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矯正歯科治療中に器具が外れた・壊れたときの応急処置と受診のタイミングを歯科医が解説!

 公開日:2025/03/23

矯正治療中に、矯正器具が「外れた」「壊れた」という経験をした人は、意外と少なくありません。矯正器具の脱離・破損は治療期間の延長につながることもあるため、適切な予防と対処が必要です。矯正器具が外れた・壊れた際の正しい対処法や受診のタイミング、さらに矯正器具にまつわるトラブルの予防法などを、「日本橋ひびき矯正歯科」の小泉先生に解説していただきました。

小泉 響子

監修歯科医師
小泉 響子(日本橋ひびき矯正歯科)

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長崎大学歯学部卒業。東京医科歯科大学での研修後、日本歯科大学附属病院矯正歯科や都内8施設で矯正歯科治療の経験を重ねる。2023年、東京都中央区に「日本橋ひびき矯正歯科」を開院。健康寿命の延伸に寄与する歯科矯正の重要性を説き、機能性と審美性の両面から最適な治療法を提案する。日本矯正歯科学会認定医。日本顎変形症学会、日本舌側矯正歯科学会の各会員。

「矯正器具が外れたor壊れた」こんなとき、どうしたらいい? 自宅でできる応急処置と歯科受診のタイミング

「矯正器具が外れたor壊れた」こんなとき、どうしたらいい? 自宅でできる応急処置と歯科受診のタイミング

編集部編集部

矯正器具が外れた、あるいは壊れた場合、どのぐらいの期間内に歯科医院を受診するのが望ましいでしょうか?

小泉 響子先生小泉先生

矯正器具が外れた、あるいは壊れたことに気づいた時点で、まずは歯科医院に連絡して担当医の指示を仰ぐことが大切です。遅くとも、1週間以内にはご連絡いただきたいと思います。担当医が状況を確認し、影響が大きいと判断した場合は即日の受診をお願いしますが、軽度な破損であれば次回の予約日まで待っていただくこともあります。自己判断で放置してしまうと、治療経過に影響が出たり、治療期間が長引いたりする可能性があるため、必ず歯科医院に連絡するようにしてください。

編集部編集部

次回の来院まで期間が空いている場合、自宅でできる応急処置はありますか?

小泉 響子先生小泉先生

こちらも、まずは担当医にご連絡していただくことが前提になります。そのうえで、外れたり壊れたりした矯正器具(ワイヤー・ブラケットなど)が口内に当たって痛い場合は、あらかじめお渡ししている矯正用ワックスで保護してください。お手元にワックスがない場合は、清潔なガーゼなどで一時的に保護し、早めに受診することをおすすめします。

編集部編集部

マウスピース型矯正装置(アライナー)が壊れた場合は、どのように対応したらいいでしょうか?

小泉 響子先生小泉先生

アライナーの破損に関しても、まずは担当医への相談が重要です。すぐに来院できない場合は1つ前か、もしくは1つ後ろのアライナーを使用していただくことがあります。ただし、適切な対処法はアライナーの使用期間や状況によって異なるため、自己判断で使用せず、必ず担当医の指示に従うようにしてください。

編集部編集部

自宅で応急処置をする際の注意点や、やってはいけないことを教えてください。

小泉 響子先生小泉先生

痛いからといって自分で矯正器具に触れたり、ワイヤーを切ったり外したりするのは大変危険です。また、ブラケットが外れた際に、市販の瞬間接着剤でつけ直そうとする人もいらっしゃいますが、そのようなことも絶対にしないでください。アライナーが破損した場合も同様に、自分で修理するのは避けましょう。繰り返しになりますが、装置が外れたり壊れたりしたら必ず歯科医院に連絡し、担当医からの指示を受けたうえで対処するようにしてください。

矯正器具が外れる・壊れる原因と治療への影響

矯正器具が外れる・壊れる原因と治療への影響

編集部編集部

矯正治療中に起こりやすい器具や装置のトラブルに、どのようなものがありますか? また、その原因についても教えてください。

小泉 響子先生小泉先生

ワイヤー矯正の場合、最も多いのは「ブラケットが外れるケース」で、次いで多いのは「ワイヤーがブラケットから抜けて口内に刺さってしまうケース」です。これらの原因として、硬いものや粘着性のある食品を食べたり、装置を自分で触って負荷をかけてしまったりすることが挙げられます。とくに、矯正装置にまだ慣れていない治療初期に起こりやすい傾向があります。

編集部編集部

マウスピース型矯正装置の場合はいかがでしょうか?

小泉 響子先生小泉先生

マウスピース型矯正装置の場合は、「アライナーに割れやヒビが入るケース」が多くみられます。その主な原因は、誤った方法での装着や取り外しです。具体例を挙げると、片手で無理に着脱したり、口に入れて噛んで装着したりといったケースがみられます。そのほかに、熱湯でのお手入れや不適切な保管方法、外出先での紛失や破損などがあります。とくに、取り外しの際の扱いには十分な注意が必要です。

編集部編集部

矯正器具の脱落や破損を放置した場合、歯並びや治療にどのような影響がありますか?

小泉 響子先生小泉先生

ワイヤー矯正の場合、ブラケットの脱落やワイヤーの抜けを放置すると、歯が動かなくなるだけでなく、歯並びの後戻りも生じてしまう可能性があります。さらに、ワイヤーは全ての歯とつながっているため、変な曲がり方をしたワイヤーによって歯が意図しない方向に動いてしまうこともあります。マウスピース型矯正装置でも、壊れた状態で使用を続けると装置が正しく適合せず、歯が計画通りに動きません。いずれの場合も、放置することで治療のやり直しが必要になったり、これまでの治療効果が失われたりして、結果的に治療期間が大幅に伸びてしまう可能性があります。

編集部編集部

矯正器具のトラブルに対し、歯科医院ではどのような対応をおこなっていますか?

小泉 響子先生小泉先生

まず、器具がどのような状況で破損したのかを詳しく確認し、修理や再装着が可能かどうかを判断していきます。修理や再装着が難しい場合は、新しい装置の作り直しが必要です。もう1つ重要なのは、同じ人が破損を繰り返してしまうケースです。このような場合は、生活習慣の見直した装置の正しい使用法についてのアドバイスをおこないます。歯列矯正では治療の過程でどうしても装置が外れやすいタイミングや、壊れやすい状況になることがあります。したがって、事前に患者さんに良く説明し、注意点をお伝えすることも重要だと考えています。

矯正治療中のトラブルを回避! 器具破損の予防と日常ケアのポイント

矯正治療中のトラブルを回避! 器具破損の予防と日常ケアのポイント

編集部編集部

個々の歯並びや生活習慣によって、矯正器具の脱落や破損のリスクは変わってきますか?

小泉 響子先生小泉先生

はい、リスクには個人差があります。例えばワイヤー矯正の場合、噛み合わせが深い人や歯と装置が当たりやすい状態の人は、破損や脱落のリスクが高くなる傾向にあります。さらに、噛む力が強い人や、硬いもの・粘着性のある食品を好む人も注意が必要です。このような個々の違いによって、ワイヤー矯正の場合は表側矯正と裏側矯正のどちらが適しているかも変わってきます。マウスピース型矯正装置に関しては、「アタッチメント」という器具を歯の表面に装着した場合に、ワイヤー矯正と同様に硬いものや粘着性の高い食品に注意が必要です。

編集部編集部

矯正器具のトラブルを予防するうえで、日常生活で気をつけるべき点を教えてください。

小泉 響子先生小泉先生

ワイヤー矯正をしている人は、硬いものや粘着性のある食品は極力さけるようにしてください。とはいえ、制限を厳しくしすぎるとストレスになるので、まずは食べ物を食べやすい大きさに切り分けて、ゆっくり食べることを心がけましょう。お正月のお餅なども、工夫次第で食べることはできます。装置に食べ物が引っかかった場合は、指で無理に取ろうとせず、必ず歯ブラシなど適切な道具を使って取り除くようにしてください。加えて、装置に違和感がある場合も、指で押したり触ったりするのは控えましょう。

編集部編集部

そのほかに、矯正治療中に患者さんが注意しておきたい点はありますか?

小泉 響子先生小泉先生

矯正治療は長期間にわたるため、患者さんご自身によるセルフチェックも非常に重要です。毎日の歯磨きの際に、装置に異常がないか、外れたりしていないかをチェックしていただくことをおすすめします。また、少しでも違和感や不具合を覚えたら、我慢せずに担当医にご相談ください。このような小さな心がけの積み重ねが、より良い治療結果につながるでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

小泉 響子先生小泉先生

矯正治療を始めたばかりの頃は、不安なことやわからないことも多いと思います。まずは治療内容や装置の特徴、さらに契約内容などを担当医に確認し、よく理解しておくことが大切です。治療期間中は予期せぬトラブルが起こることも少なくありません。私たち矯正歯科医は常に患者さんの不安に寄り添い、より良い結果を目指してサポートしています。ほんの些細なことでも遠慮せずに、安心してご相談いただければと思います。

編集部まとめ

矯正器具のトラブルは、治療初期や装置に慣れていない時期に起こりやすい傾向があります。代表的なトラブルは、ブラケットの脱落やワイヤーの抜け、アライナーの破損です。こうしたトラブルを放置すると、意図しない方向への歯の移動や後戻りが起こってしまう恐れがあります。したがって、異常を感じたら、まずは速やかに歯科医院に連絡することが大切です。また、トラブル時の対処法や保証内容は歯科医院によって異なるため、治療開始前に担当医によく確認しておきましょう。

医院情報

日本橋ひびき矯正歯科

日本橋ひびき矯正歯科
所在地 〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2丁目8-1 Brick Gate茅場町1F
アクセス 東京メトロ「茅場町駅」 徒歩1分
東京メトロ「日本橋駅」 徒歩7分
診療科目 矯正歯科

この記事の監修歯科医師

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