要因が強いケースには対応が難しいこともあります。
また、1日20時間以上の装着が必要なため、自己管理が重要です。
部分矯正
前歯だけ、あるいは上下いずれか一部の歯並びを整える治療が部分矯正です。全体矯正に比べて治療期間が短く、費用も抑えられます。
前歯の傾斜が軽度で、少し引っ込めるだけで口ゴボの印象が改善できる場合には有効な選択肢です。
とはいえ、前歯だけを動かしても、口元の突出感の根本的な改善にはつながらないことがほとんどです。
軽度の前歯の傾きが原因である場合など、ごく稀に適応となる可能性はありますが、基本的には全体矯正が必要になると考えておきましょう。
【歯列矯正別】口ゴボを治すために必要な期間と費用相場

口ゴボの歯列矯正にかかる期間や費用は、選ぶ治療方法や症例の難易度によって大きく変わります。
ここではワイヤー矯正やマウスピース型矯正、部分矯正の一般的な費用目安を紹介します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は幅広い症例に対応できるため、口ゴボの改善にも広く用いられる治療方法です。
治療期間は通常2〜3年程度で、抜歯を伴う場合はさらに長くなることもあります。
骨格的な影響が強い場合や、大きな歯の移動を必要とするケースでは特に時間がかかる傾向があります。
費用の相場は全体矯正で700,000~1,200,000円(税込)程度です。
装置の種類によっても差があり、目立ちにくい舌側矯正やセラミックブラケットを使用する場合は1,000,000~1,200,000円(税込)程度になるケースも珍しくありません。
マウスピース型矯正

マウスピース型矯正は、軽度〜中等度の口ゴボに適しており、治療期間はおおよそ1年半〜3年が目安です。
患者さん自身が取り外しを行えるため、装着時間を守れるかどうかで治療の進行に差が出るのがデメリットです。
短期間で終わるケースもあれば、装着が不十分で予定以上に時間がかかることもあります。全体矯正では800,000~1,200,000円(税込)程度が相場です。
透明で目立ちにくいメリットがある一方、費用はワイヤー矯正と同等かやや高めになる傾向があります。
部分矯正
部分矯正は前歯など限られた範囲を整える治療で、軽度の口ゴボに適しています。治療期間は短めで、3ヶ月〜1年半ほどで改善できるケースが一般的です。
全体の噛み合わせに問題がない場合や短期間で見た目を整えたい方に向いています。 費用相場は200,000~500,000円(税込)程度と、全体矯正に比べて大幅に抑えられるのもメリットです。
ただし、口ゴボの原因が骨格や大きな歯の移動に関わる場合には適さず、適応範囲が限られている点には注意が必要です。
口ゴボを治すメリット

口ゴボを歯列矯正で改善すると、見た目の印象だけでなく、噛み合わせや口腔環境など機能面でも大きなメリットが得られます。
ここでは代表的な3つの効果をみていきましょう。
顔全体のバランスが整う
最初に挙げられるのは、横顔や正面からの見た目が改善されることです。
口ゴボは鼻先から顎先を結ぶEラインから唇が前に出ている状態であるため、歯列矯正によって歯や口元を後方に移動させることで、自然で調和の取れた横顔に近づきます。
また、口元がすっきりするためお顔全体が引き締まって見え、笑顔の印象も明るくなります。
コンプレックスが解消されることで、自分に自信が持てるようになり、精神的にも大きなプラスとなるでしょう。
噛み合わせが改善する
口ゴボは前歯が前方に傾斜していることが多く、噛み合わせがずれているケースも少なくありません。
歯列矯正によって歯を正しい位置に動かすことで、上下の歯がしっかり噛み合うようになり、食事の際の負担が減ります。
正しい噛み合わせは食べ物を効率よく咀嚼できるだけでなく、顎関節への負担軽減や肩こり、頭痛の改善にもつながる可能性があります。長期的に見れば、歯や顎の健康を守る大切な要素となるでしょう。
お口のなかの健康を保ちやすくなる
口ゴボの原因である歯並びの乱れは、歯磨きのしづらさや唇の閉じにくさを引き起こします。
歯列矯正で歯が整うと、歯ブラシやフロスが隅々まで届きやすくなり、むし歯や歯周病のリスクを減らすことができます。さらに、お口を閉じやすくなることで口呼吸の改善が期待できるのも特徴です。
口呼吸は口腔内が乾燥しやすく、細菌が繁殖しやすい状態を招きますが、鼻呼吸に切り替えられるためドライマウスや口臭の予防にもつながります。
見た目の改善と同時に、健康維持のメリットも得られるでしょう。
口ゴボを治療するための歯科医院の選び方

口ゴボの改善を目的とした歯列矯正を成功させるためには、適切な歯科医院選びが欠かせません。
歯列矯正治療は長期間にわたり通院する必要があり、費用も決して安くはないため、信頼できる歯科医院を見極めることが大切です。
まず注目したいのは、歯列矯正治療に関する専門性です。
一般的な歯科医院でも歯列矯正を扱うことはありますが、日本矯正歯科学会の認定医や歯列矯正専門の歯科医師が在籍している歯科医院は、より高度な知識と経験を持ち合わせています。
次に、治療方法の選択肢が豊富かどうかも重要です。
ワイヤー矯正やマウスピース型矯正、部分矯正などそれぞれの特徴や適応範囲は異なるため、自分の症例やライフスタイルに合わせて選べる環境が望ましいでしょう。
また、抜歯の有無や治療計画を丁寧に説明してくれるかどうかも確認しておく必要があります。 さらに、費用や通院のしやすさも考慮しましょう。
歯列矯正治療は数年単位で継続するため、通院が負担にならない立地や診療時間の歯科医院を選ぶ必要があります。
加えて総額の見積もりを明示してくれる歯科医院を選ぶと、後から追加費用が発生する不安を減らせるでしょう。
初診相談やカウンセリングの対応も見極めのポイントです。
患者さんの悩みに寄り添い、メリットだけでなくデメリットや注意点まできちんと説明してくれる歯科医院であれば、納得感を持って治療を進めることができます。
いくつかの歯科医院でカウンセリングを受け、比較検討するのもおすすめです。
編集部まとめ

口ゴボは、見た目のコンプレックスになりやすいだけでなく、噛み合わせやお口の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
その原因は骨格や歯の傾き、軟組織などさまざまですが、歯列矯正によって大きく改善できる可能性があります。
治療にかかる期間や費用は方法や症状の程度によって異なりますが、一般的には200,000~1,000,000円(税込)程度、期間も数年単位が目安です。
決して安くはありませんが、治療を行うことで横顔のバランスが整い、自信を持って笑えるようになります。
それだけでなく、噛み合わせの改善やむし歯、歯周病予防など健康面でのメリットも大きいのが特徴です。
歯列矯正の専門知識を持つ歯科医師に相談し、メリットやデメリットを理解したうえで納得して治療を始めれば、長期的に満足のいく結果を得やすくなるでしょう。
口ゴボは決して珍しい悩みではなく、適切な治療で改善できる問題です。
見た目と機能の両面から自信を持ちたい方は、まずは専門の歯科医院でカウンセリングを受け、自分に適切な治療方法をみつけましょう。
参考文献




