インプラント治療直後から硬い物は食べれる? 手術後の経過と必要なケアを歯科医が解説

インプラント治療では、多くの患者さんが手術後の経過や生活上の制限などに不安を感じています。「手術直後の食事は何を食べたらいい?」「運動はいつから始められる?」などの術後に関する疑問は尽きません。そこで、インプラント手術直後から治療終了までの経過と注意点、さらに長期管理のポイントを、クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院の永井先生に解説してもらいました。

監修歯科医師:
永井 伸人(クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院)
目次 -INDEX-
【インプラント手術後1ヶ月の経過】痛みや腫れはいつまで続く? 食事や口腔ケアのポイント

編集部
インプラント手術直後、手術部位はどのような経過をたどりますか? 痛みや腫れの程度などを教えてください。
永井先生
手術後は、傷口の周りに腫れと痛みが生じやすくなります。ただ、これらは傷が正常に治る過程で起こる自然な反応ですので、それほど心配する必要はありません。痛みについては個人差もありますが、多くの場合は痛み止めで十分対応できます。腫れは1週間ほどでピークを迎え、その後徐々に引いていきます。いずれも2週間ほどで日常生活に支障がない程度まで改善していきます。
編集部
手術後の食事制限について教えてください。術後、どのような段階を経て普通の食事に戻れますか?
永井先生
術後は手術部位を安静にするために、極力反対側(右側を手術したら左側)で食べ物を噛むことをおすすめしています。この間は消化の良い、軟らかい食事を心がけていただくと安心です。その後、痛みや腫れが落ち着き、抜糸を終えたら段階的に通常の食事に戻していきます。術後2週目あたりから、噛み応えのある食材を少しずつ試してみるとよいでしょう。
編集部
歯ブラシを使ったケアはいつから始められますか? 手術直後からの口腔ケアの方法を教えてください。
永井先生
手術当日は歯磨きを控えめにし、手術部位以外の歯を優しく磨くようにします。手術翌日から通常の歯磨きを再開できますが、歯ブラシは「やわらかめ」のものを使用するほか、1週間ほどは手術部位に直接ブラシを当てるのは避けましょう。その間は処方された洗口液でうがいを行い、傷口を清潔に保っていきます。その後の手術部位の清掃については、傷の治り具合をみながら担当医の指示に従って進めていきましょう。
編集部
そのほかに、術後1ヶ月の日常生活で気をつけたいこと、注意すべき点があれば教えてください。
永井先生
術後1ヶ月間は激しい運動や長時間の入浴、サウナなど、血流の良くなる行為は極力控えるようにしてください。また、喫煙は傷口の治りを妨げますので、治療が終わるまでは控えましょう。そのほかは普段通りの生活を送っていただいて問題ありませんが、十分な栄養と睡眠を取り、体調管理に気をつけることが大切です。
【術後2~6ケ月】インプラントが骨に定着するまでの経過と注意点

編集部
インプラントが骨と結合するまで、一般的にどのぐらいの期間がかかりますか?
永井先生
術後、インプラントが骨と結合するまでには、通常3~6ヶ月程度の期間が必要です。ただし、この期間は患者さんの骨の状態や手術範囲によって変わってきます。骨の状態が良好で、手術が順調に進んだ場合は3ヶ月程度で結合が完了することもありますが、骨を増やす処置が必要な場合や手術範囲が広い場合は、半年ほどかかることもあります。
編集部
この期間に起こりやすいトラブルに、どのようなものがありますか?
永井先生
患部を頻繁に触ったり、無理な力を加えたりすると、インプラントの定着が妨げられてしまうため注意が必要です。また、患部に細菌が感染すると、インプラントが骨にうまく結合しない可能性もあります。さらに、喫煙習慣のある方や糖尿病のコントロールができていない方は治癒が遅れたり、結合が不十分になったりするリスクが高くなります。
編集部
インプラントが骨に定着するまでの期間、運動や食事、そのほか日常生活で注意すべきことは何ですか?
永井先生
インプラント周囲に感染が起きないように、毎日のケアを徹底して口内を清潔に保つことも重要です。そのほかについては、運動や食事などでとくに制限はないので、普段通りの生活を送っていただいて問題ありません。
編集部
仮歯が入ったら、普段通りの食事をしても問題ないのでしょうか?
永井先生
仮歯が入ると、ある程度普通の食事が可能になります。ただし、仮歯は自身の歯や最終的に入る人工歯ほど強度がないため、硬すぎる食べ物や粘着性の高い食品は控えたほうがよいでしょう。具体例を挙げると、ナッツ類やせんべい、硬いパン、キャラメルなどは要注意です。これらの食品を極力避けていただければ、通常通りの食事を楽しんでいただけます。
【インプラント治療後】インプラントを長く使い続けるためのポイント

編集部
インプラントの寿命はどのぐらいですか? また、寿命を左右する要因も教えてください。
永井先生
適切なケアを続けていれば10年以上、場合によってはそれ以上使い続けることができます。寿命を左右する大きな要因は、ご家庭での毎日のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスです。そのほかに、歯ぎしりや食いしばりなど、インプラントに過度な力が加わる習慣も、インプラントの寿命を縮める要因になります。このような方に対しては、必要に応じて「ナイトガード(歯ぎしり専用のマウスピース)」の装着などの対策を行うことをおすすめしています。
編集部
インプラント治療後に起こりうるトラブルに、どのようなものがありますか?
永井先生
代表的なトラブルに、歯周病に似た症状を呈する「インプラント周囲炎」があります。これはインプラント周囲の細菌感染によって起こるもので、進行するとインプラントを支える骨の吸収が進み、最悪の場合、インプラントが脱落してしまう可能性があります。予防するには毎日の丁寧な歯磨きと、定期的な専門クリーニングが欠かせません。
編集部
そのほかに、治療後に起こりやすいトラブルはありますか?
永井先生
噛み合わせの問題による違和感や痛み、インプラントの緩み、人工歯の破損なども、治療後に起こる可能性があります。これらのトラブルは早期発見・早期治療が非常に重要ですので、治療後も定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが大切です。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
永井先生
インプラント治療は、確かな技術と継続的なメンテナンスがあれば、長期的に安心してご使用いただける治療法です。しかし、治療を検討される際はインプラントありきではなく、複数の治療法を提示してくれる歯科医院を選ぶことをおすすめします。少なくとも3つ程度の選択肢と各治療法のメリット・デメリット、さらに5年後、10年後の予後まで詳しく説明してくれる医院が望ましいでしょう。治療前に丁寧なカウンセリングを行い、患者さんの将来を見据えた治療プランを一緒に考えてくれる歯科医院をぜひ見つけていただきたいと思います。
編集部まとめ
インプラント治療は、手術直後から骨との結合、そして最終的な人工歯の装着まで、各段階で必要なケアや注意点が異なります。術後1ヶ月は傷口の回復に重点を置き、その後半年間は骨との定着状態をみながら、段階的に通常の生活へと移行していきます。治療後は適切なケアと歯科医院の定期メンテナンスで10年以上使用できる一方、インプラント周囲炎にかかると早期脱落の原因になるため細心の注意が必要です。治療開始前に各段階の経過とケアについて歯科医から説明を受け、十分な理解のもとで進めていきましょう。
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