インプラントの基礎知識と知っておきたい注意点 安心して治療を受けるために!
「インプラント」という名前はよく耳にしても、それが具体的にどんな治療なのか、何がメリットなのかがイマイチよくわからない、という方もいらっしゃると思います。そのようなインプラント初心者の方がこれだけは知っておきたい基礎知識をデンタルクリニックアレーズ銀座の中村茂人先生に解説してもらいました。
監修歯科医師:
中村 茂人(デンタルクリニックアレーズ銀座)
目次 -INDEX-
インプラント初心者がおさえておきたい基礎知識 そもそもインプラントとは? 差し歯とどう違う?
編集部
そもそも、インプラントはどんな治療なのでしょうか?
中村先生
簡単にいうと、永久歯を失ったときに、その代わりとなる新しい歯を入れる治療です。歯科領域では昔から、失った歯の代わりに何か使えないかと試行錯誤してきました。その過程のなかで、スウェーデンの整形外科医ブローネマルク博士が骨折の治る様子を観察する動物実験の中で、チタンと骨とが直接結合することを発見しました。この偶然の発見が、インプラントの成功率を高めることになったきっかけです。
編集部
骨折の研究がインプラントの誕生につながったというのは興味深いですね。
中村先生
はい。実験ではウサギのスネにチタン製の生体顕微鏡を取り付けたのですが、しばらくしてその生体顕微鏡が取り外せないという現象が起こりました。そこから、チタンという金属には骨の中で体の一部として取り込まれる性質があることが明らかになったわけです。このインプラントとチタンの結合を専門的に「オッセオインテグレーション」と呼んでいます。
編集部
そうすると「安全性」も問題がないのでしょうか?
中村先生
チタンは一般的な金属と比べると、アレルギーを起こしにくい金属としても知られています。もちろん、アレルギーが起こる可能性がゼロというわけではありませんが、その確率は極めて低いといっていいでしょう。ちなみに、初めてインプラントを入れた患者さん(ブローネマルク博士の友人)は、その後40年間の人生をまっとうされるまで、問題なく機能し続けたと言われています。
編集部
インプラントはいわゆる「差し歯」とどう違うのでしょうか?
中村先生
差し歯は自分の歯の一部を利用して、見える部分(歯冠)を修復する治療法です。私たちの歯は歯ぐきより下に「歯根」と呼ばれる歯の根っこがあり、その根っこの周りを骨が支えています。差し歯はこの歯根を支えにして、その上に新しい歯(人工歯)を被せていきます。これに対して、インプラントはその根っこ自体が残せない場合に、歯根と歯の両方を補う治療法です。自身の歯根の代わりにチタン製の根っこを骨の中に直接埋め込み、その上に新しい歯を被せていきます。
編集部
チタン製の根っこを骨に埋め込んで、本当に噛めるようになるのでしょうか?
中村先生
先ほどお話ししたように、チタンには骨と一体化する性質があります。私たちの体は通常、異物が体内に入るとそれを排除しようとする反応が起こりますが、チタンの場合は体の一部と誤認して体に取り込もうという反応が起こります。インプラントの場合も人工歯根を骨の中に埋め込むと、チタンのザラザラした部分に骨を作る細胞が入り込んで一体化するため、しっかり噛めるようになるわけです。
編集部
「骨に埋め込む」と聞くと、治療中や治療後の痛みも気になります。痛みに関してはいかがでしょうか?
中村先生
インプラントを埋め込む手術については局所麻酔をしっかり効かせて行いますので、基本的に痛みの心配はありません。術後の痛みに関してはケースバイケースです。一口にインプラントといっても症例は様々で、それによって術式も異なります。ごく一般的な埋入については治療後の痛みも少ないのですが、やはり外科処置ですので痛みがゼロではないと思ってください。
編集部
治療後に痛みが出た場合、どのぐらい続きますか?
中村先生
これも症例や術式によって異なりますが、多くの場合は当日から1週間以内で症状は落ち着きます。その間は痛み止めを服用しながら、痛みをコントロールしていきます。
ブリッジ・入れ歯と比較したインプラントのメリット
編集部
自分の歯を失った場合、同様の治療に「ブリッジ」や「入れ歯」がありますが、これらの治療法と比較したインプラントのメリットを教えてください。
中村先生
最大のメリットはほかの歯に負担がかからない点です。残っている歯を守ることができるのは、唯一インプラントだけだと思います。
編集部
残っている歯をインプラントがどのように守るのか、具体的に教えてください。
中村先生
歯は1本失うごとに残っている歯への負担が増していき、それに応じてほかの歯を失うスピードも速くなっていきます。例えば、ブリッジの場合は失った歯の両隣にある健康な歯を削り、さらにその歯に噛む力を負担してもらいます。入れ歯の場合も残っている歯に金具をかけて維持するわけですから、やはりその歯の負担は増大するわけです。しかし、インプラントは骨と直接結合するため、ほかの歯を削ったり噛む力を負担したりする必要がありません。
編集部
ほかの歯に余計な負担をかけないことが、結果的にその歯を守ることにつながるわけですね。
中村先生
そのとおりです。インプラントのメリットでは「自分の歯のように噛める」「違和感がなく快適」という点がよく挙げられます。しかし、個人的な見解としては「残っている歯を守るためにインプラントを選ぶ」というのが一番だと思います。
治療を受ける前に知っておきたいインプラントの注意点
編集部
これまでのお話でインプラントの良さは十分に理解できたのですが、一方で治療に際して注意しておきたいことはありますか?
中村先生
インプラントにはほかの治療にはない利点がたくさんありますが、一方で治療にはリスクをともなうことも知っておく必要があります。外科的な面でいうと、神経の麻痺やしびれ、上のインプラントの場合は上顎洞炎(副鼻腔炎)などのリスクが挙げられます。そのようなリスクを避けるためには術前の検査をしっかり行ったうえで、リスクについて十分に説明してもらうことが大切です。
編集部
まずは検査を受けて、その結果を担当医から説明してもらうことが重要なのですね。
中村先生
はい。事前の検査では治療のリスクのほかに、噛み合わせもきちんと調べてもらう必要があります。インプラントはそれを入れることが目的ではなく、最終的に噛めるようになることが最終ゴールとなります。そのためには、インプラントがどこに・どういう位置で入ると噛めるのかを事前にシミュレーションし、そこから逆算して治療計画を立てることが非常に重要です。そうしないとインプラントがただの飾りになってしまい、「入れたのによく噛めない」という問題が起こってしまいます。
編集部
そのほかに、注意点や気をつけておきたいことはありますか?
中村先生
「なぜ、その歯がそうなった(抜歯になった)か」という点についても、よく説明を聞いて理解しておくことが大切です。その問題点を解決しないままインプラントを入れると、同じようにインプラントがダメになってしまう可能性が高くなります。とくに、インプラントの場合は治療後に起こる「インプラント周囲炎」に警戒が必要です。インプラント治療に際してはこれまでのセルフケアや生活習慣を見直すほか、治療後も定期的に歯科医院に通い、メンテナンスを受けることも忘れないようにしましょう。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
中村先生
インプラントは日本でもすでに長い歴史があり、エビデンスも確立されてきているので、自分の歯を守るうえで安心して受けていただける治療だと思います。ただし、満足できる結果を出すためには事前の検査をしっかり行い、治療について理解を深めることが大切です。治療の目的やプロセス、リスクなどを十分に説明してもらい、納得してから治療を進めていきましょう。
編集部まとめ
インプラントは自身の歯がなくなったところにチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に新たな歯を入れていく治療法です。ブリッジや入れ歯とは異なり、残っている歯を削ったり、負担をかけたりしなくて良いという点で、インプラントは自分の歯を守る最良の治療といえます。一方で、治療に際しては診査・診断をしっかり行い、リスクについても十分に説明を受けることが大切です。こちらの質問や疑問に丁寧に答えてもらえる、信頼できる歯科医院をぜひ探していきましょう。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |