歯を失ったときの対処法はご存じですか? ブリッジとインプラントの特徴を歯科医が徹底比較!
「インプラント」と「ブリッジ」、失った歯の治療法として代表的なこの2つの治療法は、見た目や使用感、費用、治療期間などがそれぞれ異なります。費用が比較的安く、治療期間も短いという点で魅力的なブリッジ治療ですが、将来の歯の健康への影響を考えた場合、どちらの方がメリットは大きいのでしょうか。インプラントとブリッジのそれぞれの特徴や選び方のヒントを、「浜松歯科」の中野先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
中野 陽平(浜松歯科)
目次 -INDEX-
インプラントとブリッジのそれぞれの特徴 見た目や使用感、費用、治療期間の違いについて
編集部
インプラントとブリッジ、それぞれの治療の特徴を簡単に教えてください。
中野先生
インプラントは、失った歯の代わりに人工の歯根を埋め込む治療法です。具体的には、チタン製の土台を顎の骨の中に埋め込み、その上に人工の歯を装着します。これに対して、ブリッジは失った歯の代わりとなる人工歯を、左右の歯を支えにして入れる治療法です。このように、人工歯の維持の方法が異なるのが、両者の大きな違いとなっています。
編集部
インプラントとブリッジでは、どちらが見た目や機能面でより自然な仕上がりになりますか?
中野先生
見た目に関しては、インプラントの方が歯ぐきの形態も含め、より自然な仕上がりになる可能性が高いと言えます。ブリッジは歯のない部分の歯ぐきが痩せてしまう可能性に加えて、保険診療では奥歯が金属になるという制限もあります。ただし、セラミックであれば見た目の問題は解消されやすいでしょう。噛み心地に関しては、両者でそれほど大きな差はなく、しっかり噛むことができます。
編集部
インプラントとブリッジ、それぞれのおおよその治療期間について教えてください。
中野先生
インプラントの場合は通常で3カ月から、最長で9カ月程度の治療期間が必要です。その一方、ブリッジは1~2カ月、長くても3カ月程度で治療が完了します。治療回数についてもブリッジの方が比較的少なく済むため、時間的負担も軽くなるでしょう。
編集部
費用面についてはいかがでしょうか?
中野先生
費用面については、保険適用のブリッジだと大きな差があります。保険のブリッジは1万5000円~3万円程度ですが、インプラントは保険適用外のため、1本あたり30~50万円かかるのが一般的です。ただし、ブリッジも自費診療の場合は15~30万円程度かかってしまいます。
インプラントとブリッジの長期予後 歯の健康にとっていいのはどっち?
編集部
インプラントとブリッジ、それぞれの寿命について教えてください。
中野先生
インプラントは、適切なケアとメンテナンスを続けることで20~30年、場合によってはそれ以上使い続けることが可能です。一方で、ブリッジは前後の歯を土台として使用するため、その歯の状態に大きく左右されます。歯を削ることや噛む力を負担させることなどを考えると、ブリッジの方が寿命は短い傾向にあります。
編集部
ブリッジはやはり「歯を削る」という点で、歯の健康面にとってはマイナスになるということでしょうか?
中野先生
そうですね。削ることによって、その歯の寿命が短くなることは否めません。また、ブリッジは3本分の歯を2本で支えることになるため、土台となる歯への負担も大きくなります。加えて、歯は噛むたびにわずかに動くため、「動くもの同士をつないでいる」という点においても、歯や被せ物にストレスがかかりやすい状態にあります。
編集部
そうなると、「長期的な予後」という点で寿命や歯の健康を考えてみた場合、インプラントの方が有利と言えますか?
中野先生
金銭面を考慮せず、適切なメンテナンスが続けられる環境であれば、インプラントの方が望ましいと考えます。インプラントにも、治療後の「インプラント周囲炎」という懸念点はありますが、長期的な予後という点においてはブリッジの方がリスクは高いと言えるでしょう。ただ、いずれの治療を選ぶにしても「なぜその歯を失うことになったのか」、その原因から考えることが大切です。
インプラントとブリッジ、自分にピッタリなのはどっち? 治療法を選ぶ際に考えておきたいこと
編集部
インプラントとブリッジで治療法を選択する際、「歯を失った原因」がどのように関係してくるのでしょうか?
中野先生
例えば、歯に強い力がかかりすぎて抜歯に至った場合、ブリッジでは2本の歯で3本分の負担を支えることになるため、さらなる悪化を招くおそれがあります。また、むし歯や歯周病が原因で歯を失った場合は、治療後の再発リスクもしっかり考えることが重要です。歯を失う前と同じような習慣のままでは、どちらの治療法を選んだとしても、良好な予後を維持するのは難しくなります。したがって、まずは歯を失った原因をきちんと特定し、適切な対策を立ててから治療法を選択することが重要だと考えています。
編集部
年齢や健康面、歯の状態などによって、インプラントやブリッジの適応が変わることはありますか?
中野先生
いずれの治療法も年齢による制限はありませんが、適応に関してはそれぞれに注意点があります。まず、インプラントに関しては重度の糖尿病や骨粗しょう症など、全身の健康状態によっては治療が難しい場合があります。一方のブリッジに関しては、失った歯の位置や本数、また前後の歯の状態による制限があります。とくに、保険診療では失った歯の本数に応じた基準があり、これを満たさない場合は治療を選択することができません。
編集部
そのほかに、治療法の選択に際して考慮すべき点はありますか?
中野先生
ブリッジを選択する際は、「健康な歯を削ること」の判断をより慎重におこなう必要があります。私たち歯科医にとっても、健康な歯を削ることには抵抗があるので、治療を選択する際は、ご自身の健康な歯の価値について改めて考えていただきたいと思います。
編集部
健康な歯の価値についてどのように考えればよいのか、歯科医の立場から何かアドバイスはありますか?
中野先生
インプラントは30~50万円ほどの費用がかかりますが、健康な歯の価値を考えると、この費用は決して高額とは言えないというのが私たち専門家の見解です。つまり、インプラントでさえも、健康な歯の価値には及ばないわけです。このように考えると、健康な歯を削ることはやはり専門家として安易におすすめすることはできません。したがって、費用面だけでなく、歯の価値をしっかりと認識したうえで治療法を選択していただきたいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中野先生
歯を失う原因は一人ひとりで異なるので、一般的な治療の説明だけでなく、なぜご自身の歯が失われることになったのか、個々の要因をしっかり理解することが大切です。私たち歯科医はお口の中全体の状態から、歯を失った原因をある程度予測することができるので、まずはその原因について担当医とよく話し合ってみてください。そのうえで、ご自身の状況にあった最適な治療法を選んでいただければと思います。
編集部まとめ
インプラントとブリッジは、失った歯の見た目や機能を回復する代表的な治療法です。それぞれに特徴やメリット・デメリットは異なりますが、長期的な予後という点においてはインプラントが有利と言えます。一方で、治療法の選択に際しては、「なぜ歯を失ったのか」という原因を特定し、その原因にアプローチをした対策を立てることが重要です。費用面や治療期間だけでなく、歯を失った原因を歯科医とよく相談のうえ、ご自身にとって最適な治療法はどちらなのか、考えていきましょう。
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診療科目 | 歯科 |