顔の歪みと歯並びの関係を解説|顔の歪みを引き起こしやすい歯並びや歯並びが悪いとどんな風に顔が歪むのかも紹介
歯並びの状態は、顔の歪みと関係が深いことをご存じでしょうか。歯並びが悪いと、顔の骨格などに影響を与えて、歪みを引き起こすことがあります。
顔の歪みを感じている方や心配な方は、悪い歯並びとの関係を知り、場合によっては治療を進めた方が良いかもしれません。
治療の判断に役立てていただけるよう、本記事では顔の歪みと歯並びの関係を解説します。
顔の歪みを引き起こしやすい歯並びや、歯並びが悪いとどんな風に顔が歪むのかもご紹介するので、参考にしてください。
監修歯科医師:
古田 博久(歯科医師)
目次 -INDEX-
顔の歪みと歯並びの関係
顔の歪みと歯並びは、密接に関係しています。歯並びが乱れていると、噛み合わせが悪い状態が続きます。
そのままの状態が続くと、片方で噛んでしまうなどのクセを生んでしまうかもしれません。さらに、噛み合わせの悪さやクセは、顎の骨や頬の筋肉などに負担をかけます。
それによって骨が歪むことがあるのです。骨が歪んでしまうと、顔全体のバランスが崩れて悪くなってしまう可能性があります。
具体的には、鼻が曲がってしまうといった症状や顔が左右非対称となってしまうような、歪みを発生させるケースが考えられるでしょう。
顔の歪みを引き起こしやすい歯並び
顔の歪みを引き起こしやすい悪い歯並びは、次のようなものが挙げられます。
- 叢生
- 過蓋咬合
- 交叉咬合
叢生とは、歯のサイズと顎のサイズがアンバランスであるために、歯が部分的に重なってしまう歯並びです。強い叢生は、上手く噛み合わせができません。
過蓋咬合とは、噛み合わせが深すぎて、下の歯がほとんど見えない状態の歯並びです。通常であれば、噛み合わせた時に、上の歯によって下の歯が4分の1程度隠れます。
交叉咬合とは、歯並びの途中で交叉してしまっている状態の歯並びです。上の奥歯が下の奥歯の内側に入ってしまうケースが多いです。
特に片側のみ交叉咬合となっているケースが顔の歪みにつながるといわれています。
このような歯並びの場合、全体の歯を使ってバランス良く噛めません。片方ばかりを使ってしまうようなケースを引き起こし、顎の運動が阻害されてしまいます。
その結果、顎がずれるなどの、顔に歪みを引き起こしやすくなってしまうのです。
歯並びが悪いとどんな風に顔が歪む?
悪い歯並びによって引き起こされる顔の歪み方はさまざまです。非常に広範囲にわたって影響が出ることもあります。
例えば、口角が下がったり曲がったりしてしまい、常に怒ったような表情になってしまうことがあります。
また、眉や目の高さが左右で違う・鼻が曲がっている・エラ張りを起こしてしまうなどの、顔のさまざまな部位に悪影響を与える可能性もあるのです。
さらに、骨格に歪みが生じると、筋肉のバランスも崩れてしまうため、ほうれい線が深くなってしまうケースも考えられます。
顔の歪みから表情筋がスムーズに動かなくなることもあるため、表情のない暗い顔になってしまう恐れもあります。
これだけの変化があると、周囲に与える印象にも影響して、印象を悪くしてしまう可能性もあるでしょう。
歯並びがもたらすその他の悪影響
悪い歯並びは、顔に影響を及ぼし歪ませることをご紹介しました。しかし、悪い歯並びがもたらす影響は他にもあります。
顔だけではなく、全身にまで影響するケースがあるのです。ここでは、悪い歯並びがもたらすその他の悪影響をご紹介します。
骨格のズレによる頭痛・肩こり・腰痛
悪い歯並びがもたらす悪影響としては、骨格のズレによる頭痛・肩こり・腰痛などが挙げられます。
歯並びが悪いと、歯全体でバランス良く噛めません。その状態が続くと、顎や頬などに負担をかけて、次第に歪んできます。
顎の位置は身体の重心においても重要な部位です。顎の位置がズレてしまうと、左右の重心がずれてしまい、片側に負担がかかってしまいます。
その結果、骨格がズレてしまったり、ひどい頭痛・肩こり・腰痛などを引き起こしたりしてしまうのです。
顎関節症
悪い歯並びは、顎関節症も引き起こす可能性があります。顎関節症とは、顎関節や咀嚼筋の痛み・顎関節の雑音・開口障害などを引き起こす病気です。
歯並びが悪いと、先述したように正しい噛み合わせができなくなります。長期にわたってこの状態が続くと、顎への負担が増え、顎関節症になるリスクがあるのです。
口を開ける行為すらも難しくなってしまったり、強い痛みを感じたりする恐れもあるため、顎の違和感を感じた場合は注意が必要です。
口呼吸
悪い歯並びによって、口呼吸になってしまう点も悪影響の1つです。口呼吸と聞くと、そこまでの悪影響に感じられない方も多いでしょう。
しかし、口呼吸になると、顔が歪んでしまって口周りの筋肉が弱くなってしまっている可能性が考えられます。
筋肉が弱まって、常に口を閉じていられなくなり、口を開けた状態になりやすくなっているのです。
ご自分でも無自覚で、鼻呼吸から口呼吸に変わってしまっているため、非常に危険です。口呼吸は、口内環境の悪化にもつながります。
例えば、口呼吸により乾燥しやすい口内環境となると、唾液の抗菌作用が上手く働きません。その結果、虫歯や歯周病を引き起こす可能性もあります。
このように、悪い歯並びによる悪影響はさまざまな部位に及ぶ危険性があるため、あらかじめどういった悪影響があるかを知っておくことは非常に大切です。
歯並びによる顔の歪みを治す方法
悪い歯並びによって顔の歪みが起きた状態を放置しては、肩こりや頭痛など、さらに悪影響を及ぼす可能性があります。
このような悪影響を止めるためには、顔の歪みを治す必要があります。それでは、どのような治療方法があるのでしょうか。ここでは、顔の歪みを治す方法をご紹介します。
姿勢・日常生活のクセの改善
悪い歯並びによる顔の歪みを治す方法としては、姿勢や日常生活のクセの改善が挙げられます。
例えば姿勢に関しては、悪い歯並びによって顎の位置が変わってしまったために、身体の重心の位置がずれてしまって姿勢の悪化を招く可能性が高いです。
これを防ぐためには、ストレスや不要な力をかけないようにして、正しい姿勢を保てるようにすることが大切です。
また、食いしばりのクセや片方で噛み続けるクセも見直すようにしましょう。
普段から食いしばりをしていたり、就寝中に歯ぎしりをして力がかかっていたりする場合は、マウスピースなどを用いて改善に取り組むと良いでしょう。
片方で噛み続けてしまうのであれば、意識して歯全体でバランス良く噛むようにした方が良いです。
口呼吸になっているのであれば、意識して鼻呼吸にするだけでも、悪影響の改善に役立つでしょう。少しずつ姿勢や日常のクセを改善することで、歯並びの改善にもつながる可能性があります。
虫歯・歯周病の治療
虫歯や歯周病の治療 も、顔の歪みを改善する可能性があります。虫歯や歯周病によって、歯が欠けたり抜けたりしていると、正しく嚙めなくなります。
すると片方で噛むようになってしまうため、顔の歪みを引き起こしてしまいます。
仮に歯が欠けたり抜けたりしていない場合でも、痛みや違和感があると、異変のない方で噛んでしまいがちです。このような状態から歯並びの悪化と顔の歪みを引き起こします。
そのため、少しでも虫歯や歯周病の違和感がある場合には、早めに治療を行いましょう。
歯が抜けた場所を放置せずに、適切なブリッジやインプラントなどを行えば、噛み合わせの回復も行えます。
歯列矯正
歯列矯正も顔の歪み改善に大きく効果を発揮する方法です。顔の歪みの原因となる、悪い歯並びを根本的に改善できるためです。
特に全ての歯を矯正する全体矯正は、見た目・噛み合わせ・歯の位置など全ての改善に期待できます。
根本的な悪い歯並びが改善できれば、口周りの筋肉や骨格に負担がかからなくなり、顔の歪みや全身への悪影響も改善されるでしょう。
歯列矯正の方法は後述しますが、ご自分の症状に合った適切な矯正方法があります。歯科医と相談を行いながら矯正を行い、全身の負担を軽減させましょう。
歯列矯正の種類
歯列矯正は、顔の歪みや身体の歪みの原因となる悪い歯並びを治す根本的な治療方法です。その治療方法には、さまざまなものがあります。
ご自分に合った、適切な治療方法を選択するには、それぞれの治療方法の特徴を押さえておく必要があります。そこで、ここでは歯列矯正の種類を特徴とともにご紹介します。
ワイヤー矯正
歯列矯正の中でも、最もポピュラーなものがワイヤー矯正です。金属製のブラケットを歯の表面に装着し、そこにワイヤーを通して歯に力を加える方法です。
状態に合わせて、徐々にワイヤーを調整しながら力を加えて、歯並びを変化させていきます。この治療方法のメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 適用可能な症例が多い
- 細かな調整が可能
ワイヤー矯正は、適用可能な症例が多く、部分矯正や奥歯を含めた全体矯正など広く対応可能です。
また、細かな調整も可能であり、さまざまな方向に歯を移動させられます。しかし、次のようなデメリットもあります。
- 痛みがある
- 見た目が目立つ
ワイヤー矯正は、後述するマウスピース矯正に比べて痛みが大きいです。矯正器具を調整して、当日~3日間程度は強い痛みが伴うことがあります。
さらに見た目が目立つ点も大きなデメリットです。笑った時などに金属のワイヤーなどが見えてしまって、思い切り会話が楽しめなくなる方もいるほどです。
裏側矯正
裏側矯正とは、ワイヤー矯正を歯の裏側で行う方法です。通常のワイヤー矯正の場合は、歯の表側にブラケットとワイヤーを固定します。
一方、裏側矯正は、歯の裏側にブラケットとワイヤーを固定します。そのため、ワイヤー矯正でデメリットであった見た目の問題を気にしなくて良いです。
しかし、この方法は裏側に固定するために高度な技術が必要で、それに伴って通常のワイヤー矯正よりも治療費用が高額となる傾向があります。
これらの特徴を踏まえた上で、裏側矯正を選ぶかどうかを決める必要があるでしょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明な樹脂などから作られたマウスピースを使用した矯正方法です。透明で薄い形状であるため、目立ちにくい点が魅力です。
その他にも、自由に取り外せる点も大きな魅力に挙げられます。ワイヤー矯正などは、一度矯正器具を取り付けると自由に取り外せません。
しかし、マウスピース矯正の場合は、食事や会話など気になる際には取り外せます。ブラッシングも取り外して行えるため、難易度は低いです。
とはいえ、装着時間は決められているため、自己管理を徹底する必要がある点はデメリットです。
自由に取り外しは可能ですが、マウスピースは1日22時間程度は装着していなければ、正しい矯正の効果が得られません。
また、ワイヤー矯正と比べると適用できる症例に限りがあります。ご自分が適用可能かどうかを歯科医に相談して、特徴なども把握した上で選びましょう。
部分矯正
部分矯正も効果的な矯正治療の1つです。部分矯正は、全体の歯並びを治すのではなく、気になった部分だけを治せる方法です。
前歯の歯並びを治したい場合や、下のガタガタの歯並びを治したい場合などに効果を発揮してくれます。
全体矯正と比べると、歯の移動量が少なくて済むため、短期間で治療を終えられます。また、痛みが少ない点も特徴です。
歯を動かす本数や範囲が限られるため、強い痛みが伴うことは少ないです。部分矯正の方法としては、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などがあります。
どの方法で矯正を行うかは、歯科医に相談の上で決めましょう。
歯並びを整えて顔の歪みも解消しよう
悪い歯並びは、顔を歪ませる原因にもなるため、印象を左右する大きな要素といえます。歯並びが悪いことで、顎や頬への負担を増やし、次第に骨格を変えてしまいます。
その結果、眉の位置・口角の形・ほうれい線が深くなるなど、さまざまな影響があるでしょう。また、影響は身体全体に及ぶこともあります。
重心がずれてしまうことで、肩こりや頭痛なども引き起こします。そのため、悪い歯並びの改善は重要なことです。
それぞれの矯正方法の特徴を把握し、歯科医に相談しながらご自分に合った方法を選んで、悪い歯並びの改善と顔の歪みを解消させましょう。
編集部まとめ
悪い歯並びは、顔を歪ませ、全身への悪影響を及ぼす重要な要素です。歯並びを悪化させないためには、虫歯や歯周病の治療や日常のクセなどを改善しましょう。
また、歯並び改善には矯正が効果的です。根本的な悪い歯並びの改善を行えて、全身への悪影響を大きく改善できます。
矯正を行う場合や、顔の歪みなどの異変を感じた場合には、専門の歯科医に相談して適切な治療を進めましょう。
参考文献
- 叢生(そうせい)|e-ヘルスネット[情報提供]
- 公益社団法人日本矯正歯科学会ポジションステートメントマウスピース型矯正装置による治療に関する見解|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 矯正歯科|東北大学病院
参考サイト
- 顔の歪みと歯並びの関係とは?|SBC湘南美容クリニック
- 過蓋咬合(かがいこうごう)|医療法人塩見会 矯正歯科サイト
- 交叉咬合(こうさこうごう)|医療法人塩見会 矯正歯科サイト
- 顔の非対称や歪み、気になっていませんか?顎や顔面の非対称や歪みは歯並びのズレが原因かもしれません。|福増矯正歯科
- 顔の歪みが気になる!歯列矯正で治療はできる?|デンタルジュ
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