歯磨きでやってはいけない「NG習慣」 歯科医が教える正しい歯磨きとケア用品選び

毎日当たり前のように行っている歯磨き。しかし、「力を入れてゴシゴシ磨く」「歯磨き剤をタップリつける」など、私たちが正しいと思っている習慣の中には、実は歯にダメージを与えてしまうものも少なくありません。そこで、歯の健康維持のための正しい歯磨きの方法や、歯ブラシ・歯磨き剤の選び方などを、あんどう歯科・美容皮フ科の安藤先生に教えてもらいました。

監修歯科医師:
安藤 雄基(あんどう歯科・美容皮フ科)
意外と知らない? 歯磨きでよくある間違いや誤解と正しいケア

編集部
歯磨きでよく見かける間違いや、正しいと思い込んでいるけど実は正しくないやり方・考え方にどのようなものがありますか?
安藤先生
一番気になるのは、歯磨きにかける時間が短すぎることです。日々お忙しい方も多いため、歯磨きの回数も含めて十分な時間を確保できていない方が目立ちます。また、力を入れて磨く方も多いのですが、強く磨いても歯ブラシがうまく当たっていなければ汚れは落ちません。それどころか、かえって歯や歯ぐきを痛めてしまう可能性があるため、あまり力をいれて磨かないようにアドバイスしています。
編集部
歯磨きは1日に何回、どのぐらい時間をかけて磨くのがいいのでしょうか?
安藤先生
推奨されるのは毎食後、朝・昼・晩の3回です。1回の歯磨きには、少なくとも最低2分以上かけることをおすすめしています。とくに、就寝前の歯磨きは時間をかけて丁寧に磨くことが大切です。
編集部
そのほかに、歯磨きでありがちなNG習慣や気をつけたい点はありますか?
安藤先生
歯磨きの後すぐに間食してしまう方も多いのですが、そうするとせっかくの歯磨きの効果が低減してしまいます。歯磨きをしたら最低でも30分、可能であれば2時間程度は飲食を控えるようにしましょう。また、歯磨き剤の効果を過信して大量に使用したり、特定の歯磨き剤で歯周病が改善すると考えたりする方がいらっしゃいます。しかし、歯磨き剤はあくまでブラッシングを補助するものですので、あまり過信しすぎないようにしましょう。
編集部
歯磨き剤の使用量の目安を教えてください。
安藤先生
フッ素(フッ化物)が配合された歯磨き剤については歯ブラシに乗る程度、1.5~2cm程度が推奨されています(6歳以上)。お子さんについては、2歳未満で米粒程度(1~2mm)、3~5歳でグリーンピース程度(5mm程度)が適量とされていますが、詳しい使用量については歯科医にご相談ください。
歯ブラシや歯磨き剤はどう選べばいい? オーラルケア用品の選び方・使い方のポイント

編集部
歯ブラシの選び方で重要なポイントは何でしょうか? 硬さや形状など、具体的な選び方の基準を教えてください。
安藤先生
毛の硬さについては「やわらかめ」か「ふつう」をおすすめしています。硬すぎる歯ブラシは歯や歯ぐきを傷つけやすいため、避けたほうがいいでしょう。また、歯ブラシのヘッドの大きさも重要なポイントです。一般に、ヘッドがやや小さめで奥まで届きやすい歯ブラシが最適といわれていますが、適正なサイズはその人の歯の大きさや口の開き具合によって変わってきます。したがって、自分に合ったサイズを歯科医院でアドバイスしてもらいましょう。
編集部
手用歯ブラシと電動歯ブラシはどちらが推奨されますか? 使い分けの基準やメリット・デメリットを教えてください。
安藤先生
手用歯ブラシは手軽で入手しやすく、価格も安いことが大きなメリットです。適切な磨き方を習得できれば、十分な効果が期待できます。一方で、力加減の調整が難しく、さらにしっかり汚れを落とすためには一定の時間が必要になります。また、磨き方のテクニックによって効果に差がでやすいのもデメリットです。
編集部
電動歯ブラシについてはいかがでしょうか?
安藤先生
電動歯ブラシは効率よく一定の力で磨くことができ、磨き残しが少ないのが特徴です。私自身、使っていて効果を実感しているため、コスト面がクリアできるのであれば電動歯ブラシをおすすめしています。ただし、手用歯ブラシとは使い方が全く異なるため、正しい使用法を習得することが重要です。また、手用歯ブラシと比べると価格が比較的高く、充電の手間などが必要という点もデメリットに挙げられます。
編集部
歯磨き剤は何を基準に選ぶとよいでしょうか?
安藤先生
基本的に、歯磨き剤はフッ素(フッ化物)が配合されたものをおすすめしています。また、研磨剤については、無配合のものよりも配合されている歯磨き剤のほうが汚れ落ちはよくなります。ほかにも、最近の歯磨き剤には歯周病や口臭予防を目的とした薬用成分が配合されていますが、その効果を過度に期待するのは禁物です。製品を選ぶ際は含まれている成分をよく確認し、わからない成分があれば歯科医に相談して、自分に合った歯磨き剤を選ぶことが大切です。
編集部
デンタルフロスや歯間ブラシは必要ですか? それぞれの道具の特徴と使用のタイミングを教えてください。
安藤先生
いずれもセルフケアにおいては必須のアイテムです。歯と歯のすき間が狭い方はデンタルフロス、すき間が広い方は歯間ブラシをおすすめしています。使用のタイミングはブラッシングと同様に1日3回・毎食後が理想的ですが、難しい場合は「就寝前」のケアで使用することを推奨しています。
歯磨きだけじゃダメ? 知っておきたい歯科定期健診の重要性

編集部
歯磨きをしていても、むし歯や歯周病になってしまうのはなぜでしょうか?
安藤先生
一番多い理由としては、歯磨きの仕方が適切でないことや磨き残しが多いことが挙げられます。そのほかに、食生活や生活習慣も大きく影響します。例えば、喫煙習慣のある方は歯周病のリスクが高まるため注意が必要です。また、ご家族にむし歯が多い方や重度の歯周病の方がいらっしゃる場合は、お子さんや同居している方もリスクが高くなる傾向がみられます。
編集部
定期健診の受診や頻度も、むし歯や歯周病の発症に影響しますか?
安藤先生
そうですね。セルフケアだけで歯の健康を保てる方がいるのも確かですが、基本的には3か月~半年に1回程度の受診をおすすめしています。歯石など歯ブラシでは除去できない頑固な汚れや、歯並びが悪くて自分では磨きにくい部分はプロの手を借りないと、むし歯や歯周病のリスクを高めてしまいます。また、「早期発見」という観点からも、歯科定期健診は非常に重要です。むし歯や歯周病は進行すればするほど、治療回数も費用もかかってしまいます。したがって、セルフケアとあわせて、定期的な健診で予防や早期治療を心がけていきましょう。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
安藤先生
毎日の歯磨きをより効果的にするうえでは、正しいブラッシング法やケア用品の選び方を身につけることが大切です。お口の健康を保つ意識を高めることは、全身の健康維持にも大きく関わっていきます。歯科医院では患者さん一人ひとりに合った磨き方やアイテムの選び方をアドバイスしています。健康的な毎日のために、ぜひ歯科医院を身近な存在として上手に活用していきましょう。
編集部まとめ
忙しい毎日のなかで歯磨きは短時間で済ませがちですが、「1日3回・1回2分以上」を心がけて実践することが大切です。一方で、誤ったブラッシング法やケア用品の選択は、かえって歯や歯ぐきを痛めてしまう原因になるため注意が必要です。自己流の歯磨きではなく、自分にあった正しいケアの方法を歯科医院でアドバイスしてもらいながら、健康的な口腔環境を維持していきましょう。
医院情報
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アクセス | 桜通線「御器所」駅、鶴舞線「荒畑」駅より徒歩数分 |
診療科目 | 歯科、美容皮膚科 |