『天然歯とインプラントの違い』をご存知ですか? メンテナンス方法も歯科医師が解説!
「乳歯、永久歯に続く第3の歯」「第2の永久歯」と称されることも多いインプラントですが、天然歯とどのような違いがあるのでしょうか? インプラントと天然歯の構造上の違いやインプラントになることで変わるポイントについて、いわた歯科医院の岩田先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
岩田 幸生(いわた歯科)
目次 -INDEX-
インプラントと天然歯の構造・解剖学的な違いとは? 天然歯にあってインプラントにはない「歯根膜」の働きについて
編集部
インプラントと天然歯の構造上の違いを教えてください。
岩田先生
「インプラント」は患者さんの顎の骨を削り、そこにチタン製の人工歯根を埋め込むもので、人工歯根と骨が直接結合して存在しています。一方で、天然歯は歯根と骨が直接つながっているわけでなく、両者の間に「歯根膜(しこんまく)」というクッションのような組織が存在している点がインプラントとは大きく異なります。
編集部
天然歯にある「歯根膜(しこんまく)」とは、どのような組織なのでしょうか?
岩田先生
歯根膜は「歯周靭帯」とも呼ばれる歯根と骨をつなぐ繊維状の組織です。厚みは0.3mm程度で、食べ物を噛むときの衝撃を吸収する役割があります。また、噛みごたえ・噛み心地などの感覚も歯根膜の働きによって感じることができます。
編集部
そのほかに、インプラントと天然歯で違うところはありますか?
岩田先生
そもそも、天然歯は内部に血管も神経もある「血の通った組織」であるのに対してインプラントはあくまで人工物であるため、両者はまったく異なります。インプラントは「第2の永久歯」と呼ばれることもありますが、天然歯とはかけ離れていることは否めないでしょう。
天然歯がインプラントに置き換わると、どんなところが変わってしまう? 噛み心地も変化するって本当?
編集部
先ほどの「構造」の違いから考えると、やはりインプラントになると噛み心地は変わってしまうのでしょうか?
岩田先生
インプラントには歯根膜という感覚をつかさどる組織がないため、理論上では多少の変化はあると考えられます。ただ、日々の臨床で患者さんを診ているなかで、インプラントにしてから「噛み心地が悪い」「昔と噛む感覚が変わった」という話を聞くことはこれまでほとんどありませんでした。したがって、実際のところは噛み心地にそれほど大きな変化はないと考えています。
編集部
では、そのほかに天然歯がインプラントになると生じる変化はありますか?
岩田先生
天然歯と骨の間には歯根膜のほかに「歯肉溝浸出液」という液体が存在しており、細菌の侵入を抑えています。いわば生体に備わった防御機能ですが、インプラントにはこの防御機能が備わっていません。したがって、細菌に対する抵抗力は天然歯よりも劣ってしまいます。
編集部
つまり、天然歯よりも細菌に感染しやすいということでしょうか?
岩田先生
すべてのケースではありませんが、その可能性は高いといえます。インプラントはむし歯にならないものの、インプラント周囲に細菌が感染すると「インプラント周囲炎」という病気を発症します。天然歯でいう歯周病に近い病気ですが、細菌に対する抵抗力が弱いインプラントの場合は感染すると進行も早く、急激に悪化しやすいため注意が必要です。
インプラントでも長く良好な状態を保つために 治療後の「メンテナンス」の重要性
編集部
以上のお話をまとめると、インプラントは天然歯よりもさらに徹底したケアや管理が必要なように思います。
岩田先生
そうですね。まずはインプラント周囲を清潔に保つために、セルフケアをしっかり行っていただきたいと思います。ただ、そのセルフケアも時間が経つと自己流になりがちなので、定期的に歯科医院でブラッシングのチェックを受けることが肝心です。
編集部
インプラント治療後は、セルフケアにくわえ歯科医院でのメンテナンスも重要になるのですね。
岩田先生
インプラントは構造的に細菌がつきやすいうえに、感染すると炎症が広がりやすいため、歯医者さんでこまめに状態をチェックしてもらうことが大切です。定期的にプロフェッショナルケアを受けることも、インプラントを長持ちさせるポイントとなります。
編集部
歯医者さんでは具体的に、どのようなインプラントケアを行っているのでしょうか?
岩田先生
インプラントは金属なので、金属製のチップで清掃すると表面を傷つけてしまう可能性があります。したがって、プロフェッショナルケアでは専用の柔らかいチップでインプラント周囲の汚れを丁寧に落としていきます。さらに歯ぐきに炎症がある場合はレーザーを用いてプラークや感染物質の除去を行います。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
岩田先生
インプラントは高額な治療であることから、予後に対する患者さんの期待値も大きい傾向があります。私たちもその期待に応えるべく日々研鑽を重ねていますが、インプラントの特性や天然歯との違いもよく理解していただけると幸いです。治療後に起こるインプラント周囲炎を予防し、長く良好な状態を維持するうえでは、患者さんのご協力が不可欠です。ぜひ、歯科医院と二人三脚でインプラントを長持ちさせていきましょう。
編集部まとめ
インプラントは天然歯に比べて細菌に対する抵抗力が弱く、感染すると炎症が波及・悪化しやすいことがわかりました。インプラント治療後はこれまで以上にセルフケアを徹底し、インプラント周囲炎を予防することが肝心です。費用や時間をかけて入れたインプラントがすぐにダメにならなないよう、歯医者さんと協力しながら長く良好な状態を保っていきましょう。
医院情報
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アクセス | 名古屋鉄道各務原線「新加納駅」 徒歩約25分 |
診療科目 | 歯科、小児歯科、矯正歯科 |