詰め物・被せ物にはジルコニアを使うのが良い!? 歯科医師がメリット・デメリットを解説
歯科治療で入れる白い詰め物・被せ物は「セラミック」が主流でしたが、近年は「ジルコニア」という素材も台頭し注目を集めています。ジルコニアとはどのような素材なのか、従来のセラミックとの違いやメリット・デメリットなどをいわた歯科医院の岩田先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
岩田 幸生(いわた歯科)
目次 -INDEX-
「ジルコニア」ってどんな素材? 一般的なセラミックとの違いや治療の種類について
編集部
歯科で使われる「ジルコニア」とは、どのような素材なのでしょうか?
岩田先生
ジルコニアは正式名を「二酸化ジルコニウム」といい、包丁やゴルフクラブ、NASAのスペースシャトルなどにも使われる素材です。歯科で使われるようになったのは2005年の初めごろで、当初は金属に代わるフレーム材として使用されていました。金属のイオン化による歯肉の黒ずみやシャドウが無くなる、金属アレルギーの方にも安心とされて普及しました。近年、第4世代のジルコニアは色調や透明感も良くなり強度が改善されたため、単冠のみならずフルマウスのジルコニアブリッジにも使用されるようになりました。
編集部
これまでのセラミック(従来型)とジルコニアはどのような点が違うのでしょうか?
岩田先生
ジルコニアもセラミック系の素材の1つですが、従来のセラミックとの大きな違いは強度です。ジルコニアは「人工ダイヤモンド」と称されるほど非常に硬く、その強度も今では金属に匹敵するといわれています。したがって、現在歯科で使用される白い素材としては最も強靭な素材で、従来のセラミックとはまったく別ものだと考えていただければと思います。
編集部
具体的に、ジルコニアはどのような歯科治療で用いられるのでしょうか?
岩田先生
歯を削ったあとに入れる詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)に主に用いられます。近年、ジルコニアは強度だけでなく精度も飛躍的に向上しているので、奥歯の被せ物に関してジルコニアはかなり優れた素材だと実感しています。
詰め物・被せ物にジルコニアを使うメリット 同じ白い歯でもジルコニアだと何が変わる?
編集部
近年は奥歯も保険診療で白い歯が入れられますが、保険の白い歯とジルコニアではどのような点が違いますか?
岩田先生
保険診療で入れる白い歯はプラスチックを主成分とした素材が使われています。比較的安い価格で詰め物・被せ物が作れる一方で、ジルコニアと比べると強度が劣る、長く使用しているうちに変色や劣化も生じるため注意が必要です。当院では、保険でも白い歯は入れられるけど強度がないために歯を削る量が多くなることや、たわんで外れやすいことなどをご説明したうえで素材を選んでいただいています。
編集部
強度のあるジルコニアは「歯を削る量が少ない」というのがメリットなのでしょうか?
岩田先生
はい。近年、歯科分野はMI(ミニマル・インターベンション = 最小の侵襲)治療が主流ですので、歯の削除量が多くなる治療は致命的といえます。そのような意味において、金属と同等の強度を持つジルコニアは、同じ白い素材でも「歯の削除量を最小限に抑えられる」というのが大きなメリットです。これは従来のセラミックと比較しても「歯を削る量が少ない」という点においてジルコニアのほうが有利でしょう。
編集部
一方で、従来のセラミックに比べるとジルコニアは「色調や透明感が劣る」という話も聞きますが、こちらについてはいかがでしょうか?
岩田先生
かつてはそのように言われていましたが、ジルコニアの物性は日進月歩で向上しており、昔と比べると今は色調も良くなっています。グラデーションや色の補正も対応できるようになっているので、奥歯の白い被せ物についてはジルコニア冠が第一選択肢になってくると思います。
編集部
では、そのほかにジルコニアにデメリットはないのでしょうか?
岩田先生
近年のジルコニアの修復物は専用の機械で口腔内をスキャニングする「光学印象」と、それをもとにジルコニアブロックを削りだして(ミリング)作製するのが主流となっています。そのスキャニングの技術や機械の種類によって、精度や適合が多少変わってしまうのがデメリットの1つかもしれません。
ジルコニアに関するQ&A 寿命はどのぐらい? 長持ちさせるにはどうしたらいい?
編集部
詰め物や被せ物の素材にジルコニアを選んだ場合、どのぐらい長持ちするのでしょうか?
岩田先生
ジルコニア自体は強度の高い素材ですので、寿命も半永久的といえます。問題は、ジルコニアと歯を接着させる「接着剤」との相性です。硬い接着剤であれば周りから溶けて詰め物や被せ物が外れたり、むし歯ができたりするリスクは少なくなります。したがって、歯科医師が接着剤をよく吟味することが重要です。あとはほかの治療と同様に、治療後のケアがその後の予後や寿命を大きく左右します。
編集部
やはり、治療後のセルフケアやメンテナンスがジルコニアを長持ちさせるうえでは重要なのですね。
岩田先生
患者さんの中には「歯が入ればそれで治療が終わり」と考えている方も少なくありません。しかし、「なぜ、お口の中に詰め物や被せ物が入るのか?」という理由を考えれば、今までと同じようなことをやっていたら同じ状態に至ることは容易に想像できるでしょう。したがって、自由診療で高い素材を選んだ方に対しては「それを長く維持するために口腔内環境を改善することが最も重要である」といつもお伝えしています。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
岩田先生
むし歯で歯を削った際に、最終的に入れる詰め物・被せ物では様々な種類の素材が選べるようになっています。どれを選んだらいいのか迷われる方も多いでしょうが、お口の中に入れるものはやはり強度が高く、長く安定した素材を選んでいただきたいと思います。歯科医院によって取り扱う素材は異なるため、本記事を参考にまずは今治療を受けている歯医者さんに相談して、ジルコニアも検討材料に入れていただければ幸いです。
編集部まとめ
ジルコニアは歯科で用いられる白い素材の中で最も強度に優れ、前歯から奥歯まで幅広い部位に使用できることがわかりました。かつては「セラミックよりも色調が劣る」と言われていましたが、近年はジルコニアの特性も向上し、以前よりも色調も良くなってきているようです。強度のあるジルコニアは「歯を削る量を抑えられる」というメリットがありますので、白い歯をご希望の際はぜひジルコニアも選択肢の1つとして検討してみましょう。
医院情報
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アクセス | 名古屋鉄道各務原線「新加納駅」 徒歩約25分 |
診療科目 | 歯科、小児歯科、矯正歯科 |