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噛み合わせと顎関節症の関連性は?原因や治療法、予防法も解説

 公開日:2025/10/25
噛み合わせと顎関節症の関連性は?原因や治療法、予防法も解説

お口を開けると痛い、顎がカクカク鳴る、慢性的な頭痛や肩こりなどの症状に悩む方は少なくありません。 これらは噛み合わせと顎関節症が関連している可能性があります。 顎関節症は、むし歯や歯周病と同様によくある疾患で、珍しいものではありません。 従来は噛み合わせの異常が主な原因と考えられていましたが、現在では複数の要因が重なって発症することがわかっています。 本記事では噛み合わせと顎関節症の関連性や症状、原因、治療法、予防方法を詳しく解説します。

小田 義仁

監修歯科医師
小田 義仁(歯科医師)

プロフィールをもっと見る
小田歯科・矯正歯科
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事

噛み合わせと顎関節症との関連

デンタルケアイメージ

顎関節症について教えてください。

顎関節症は、顎の関節や筋肉に異常が生じ、痛みや機能障害が現れる病気です。具体的な症状として次のようなものが特徴です。

  • 顎の痛み
  • お口を開けるときの音
  • 開口制限
  • 顎の動きの異常
この病気はむし歯や歯周病と並んで第三の歯科疾患と呼ばれるほど一般的な疾患で、決して珍しいものではありません。顎関節症には次の4つのタイプがあります。

  • 筋肉の障害
  • 関節包や靭帯の障害
  • 関節円板の障害
  • 骨の変形
多くの場合、日常生活のなかでの無意識の習慣が原因となって発症するため、生活習慣の改善によって予防や症状の緩和が期待できる病気です。

噛み合わせと顎関節症との関連性を教えてください。

従来は噛み合わせの異常が顎関節症の主な原因と考えられていましたが、現在では多くの要因が重なって発症する多因子疾患として理解されています。噛み合わせの問題も原因の一つですが、歯ぎしりや食いしばりなどの習癖も大きな要因です。噛み合わせが悪いと顎の動きに異常が生じ、顎関節に過度な負担がかかる可能性が高いです。ただし、単純に噛み合わせを治療しただけでは症状が改善するとは限りません。精神的ストレスや生活習慣、個人の体質なども関係するため、総合的なアプローチが必要です。そのため治療では生活指導やマウスピースの使用など、もとに戻せる方法から始めることが重要です。

顎関節症を発症すると起こる症状を教えてください。

顎関節症の主な症状として以下の3つが挙げられます。

  • 顎の痛み
  • 関節音
  • お口の開けにくさ
痛みは耳の前の顎関節部分に現れることが多く、お口を開けたり物を噛んだりするときに強いです。関節音はカクカクやコキコキなどのはじけるような音と、ゴリゴリやザラザラなどのこすれるような音です。開口障害では、正常時に40mm以上開くはずのお口が、指3本分も入らないほど開きにくくなることがあります。さらに、以下のような症状も現れる場合があります。

  • 頭痛や肩こり、首の痛み
  • 耳の症状(耳鳴り、耳の詰まり感、難聴、めまい)
  • 舌の痛み
  • 味覚異常
  • 眼の疲れ
  • お口の乾燥感
ただし、これらの症状が顎関節症によるものかほかの病気が原因かは慎重な判断が必要です。

顎関節症を放置するとどうなりますか?

顎関節症の多くは一時的な症状であり、軽度なものは自然に改善することが多いとされています。疫学的にも多くの症状は一時的で、基本的に自然治癒しやすい疾患であることが知られています。しかし、すべてのケースで自然経過が良好とは限らないため注意が必要です。放置により噛み合わせの問題が生じることもあります。また、痛みが長期化すると慢性疼痛となり、治療が困難になる可能性があります。慢性的な痛みは大きな負担です。関節円板の位置異常が進行すると、突然お口が開かなくなったり、関節円板がもとに戻らなくなったりする場合もあります。そのため、症状が続く場合や日常生活に支障がある場合は、早めに歯科医院を受診することが大切です。

顎関節症の原因と治療法

歯が痛い若い女性

顎関節症の原因を教えてください。

顎関節症は複数の要因が組み合わさって発症します。精神的ストレスは無意識のくいしばりや歯ぎしりを引き起こし、顎の筋肉に負担をかける要因です。噛み合わせの異常も顎の動きを不自然にし、関節に負荷をかける要因です。現代人の顎の発達不良も影響しており、やわらかい食べ物中心の食生活が顎の発達不足につながると報告されています。さらに、頬杖をつく癖やうつ伏せ寝、片側だけで噛む偏咀嚼、楽器演奏なども発症のきっかけです。

顎関節症の治療法を教えてください。

顎関節症の治療は症状に応じて複数の方法を組み合わせて行われます。一般的なのはアプライアンス療法で、マウスピース状の装置を装着して筋や関節への負担を軽減する方法です。理学療法では温湿布や電気的マッサージにより血行を改善し、筋肉の緊張をほぐします。これらの治療は痛みの軽減に有効です。痛みが強い場合には消炎鎮痛薬などの薬物療法が用いられます。関節円板のずれが激しい場合はパンピングマニピュレーションという手技で整復を試みます。この手技は技術が必要な治療法です。重症例では関節腔内洗浄療法や外科的手術が必要になることもありますが、多くの場合は保存的治療で改善が期待できます。

くいしばりなどが気になる場合の受診目安を教えてください。

顎関節症の受診目安として、まず日常生活に支障をきたす症状があるかどうかが重要な判断基準です。お口を開けると痛みがある、大きく開けられない、顎を動かすときに音がして痛みを伴うなどの症状がある場合は早めの受診をおすすめします。指3本分(約40mm)が入らない場合は開口障害の可能性があります。症状が2~3週間続いて改善傾向がみられない場合や、痛みで食事に支障がある場合は歯科医院を受診しましょう。まずはかかりつけの歯科医院に相談し、必要に応じて歯科顎関節症専門の歯科医師への紹介を受けることができます。

顎関節症の治療期間について教えてください。

顎関節症の治療期間は症状の状態により個人差がありますが、基本的な治療で2週間から1ヶ月程度で症状の改善が期待されます。軽度の症状であれば適切な治療とセルフケアにより短期間で改善が多く見られます。ただし、治療を行っても改善しない場合は歯科顎関節症専門医による詳しい検査や専門治療が必要です。セルフケアを継続して行えば、治癒に向かうとされています。治療には生活習慣の改善が重要で、くいしばりを意識的にやめることや顎に負担をかける動作を避けることが、治療期間の短縮につながります。

噛み合わせが原因による顎関節症を予防する方法

歯のレントゲン写真と歯科衛生士

噛み合わせが原因による顎関節症を予防する方法を教えてください。

顎関節症の予防には、日常生活の悪い癖を見直すことが重要です。歯列接触癖や食いしばりなどの習慣は顎に大きな負担をかける要因です。硬い食べ物の咀嚼を避け、両側の歯でバランスよく噛むよう心がけましょう。スルメやフランスパンなどの繊維質で硬い食物は症状を悪化させる可能性があります。また、上下の歯を無意識に接触させる癖を防ぐため、舌を口蓋(上顎の天井部分)に軽く当てる習慣を取り入れると効果的です。。楽器演奏や重量物運搬、長時間のデスクワークなどによる食いしばりにも注意が必要でしょう。規則正しい生活リズムとストレス管理により、顎関節への負荷を軽減できます。

生活習慣の改善で顎関節症を予防できますか?

生活習慣の改善によって顎関節症を予防できる可能性が高いです。顎関節症の発症には環境因子や行動因子が大きく関わっています。重い荷物の片側持ちや頬杖をつく姿勢を避け、正しい姿勢を維持することが大切です。睡眠時の歯ぎしりや日中の食いしばりを防ぐため、リラックスできる環境づくりも必要です。定期的な顎のストレッチや温湿布なども取り入れることで、予防効果を高められます。入眠障害などの睡眠障害がある場合は、その改善も重要な予防策となります。

編集部まとめ

男性医師と看護師

噛み合わせの悪さは顎関節症の原因の一つですが、現在では精神的ストレスや歯ぎしり、食いしばりなどの複数の要因が重なって発症する多因子疾患として理解されています。 顎関節症の主な症状は顎の痛みや関節音、開口障害で、頭痛や肩こりなども伴う場合があります。 治療はマウスピース療法や理学療法などの保存的治療が中心です。多くの場合で症状の改善が期待できます。 日常生活での硬い食べ物の回避や両側での咀嚼、ストレス管理などの生活習慣の改善により予防も可能です。 症状が2~3週間続く場合や日常生活に支障がある場合は、歯科医院を受診することをおすすめします。

この記事の監修歯科医師

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