「親知らず」抜歯のリスクや対処法はご存じですか? 口腔外科専門医が“抜歯の不安と疑問”を解決!
「親知らずの抜歯って痛い? 腫れる?」「時間や費用はどのぐらいかかる?」「抜歯後、日常生活はどうなるの?」など、親知らずの抜歯に関する様々な不安や疑問を持っている人は多いと思います。そこで今回は、親知らずの抜歯前に知っておきたい基本事項や抜歯のリスク、抜歯後の注意点について「おがわ口腔外科クリニック」の小川先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
小川 尊明(おがわ口腔外科クリニック)
目次 -INDEX-
親知らずの抜歯の基礎知識 痛みはいつまで続く? 時間や費用の目安は?
編集部
そもそもなぜ、親知らずを抜歯する必要があるのでしょうか?
小川先生
「親知らずがあるから、必ず抜歯する必要がある」というわけではありません。しかし、一番奥に最後に生えてくる親知らずは、萌出に必要なスペースが不足しがちで、これによって横向きや斜め向きに生えたり、頭しか生えてこなかったりするケースが少なくありません。このような親知らずは、細菌の温床になりやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まるほか、周囲の歯にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、これらの問題が発生する前に、予防的に抜歯をおすすめすることがあります。さらに、矯正治療を予定している患者さんについては、治療前に親知らずの抜歯を推奨しています。
編集部
親知らずの抜歯と聞くと、痛そうなイメージがあります。実際、痛みはどの程度なのでしょうか?
小川先生
抜歯中は局所麻酔をしっかり効かせるので、ほとんど痛みを感じることはありません。稀に麻酔が効きにくいこともありますが、その場合は追加で麻酔を注射します。術後は麻酔が切れると痛みを感じるようになりますが、多くは痛み止めで抑えることができます。痛みのピークは抜歯後2~3日程度で、1週間程度で治まります。
編集部
親知らずの抜歯には、どのくらいの時間がかかりますか?
小川先生
親知らずの位置や状態によりますが、口腔外科を専門とする歯科医(口腔外科専門医)が抜歯する場合の平均時間は、10~30分程度です。簡単な症例は数分で終わることもありますが、難しいケースではもう少し時間がかかることもあります。
編集部
親知らずの抜歯の費用に保険は適用できますか? 具体的な費用の目安を教えてください。
小川先生
親知らずの抜歯費用は保険が適用されますが、具体的な費用については親知らずの状態や抜歯の難易度によって異なります。3割負担の場合のおおよその目安として、簡単な抜歯で1000円前後、難しい抜歯で1500円前後、骨に埋まっているケースで4500円前後です。これに初診料や再診料、検査代、薬代などが加算されます。
親知らずの抜歯に危険はない? 起こり得るリスクとその対策
編集部
親知らずの抜歯に危険やリスクはないのでしょうか? もしあれば、考えられるリスクを教えてください。
小川先生
全くリスクがないわけではありませんが、適切な対策をおこなうことでリスクを最小限に抑えることは可能です。起こり得る主なリスクとして、術後の出血や感染、傷口の治癒不全、さらに下の親知らずの場合は神経の損傷による術後のしびれや知覚麻痺などが挙げられます。ただし、これらのリスクは、術前の検査と術後のケアで大幅に軽減できます。
編集部
親知らずの抜歯に際して、特に注意が必要なケースはありますか?
小川先生
糖尿病で血糖のコントロールができていない人や免疫力が低下している人は、術後の感染症や治癒不全のリスクが高い傾向にあります。また、高血圧で血圧のコントロールが上手くできていない人も、抜歯中に急激に血圧が上昇したり、出血量が多くなったりするリスクがあるため、慎重な対応が求められます。以上のケースに加えて、骨粗しょう症治療薬(BP製剤)や抗凝固剤(血がサラサラになる薬)、免疫抑制剤、抗がん剤を服用中の人に関しても細心の注意が必要です。これらの既往のある場合、事前に主治医に相談し、抜歯が可能かどうか、抜歯に際してどのような点に注意が必要かをよく確認しておく必要があります。
編集部
親知らずの抜歯で起こり得るリスクを軽減するために、患者側ができることはありますか?
小川先生
患者さんができることとして、術前の体調管理や禁煙、術後の適切なケアなどが挙げられます。特に、術後は歯科医からの注意事項をしっかり守り、口腔内の清潔を保ちながら傷口を安静にすることが大切です。また、何か異常を感じた場合は、自己判断せずに早めに担当歯科医に相談してください。
編集部
万が一、抜歯後に治癒不全やしびれ・麻痺などのトラブルが生じた場合、歯科医院ではどのような対応がおこなわれますか?
小川先生
術後感染による痛みや腫れ、治癒不全に関しては患部の洗浄・消毒をおこなったうえで、抗菌剤や消炎鎮痛剤を服用しながら経過を見ます。下の親知らずの抜歯後に生じるしびれや麻痺については、時間の経過とともに回復するケースがほとんどです。その間は定期的に通院していただきながら、症状の確認や経過を観察します。
親知らずの抜歯後の日常生活への影響と注意点
編集部
親知らずを抜歯する日は、仕事や学校を休んだ方がいいのでしょうか?
小川先生
特に休暇をとる必要はありませんが、抜歯後は激しい運動や疲れが出るようなことを控えるようにしてください。また、個人差はありますが、親知らずを抜いた後は1週間ほど痛みや腫れが出ることがあります。その点も踏まえて、スケジュール調整をおこなっていただきたいと思います。
編集部
親知らずの抜歯後、日常生活においてどのような点に注意が必要でしょうか?
小川先生
抜歯後は、激しい運動や熱いお風呂を避け、安静に過ごしてください。また、飲酒や喫煙も極力控えた方がいいでしょう。食事については、抜いた側で硬いものを噛むのはしばらく控え、消化に良いものを摂るようにしてください。加えて、抜歯後に処方された薬(抗菌剤・消炎鎮痛剤)を歯科医の指示通りに服用することも重要です。特に抗菌剤は症状の有無にかかわらず、必ず最後まで飲みきるようにしましょう。
編集部
親知らずを抜歯した後、歯磨きなどセルフケアはどのようにおこなえばいいですか?
小川先生
術後数日は、抜歯した部分を避けて優しく歯磨きをおこない、うがいも控えめにしてください。また、殺菌成分や消炎作用のあるうがい薬を併用すると、術後の感染による腫れや痛みを予防できます。抜歯後1週間ほど経ち、痛みや腫れがなければ通常の歯磨きに戻して問題ありません。
編集部
抜歯後に痛みや腫れが出た場合、症状を和らげる方法があれば教えてください。
小川先生
痛みが出たら処方された鎮痛剤を服用し、できるだけ体を休めるように心がけてください。腫れが強い場合は、患部を冷やすと症状が和らぎます。ただし、冷やしすぎるとかえって治りが悪くなるため、氷や保冷剤などで急激に冷やすのは控えましょう。冷やす場合は冷たいタオルやハンカチを当てるか、冷却ジェルシート(貼付型冷却剤)を貼ってください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小川先生
親知らずの抜歯は、日本人の半数以上が経験する一般的な治療です。もし、抜歯について何か不安な点があれば、1人で抱え込まず、口腔外科専門の歯科医に相談することをおすすめします。専門医が患者さんの状態を丁寧に診察し、最適な治療法を提案してくれるでしょう。
編集部まとめ
親知らずの抜歯に関する疑問や不安は多くの人が直面する問題ですが、抜歯の必要性やリスク、抜歯後の注意点などをよく理解することで、安心して治療を受けることができます。親知らずの抜歯で悩んでいるのであれば、本記事を参考に、ぜひお近くの口腔外科専門医にご相談ください。
医院情報
所在地 | 〒761-0701 香川県木田郡三木町池戸2186-1 |
アクセス | 高松琴平電気鉄道長尾線「池戸駅」 徒歩10分 |
診療科目 | 歯科口腔外科 |