歯並びや口腔内に影響を及ぼす「埋伏歯(まいふくし)」とは? 放置のリスクや早期発見のポイントを歯科医が解説!
「歯並びが気になる」「大人の歯がなかなか生えてこない」などのお悩みの原因に「埋伏歯(まいふくし)」の存在があります。一体、埋伏歯とはどのような歯なのか、症状や放置するリスク、早期発見のポイントを「さつき野歯科・矯正歯科医院」の寺久保先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
寺久保 美紀子(さつき野歯科・矯正歯科医院)
「埋伏歯(まいふくし)」ってどんな歯? 原因や症状について
編集部
まず、埋伏歯について教えてください。
寺久保先生
簡単に言うと、歯が生えるはずの時期がきても、自然に生えてこない永久歯のことです。歯の種類としては上の前から3番目の犬歯、一般に「糸切り歯」と呼ばれる歯に多くみられます。また、下の12歳臼歯(第2大臼歯)が倒れて埋もれたまま、生えてこないケースもみられます。
編集部
なぜ、埋もれたまま生えてこないのでしょうか?
寺久保先生
永久歯の位置そのものに問題がある場合もあれば、骨の中で永久歯同士がぶつかりあって生えてこない場合もありますし、これらが複合して生じることもあります。また、ごく稀にですが、骨と歯がくっついてしまう「骨性癒着(アンキローシス)」が原因で生えてこないケースもあります。
編集部
埋伏歯がある場合、何か症状などはあるのでしょうか?
寺久保先生
「歯が生えてくる時期(年齢)になっても生えてこない」というのが大きな特徴ですが、痛みなどの症状がないことも多いため、その存在に気づかないまま放置されがちです。そうするうちに歯並びが悪くなってしまい、レントゲンで確認した結果、埋伏歯が原因だったというケースも多くあります。
編集部
たまたま撮ったレントゲンで発見されるケースもあるのでしょうか?
寺久保先生
そうですね。むし歯の治療や定期健診などで「パノラマレントゲン」という大きなレントゲンを撮影した際に、位置の異常や奥に潜っている様子が確認されることもあります。これによって埋伏歯を早期に発見できれば、以後に起こり得るリスクが回避できる可能性が高いでしょう。したがって、これといった症状がなくても、むし歯や歯周病の早期発見も兼ねて、定期的にレントゲンを撮っておくことは非常に重要だと思います。
埋伏歯があると歯並びが悪くなる? 埋伏歯に潜むリスクとは
編集部
顎の中に埋伏歯があると、どのようなリスクがありますか?
寺久保先生
しかるべき時期に大人の歯が生えてこないことで、歯並び全体が歪んでしまったり、もともと悪かった歯並びがさらに悪化したりするリスクがあります。
編集部
まずは歯並びの問題が生じやすいのですね。そのほかに、埋伏歯にはどんなリスクがありますか?
寺久保先生
糸切り歯(犬歯)が埋伏しているケースでは、ほかの永久歯に余計な負担がかかりやすくなります。これは、犬歯に噛み合わせのバランスを取る重要な役割があるためです。さらに、埋伏歯の位置や状態によっては、隣の永久歯に損傷を与えてしまうことがあります。その場合、損傷を受けた歯は抜歯になる可能性もあるため注意が必要です。
編集部
発見の遅れによって、これらのリスクが増大することもあるのでしょうか?
寺久保先生
はい。実際、埋伏歯に気づくのが遅れてしまった結果、2本の永久歯がダメになってしまうケースもあります。「もう少し早く来院してくれれば……」というケースも意外と多いため、やはり早期発見・早期治療が重要だと思います。
埋伏歯を早期に発見するポイント・治療法は?
編集部
埋伏歯を早期に発見するためには、どのような点に注意したらいいでしょうか?
寺久保先生
日頃から歯科健診を習慣化し、定期的にレントゲンを撮ってもらうことが埋伏歯における早期発見の最優先事項だと思います。また、お子さんの場合は永久歯が生えた後、半年~1年が過ぎても隣の永久歯が生えてこない場合は、かかりつけ歯科医に相談していただくのが発見の第一歩です。永久歯の生え変わりの時期は定期的に受診し、永久歯が正常に生えているか、本数に問題ないかをチェックしてもらいましょう。
編集部
埋伏歯が見つかった場合、どのような治療がおこなわれますか?
寺久保先生
自然な萌出が見込める埋伏歯については、萌出に障害となるもの(乳歯・スペースの不足)を取り除いてあげて、生えてくるのを待つこともあります。ただ、この方法でも生えてこない場合は、歯ぐきや骨を少し開く「開窓(かいそう)」という処置をおこないます。その後、埋伏歯に器具をつけて引き出す「牽引(けんいん)」という治療をおこないます。埋伏歯を引き出した後は、通常の矯正治療で歯並びを整えていきます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
寺久保先生
埋伏歯の対応については、全ての永久歯が生えてからおこなうのではなく、比較的早期に治療介入することが望ましいケースもあります。乳歯がなかなか抜けない、あるいは乳歯が抜けて何カ月も経つのに永久歯が生えてこない場合は、早めにかかりつけ歯科医院を受診することをおすすめします。経過観察しても改善しない場合には、大学病院や矯正専門医に相談するといいでしょう。
編集部まとめ
埋伏歯は、生えてくる時期になっても骨に埋まったまま生えてこない永久歯です。上の犬歯(糸切り歯)に多く、放置すると歯並びが悪くなるほか、隣の永久歯を傷つけてしまう恐れがあります。一方で、埋伏歯があっても症状はないため、その存在に気づかないまま状態が悪化してしまうケースも少なくないようです。特にお子さんの場合は、永久歯の生え変わりが始まったら、レントゲンで歯の本数や位置を確認してみてくださいね。
医院情報
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診療科目 | 歯科、矯正歯科 |