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インビザラインの奥歯がパカパカする原因は?マウスピースが浮くと生じるリスクや対処法を解説

 公開日:2025/09/16
インビザラインの奥歯がパカパカする原因は?マウスピースが浮くと生じるリスクや対処法を解説

インビザライン治療中に、奥歯のマウスピースがパカパカと浮くケースは珍しくありません。浮いた状態が続くと治療計画に遅れが生じる恐れがあります。 本記事では、インビザラインの奥歯がパカパカする原因とリスク、適切な対処法などを詳しく解説します。 マウスピース型矯正装置の効果を引き出すためにも、正しい知識を身につけて不安なく治療を進めることが大切です。

小田 義仁

監修歯科医師
小田 義仁(歯科医師)

プロフィールをもっと見る
小田歯科・矯正歯科
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事

インビザラインの奥歯がパカパカする原因

考えるポーズの女性

インビザラインがパカパカするとはどのような状態か教えてください。

インビザラインがパカパカするとは、マウスピース(アライナー)と歯の間に隙間ができ、密着していない状態を指します。この状態は専門用語でアンフィット(不適合)と呼ばれており、インビザライン治療中によく見られる現象です。通常、マウスピースは歯列に密着し、計画どおりの力を均等に加えます。マウスピースが浮くと矯正力が低下し、計画どおりの治療効果を得られません。視覚的には、マウスピースの縁が歯茎から浮き上がって見えるほか、舌で触ったときに隙間を感じられます。特に奥歯は前歯に比べて歯の高さが低く、マウスピースの保持力が弱くなりやすいため、インビザラインが浮きやすいです。

インビザラインの奥歯が浮いてしまう原因を教えてください。

インビザライン奥歯が浮く原因として、以下が挙げられます。

  • 装着時間の不足
  • 装着方法が不適切
  • 歯の移動の遅れ
  • マウスピースの変形や破損
  • アタッチメントの脱落
  • 噛み合わせの問題

一般的な原因は、装着時間の不足です。インビザライン治療では1日20〜22時間装着が必要で、時間を守らないと歯が計画どおりに動かずフィットしなくなります。また、指で押し込む方法では不十分です。補助器具のチューイーを使用しないと浮きが生じます。

インビザラインが浮いても問題ない範囲はどの程度ですか?

インビザラインのマウスピースが浮く問題には許容範囲があります。浮きが1〜2mm程度なら問題ない範囲とされ、この程度のマウスピースの浮きであれば、装着時間を守ると自然に解消される場合がほとんどです。新しいマウスピースに交換した直後は歯が位置に順応しておらず、0.5mm程度の隙間が生じる場合があります。これは正常な反応で、数日から1週間程度で歯が動き、マウスピースが密着します。2mm以上の浮きが続く場合や、1週間以上経過しても改善しない場合は注意が必要です。治療効果が十分に得られていない可能性があり、早急に歯科医師への相談をおすすめします。浮きの程度は定期的にセルフチェックし、気になる変化があれば歯科医師に相談しましょう。

奥歯以外が浮くケースもありますか?

奥歯以外でも浮きが生じるケースはあります。特に前歯や犬歯(八重歯)は浮きやすい部位として知られています。前歯の場合、側切歯(上の前歯の隣の歯)はほかの歯と比べて小さく、矯正力に対する抵抗が弱いため浮きやすい傾向です。犬歯が歯列から外れて八重歯になっている場合、マウスピースが引っかかりにくくチューイーも噛みにくいため、マウスピースが浮く状態が起こりやすい歯並びです。ガタガタが大きい歯並びや重度の不正咬合では、複数の歯で同時に浮きが発生します。また矮小歯(通常より小さい歯)の場合、マウスピースとの接触面積が少なくなるため、コントロールが困難になり浮きやすくなります。どの部位であっても、浮きを感じた場合は適切な対処が必要です。

インビザラインの奥歯がパカパカすると生じるリスク

レントゲンの説明をする医師

インビザラインが浮くとどのような問題がありますか?

インビザラインが浮くと、治療効果の低下のような大きな問題を招きます。マウスピースが正しく密着しないと計画どおりの力がかからず、歯の移動が計画どおりに進みません。その結果、治療期間が延びる恐れがあります。歯の移動が不均等になるリスクもあります。一部の歯だけが適切に動かない状態が続くと、全体の噛み合わせバランスが崩れ、治療完了後の仕上がりに影響を与えるでしょう。矯正力が十分にかからない状態では、すでに動いた歯が元の位置に戻ろうとする力に負けてしまい、歯の後戻りを引き起こします。治療が計画どおりに進まないと、マウスピースの再製作や追加の治療費用が発生する場合があるでしょう。追加費用は自由診療(保険適用外)になり、10,000〜30,000円(税込)が目安です。金額は歯科医院によって異なります。

マウスピースがパカパカするのを放置するとどのようなリスクがありますか?

マウスピースのパカパカを放置すると、治療計画の大幅な修正が必要です。歯が予定どおりに動かない状態が続くと、現在の治療計画では対応できなくなり、新たな歯型採取から始めてマウスピースをすべて作り直さなければならないケースがあります。お口のなかを傷つけるリスクも懸念されます。浮いたマウスピースの縁が頬や舌に当たり、傷ができる恐れもあるでしょう。また装置と歯茎の間に粘膜を挟む可能性もあります。外傷が悪化すると傷の治療を優先するため、歯列矯正の一時中断が必要です。フィット不良が続くと歯周組織に負担がかかり、歯肉炎や歯周病リスクが指摘されています。結果的には、理想的な歯並びを達成できないまま治療が終了し、患者さんの満足度に大きく影響します。

インビザラインの奥歯がパカパカする場合の対処法

デンタルケアイメージ

インビザラインの奥歯がパカパカする場合の対処法を教えてください。

奥歯の浮きを改善する対処法は、以下のとおりです。

  • 装着時間の見直し
  • チューイーの正しい使用
  • 一つ前のマウスピースに戻す
  • 歯科医院の受診

まず装着時間を見直します。1日20〜22時間を厳守し、食事と歯磨き以外は外さないようにしましょう。装着時間が不足している場合、この改善だけでパカパカが解消されます。次にチューイーの正しい使用を行います。特に新しいマウスピースに交換した直後は、歯科医師の指示に従い5〜20分程度しっかりとチューイーを噛んでマウスピースを歯に密着させましょう。装着時間やチューイーの使用方法の見直しなどを3日間試しても改善しない場合は、歯科医師の指導のもと、一つ前のマウスピースを2〜3日装着してから再度進めることが有効です。ただし、自己判断で行わず、担当医に相談しましょう。浮きが1週間以上続く場合や2mm以上の隙間がある場合は、速やかに歯科医院を受診し、調整が必要です。

インビザラインの正しい装着方法を教えてください。

インビザラインの正しい装着方法をマスターすると、浮きを予防できます。まず、マウスピースの上下を確認しましょう。一般的に前歯部分が大きいものが上顎用、小さいものが下顎用です。装着前に手を清潔にし、マウスピースに番号の間違いがないかも確認してください。マウスピースの前歯部分を指で歯に合わせ、ゆっくりと装着し始めます。その後、左右の奥歯に向かって順番に指で押し込んでいきます。強く噛んで装着すると、マウスピースが割れる可能性があるため、指で丁寧に装着しましょう。装着後はチューイーを使用してフィットさせます。前歯から奥歯に向かって順番に噛み、各部位で10秒程度しっかりと噛み込みます。装着完了後は鏡で確認し、マウスピースが歯茎のラインに沿って適切に装着されているかチェックしましょう。

チューイーの正しい使い方を教えてください。

チューイー(アライナーチューイー)の正しい使い方は、インビザライン治療の成功に欠かせません。チューイーは弾力性のあるシリコン製のロール状器具で、マウスピースを歯に密着させる役割を果たします。使用方法は段階的です。まず前歯でチューイーを数回噛み、前歯のマウスピースをはめ込みます。次に前歯の隣の歯で数回噛み、奥歯で数回噛んで、マウスピース全体を密着させましょう。新しいマウスピースに交換した直後は、就寝前の15〜20分程度の使用が推奨されます。数日でマウスピースが歯にフィットしてきたら、使用時間を短縮できます。

マウスピースがパカパカする場合に、歯科医院での処置が必要なケースを教えてください。

以下のような場合は、歯科医院での専門的な処置が必要です

  • 1mm以上の浮きが1週間以上続く
  • 装着時間を守ってチューイーを適切に使用してもフィット感が改善しない
  • アタッチメントが脱落している
  • マウスピースに亀裂または変形が認められる
  • 強い痛みや著しい違和感が続く
  • 歯茎の炎症や腫れが見られる

アタッチメントは歯とマウスピースの密着度を高める重要な装置であり、脱落したまま治療を続けると効果が大幅に低下します。破損したマウスピースでは適切な矯正力がかからないだけでなく、口腔内を傷つけるため、危険です。治療計画の見直しやマウスピースの再製作が必要になることもありますが、早期の対応により治療期間の大幅な延長を防げます。定期的な検診を受け、歯科医師のサポートを受けながら治療を進めることが重要です。

編集部まとめ

マウスピースをつける女性

インビザラインの奥歯がパカパカする現象は、装着時間の不足や不適切な装着方法が主な原因です。2mm以内の軽微な浮きであれば許容範囲内ですが、2mm以上の浮きが1週間以上続く場合は注意しましょう。 適切な装着時間の確保とチューイーの正しい使用により、多くの場合で改善が期待できます。浮きを放置すると治療効果の低下や治療期間の延長につながります。 マウスピース型矯正を成功させるには、患者さんの自己管理と歯科医師の連携が欠かせません。 違和感や問題を感じた場合は、自己判断せずに速やかに歯科医師に相談し、適切な指導を受けて理想的な歯並びを目指していきましょう。

この記事の監修歯科医師