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部分矯正とは?メリット・デメリットを解説

 公開日:2023/12/14
部分矯正 メリットデメリット

鏡を見るたびに歯並びの乱れが気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

歯科矯正したいものの、費用や痛みが気になる…」そのようなお悩みをお持ちの方も多いでしょう。

また子どもの将来を考え、「今のうちに歯科矯正をした方がいいのだろうか」と迷っている方もいらっしゃるかもしれません。

そのような悩みや迷いをお持ちの方におすすめしたいのが歯科矯正部分矯正です。

本記事では部分矯正のメリット・デメリットや費用の目安などを解説します。是非とも治療方法選択の参考にしてください。

宮島 悠旗

監修歯科医師
宮島 悠旗(歯科医師)

プロフィールをもっと見る
・出身大学
愛知学院大学歯学部
・経歴
2005年 愛知学院大学卒業 歯科医師免許取得
2006年 東京歯科大学千葉病院 臨床研修医修了
2006年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 入局
2010年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 卒業 歯学博士取得
2011年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 助教就任 
日本矯正歯科学会認定医取得
2014年 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス開業
2017年 著書『国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の「デンタルケア」-』出版(幻冬舎)
2021年 著書『歯並び美人で充実人生:幸せを呼ぶゴールデンスマイル』出版(合同フォレスト)
2022年 (株)オーティカインターナショナル/オーティカプロモーション myobrace® 認定講師就任
・資格
歯科医師免許、歯学博士(東北大学)、日本矯正歯科学会認定医
・所属学会 ほか
日本矯正歯科学会所属、invisalign® DIAMOND Status、 myobrace® 認定講師

歯科矯正の部分矯正とは?

歯科矯正の部分矯正とは?
歯科矯正部分矯正とは、すべての歯ではなく「上の歯だけ」・「下の歯だけ」・「前歯だけ」といったように治したい部分や目立つ部分の歯にのみ装置を着ける治療方法です。
前歯だけ歯並びをよくしたい」・「全体ではなくこの部分だけが気になる」といった方は、全体矯正より部分矯正の方が適している可能性があります。
気になる部分の歯並びだけを治したいという方は、部分矯正を検討してみるといいでしょう。

部分矯正のメリット

部分矯正のメリット
部分矯正を選択するメリットは多々ありますが、「部分的に治療する」と聞いてイメージしやすいものばかりです。

  • 費用を抑えられる
  • 治療期間が短くて済む
  • 違和感が少ない
  • 痛みが少ない
  • 発音への影響が少ない

下記ではこれら5つのメリットについて、ひとつずつ解説していきます。

治療期間が短くて済む

治療期間が短くて済む
治療期間が短いのも部分矯正の大きなメリットです。全体矯正に比べて、歯を動かす範囲が少ないため期間が短くなります。全体矯正だと2〜3年かかるのに対し、部分矯正の治療期間は平均6ヶ月で、長くても1年程度で済むでしょう。
矯正治療をはじめると定期的に通院する必要があります。そのため、忙しくて矯正治療に踏み出せないという方もいるでしょう。
しかし部分矯正なら短期間で済むため、全体矯正と比べると通院の負担も軽減できます。「歯並びが気になるけど、忙しくて時間が取れない」、そんな方でも部分矯正ならはじめやすいのではないでしょうか。

違和感が少ない

歯科矯正は何らかの装置を歯に装着しますので、食事などの際に若干の違和感は避けられません。
部分矯正では治療したい部分にのみ装置を着けますので、こういった違和感が少ないのも特徴といえます。

痛みが少ない

歯科矯正は装置によって歯に力をかけて移動させる治療方法ですので、次のような際に痛みを感じる方がいます。

  • 歯が動くとき
  • 噛むとき
  • 装置が唇や口内に当たるとき

ある程度の痛みは歯が動いて治療が進んでいる証拠と考えて我慢する他はありませんが、少ないに越したことはないでしょう。
この痛みの点においても、一般的に部分矯正の方が全体矯正と比べ少なく済みます。

発音への影響が少ない

マウスピース型や歯の裏側に装置を着ける矯正治療の場合、特に舌を歯の裏側につける発音がしづらくなる場合があります。
接客業など、人と会話する機会が多い方にとっては不便に感じる場合もあるかもしれません。そのため、なかなか治療に踏み出せない方もいるのではないでし
うか。
多くの場合は数週間から1ヶ月程度で慣れて問題なく会話できるようになりますが、部分矯正であればそもそも影響が少ないといえるでしょう。
歯並びが気になる範囲が狭く、発音への影響が気になる方は部分矯正を検討してみてください。

部分矯正のデメリット

部分矯正のデメリット
ここまで解説したようなメリットがある一方、部分矯正にはデメリットもあります。
本人が部分矯正を希望していても、症例によっては全体矯正を選択せざるを得ない場合は多々あります。
下記のようなデメリットもしっかり確認し、歯科医師のカウンセリングを受けた上で治療方法を選択してください

治療できない症例もある

部分矯正はそもそも「全体矯正までは必要としない軽度の歯並び矯正」を目的に開発された治療方法ですので、重度の歯並び矯正には適しません
また以下のような症例についても部分矯正による治療が適さないケースが多いため、部分矯正が可能かどうかは治療開始前に歯科医師に相談しましょう。

  • 出っ歯
  • 八重歯
  • でこぼこな歯

また、治療実績や報酬欲しさに無理な部分矯正をすすめてくるクリニックにも注意が必要です。患者側としては判断が難しいところですが、複数のクリニックに相談するといった工夫によりある程度は防げるでしょう。

噛み合わせの改善は難しい

部分矯正といっても過言ではないデメリットが、噛み合わせをつくれないという点です。
本来部分矯正が向かない症例にもかかわらず無理に部分矯正を選択した結果、かえって噛み合わせが悪くなるというケースすらあります。噛み合わせの改善を目的としている場合、部分矯正は適していないといえるでしょう。

仕上がりの完成度を求める人には不向き

部分矯正はその名の通り一部の歯を矯正する治療方法ですので、全体的な仕上がりの完成度を求める人には向いていません。また治療が完了した後の安定性も著しく劣るといわざるを得ず、後戻りのリスクが付きまといます。
このため費用や治療期間といったメリットと最終的な完成度、どちらを重要視するのかは治療開始前にはっきりさせておく必要があります。
部分矯正が完了した段階で満足できず結局全体矯正を行った」などという残念な結果にならないよう、治療方法は慎重に選択しましょう。

部分矯正で治せる症状は?

部分矯正で治せる症状は?
ここからは部分矯正で治せる症例について、以下の3例を紹介します。

  • 軽度の空隙歯列(すきっ歯)
  • 軽度の乱ぐい歯
  • 軽度の上顎前突(出っ歯)

一見してお分かりの通り、すべてに「軽度の」という制限がついています。
ご自身の症例が軽度かどうかは判断が難しいため、部分矯正で治るのかを知るためにまずは歯科医師に相談することをおすすめします。

軽度の空隙歯列(すきっ歯)

歯と歯の間に隙間がある状態を一般的に「すきっ歯」と呼びますが、正式診断名では「空隙歯列」といいます。
こちらのすきっ歯についても、軽度のものであれば部分矯正による治療が可能でしょう。
しかしながら治療後に後戻りするリスクがあるため、歯科医師と相談の上でリテーナーと呼ばれる保定装置を装着するなどの対策が必要です。

軽度の乱ぐい歯

歯が顎よりも大きいなどの理由により、歯と歯が前後に重なって生えている状態を乱ぐい歯と呼びます。犬歯が隣の歯の前方に突き出している「八重歯」が代表例です。
乱ぐい歯も軽度でその他の問題を併発していない場合であれば、部分矯正で改善する可能性があります

八重歯をチャームポイントとする方もいますが乱ぐい歯は歯磨きがしづらいため、そのままにしているとむし歯・歯周病のリスクがあがります。
むし歯・歯周病になるとそちらの治療が優先されるため、矯正治療ができません。部分矯正であっても時間がかかってしまうので、早めに治療を検討をしましょう。

軽度の上顎前突(出っ歯)

軽度の上顎前突
上の前歯が前方に突き出している状態は広く「出っ歯」と呼びますが、こちらは「上顎前突」が正しい診断名です。
この上顎前突も、軽度でその他の問題を併発していない場合に限り部分矯正で改善するかもしれません。上顎前突は前歯が出ているため口が閉じづらく、口呼吸になりやすいです。
子どもの場合、転んだ弾みで前歯を折ってしまうなどのトラブルが起きる可能性もあるでしょう。
他にも口を開けて笑ったときに歯茎が見える・無理に口を閉じると顎の部分にシワができて不機嫌そうに見えるなど、さまざまなデメリットがあります。
軽度だったら部分矯正で治療でき、早く症状を改善できます。前歯の出っ張りが気になる方は早めに歯科医師に相談してみてはいかがでしょうか。

部分矯正の方法は?

部分矯正の方法は?
部分矯正の方法には、大きく分けて以下の2つがあります。

それぞれにメリットとデメリットがありますので、順番に解説します。

ブラケット矯正

歯列矯正の方法として従来より用いられているのがブラケット矯正です。ブラケットと呼ばれる装置を歯に装着してワイヤーでつなぎ、歯を引っ張って歯列を矯正します。
ブラケットには以下のような種類があります。

唇側ブラケットは一般的なブラケットです。歯の表側に金属の装置が装着されているところを見たという経験がある方も多いのではないでしょうか。
唇側ブラケットのメリットは

  • 費用が安い
  • 発音に影響が生じにくい
  • 対応可能な症例が幅広い

といったものです。
一方デメリットは

  • 目立つ
  • 取り外しができない
  • 食ベ物などが挟まる

などがあげられます。
舌側ブラケットは歯の裏側に装着するブラケットです。唇側ブラケットに比べ「目立たない」・「唇を傷つけない」といったメリットがあります。
一方で「発音に影響が出る場合がある」・「手入れがしづらい」といったデメリットもあります。
クリアブラケットはその名の通り透明なブラケットで、通常の唇側ブラケットと比べた場合のメリットはとにかく「目立ちづらい」の一点です。
とにかく費用を抑えたい」・「治療中の見た目は気にしない」という人はブラケット矯正が向いているといえるでしょう。

マウスピース型矯正

マウスピース型矯正
マウスピース型矯正はブラケット矯正に比べ新しい治療方法で、透明なマウスピースを装着する方法により歯列矯正を行います。
現在の歯並びから治療完了時を想定した歯並びに向かって、定期的にマウスピースを交換しながら徐々に歯を動かしていくのです。
マウスピース型矯正に使用されるマウスピースとしては「インビザライン」がメジャーです。
特に2023年現在においては、前歯のみの部分矯正に特化した「インビザラインGo」の使用も広がっています。
ブラケット矯正と比べた場合、マウスピース型矯正のメリットは次のとおりです。

  • 目立ちにくい
  • 自由に取り外せる
  • 食事に気を使わなくてよい
  • 不意に外れるなどのトラブルが少ない

一方で期待通りの効果を得るためには「1日のうち20時間~22時間は外さない」・「なくさない」・「歯科医師の指示通りに交換する」など厳格な自己管理が求められます。
また費用はブラケット矯正より高くなる傾向にありますので、「多少の費用面は気にしない」・「目立つのはいやだ」・「食事などの際には外したい」という人に向いているでしょう。

部分矯正の費用目安

部分矯正の費用目安
先ほど「部分矯正は全体矯正に比べて費用が抑えられる」とお伝えしましたが、実際はいくらくらいかかるのでしょうか。
一例にはなってしまいますが、ブラケット矯正であれば20~30万円(税込)程度・マウスピース矯正であれば40万円(税込)程度が目安となるようです。
なお、歯列矯正治療は自由診療となり健康保険の適応は受けられませんのでご注意ください。
しかし「顎変形症により顎の骨の手術を併用する場合」や、「厚生労働省の指定する先天異常を有する不正咬合」などといった特殊な事例は保険適応の対象となります。
上記のケースの場合は一度クリニックに確認することをおすすめします。

編集部まとめ

まとめ
歯は一生付き合っていく相棒であり、食に深く関係することを考えれば健康の根源ともいえる大切な存在です。

またあなたが他人の顔を見るとき、歯並びは意外と気になるものではないでしょうか。

こういった理由からも歯列矯正を検討する人の数は年々増加傾向にあるようです。

さらには自分以上に子どもの将来のため、早めに歯列矯正を…と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし費用・期間・見た目の問題から、なかなか治療に踏み切れない方は少なくありません。

このようなジレンマをある程度解消してくれるのが部分矯正という選択肢です。

非常に魅力的な治療方法ですが、本記事で解説した通り「治療できない症例が多い」・「軽度な症状に限る」といったデメリットがあります。

あくまで部分矯正の目的は口元からのぞく部分の見た目の改善であり、機能的な改善を望むのであれば全体矯正がおすすめという結論になります。

また費用については極力、治療前のカウンセリング段階で治療完了までの総額の目安を内訳とともに提示してくれるクリニックを選びましょう。

ただし、安ければよいということではありません。あまりに相場と比べて安いクリニックは、

  • 歯科医師の経験や技術が不足している
  • 粗悪な部材を使用している
  • 事前に説明がなかった費用を後から請求される

などといったトラブルの可能性が考えられますので避けた方が賢明です。

本記事が、あなたやあなたの子どもの歯にとって適切な治療の選択をする手助けになれば幸いです。

この記事の監修歯科医師