「デンタルフロスは歯磨きの前」汚れを取ってから磨いた方が合理的という事実
取り入れた方がいい習慣をせっかく実践しても、やり方が間違っていたら身につきません。そこで、学校ではけっして教えてくれないデンタルフロスの正しい使い方を、「赤坂さくら歯科クリニック」の土黒先生に解説していただきました。ぜひ、参考にしてみてください。
監修歯科医師:
土黒 さくら(赤坂さくら歯科クリニック 院長)
鹿児島大学歯学部卒業。その後、東京医科歯科大学臨床研修歯科医や民間歯科医院勤務を経験する。2020年、東京都港区に「赤坂さくら歯科クリニック」を開院。完全個室の自由診療クリニックであり、歯周病菌のPCR検査や虫歯菌の培養検査を含む「歯科ドック」、インビザライン・キレイラインなどのマウスピース矯正治療も多数おこなっている。日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、日本顕微鏡歯科学会の各会員。インビザライン認定ドクター。
デンタルフロスをする必要性
編集部
デンタルフロスには、ブラッシング後の「仕上げ」というイメージがあります。
土黒先生
おそらく、多くの人がそう思われているでしょう。ところが、米国歯周病学会は、「フロスを歯磨きの前におこなうことが、最も効果的に歯垢を除去する理想的な順序である」と報告しています。また、アメリカでは「Floss or Die(フロスをしますか? それとも死にますか?)」と言われているくらい、フロスを重視しているのです。
編集部
ブラッシングの前後で、そこまで変わるものなのでしょうか?
土黒先生
先にフロスで歯の隙間の汚れを落としてからブラッシングをした方が、歯の隙間まで歯磨剤の有効成分を届けることができます。
編集部
なるほど。現実的な順番としても「先にフロス」ということですか?
土黒先生
そういうことになります。もっとも、どちらかというとこの話はフロスをすでに使っている人へのアドバイスです。フロスは歯磨きでは取り切れない汚れまでアプローチできるので、とにかくフロスを使っていただくことが重要となります。フロスを使っていなければ、まずはご自身がやりやすいようなタイミングで取り入れてみてください。後先を問うのは、慣れてきてからでもいいと思いますよ。
「こする」のがデンタルフロスの正しい使い方
編集部
フロスの使い方について教えてください。
土黒先生
「引っかけて上、あるいは下に抜く」のではなく、前後にこすりながら上や下に動かしていくのが正しい使い方です。その際、“歯にまとわりつかせながら半円形にこする”のがコツとなります。フロスが当たっている歯の面積をできるだけ広く取るようなイメージです。
編集部
同じフロスでも、糸状のものと二股の器具の先に固定されているものがありますよね?
土黒先生
二股の器具でも半円形にこすることはできます。むしろ、そうやって使用していただきたいですね。糸状のデンタルフロスは慣れないと使いづらいので、最初は二股のフロスから取り入れてみてはいかがでしょうか。
編集部
念のため、糸状のフロスのポイントについても教えてください。
土黒先生
使用するフロスの長さの目安は、「指先から肘まで」を参考にしてみてください。また、糸を片方の指だけで絡めて、抜くようにしてこする方法もあります。
編集部
ちなみに、毛の束が極端に少ない「タフトブラシ」は、歯の隙間の汚れに届かないのでしょうか?
土黒先生
その人の歯列の隙間にもよると思いますが、頑張って磨いていても届かない箇所があるはずです。ですが、フロスに慣れていない人が、タフトで歯の隙間をお手入れしていただくこと自体は否定しません。一般的な歯ブラシだけのブラッシングよりも、タフトブラシと併用する方がむし歯などの予防に役立ちます。さらに理想を言うなら、ぜひフロスも使ってみてください。
やっても効果がないのではなく、正しくできていない
編集部
そもそもの歯磨きですが、「食事から30分後にするのがいい」という説を耳にします。
土黒先生
私はむしろ、「食事直後の歯磨き」を推奨しています。仕事などで忙しいと、30分空けている間に歯を磨くこと自体を忘れてしまうこともあるでしょう。そのため、個人的には「忘れるくらいなら、食事とセットで習慣づけておいた方が好ましい」と考えます。
編集部
起きている間は、そんなに菌が増えないという記載もありますよね?
土黒先生
実際、起きている間に、唾液による洗浄作用や食べ物と一緒に菌を飲みこむ作用が望めるのはたしかです。しかし、食事に含まれる糖分は、確実にむし歯菌のエサになってしまいます。食べカスにしても、取り去っておいた方が気持ちいいはずです。ですから、私自身「食事直後の歯磨き」を推奨しています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
土黒先生
フロスにしても歯ブラシにしても、その使い方を習わないと正しくケアできません。これらの使い方を歯科医院で学ぶことは必須で、全員に習っていただきたいと考えています。デンタルケアに留意しているにもかかわらずむし歯ができるということは、やはり、“やり方”に問題があるのでしょう。忙しいからこそ、「正しく適切に」を心がけてください。
編集部まとめ
デンタルフロスは「歯磨きの前」。言われてみれば、その理由は明らかでした。ただし、使用するタイミングは、数ある各論の中の1項目にすぎません。実際に使い方を習ってみて、「効果的にお掃除ができていること」を目標とすべきでしょう。日々のわずかな積み重ねが大きな差異として現れることを、私たちはすでに知っています。
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