「ラミネートベニア」の寿命は? すぐに剥がれたりしない? 治療の流れやメリット・デメリットを歯科医が解説
つけ爪に近い感覚で歯の色や形を変えられる「ラミネートベニア」。若い女性を中心に人気が集まる一方で、「誰でも治療できるのか」「すぐに剥がれたりしないのか」という点も気になります。今回はラミネートベニアの治療の流れやメリット、治療に際しての注意点などを、「南歯科医院」の南先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
南 昌宏(南歯科医院)
目次 -INDEX-
ラミネートベニアがおすすめなのはどんな人? 治療の内容や流れ、メリットを歯科医が解説
編集部
ラミネートベニアとは、どのような治療法なのでしょうか?
南先生
前歯の形や色を変えたい場合に歯の全周を削って被せるのでなく、表側(唇面)だけをわずかに削って、そこに厚みにして1mm程度の薄いセラミックを接着させる修復法です。
編集部
ラミネートベニアには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
南先生
一番は歯を削る量が少ない点だと思います。歯の色や形を変えたい場合、最初にセラミックの被せ物を入れると、次にもし再治療が必要になった場合に同じ被せ物でしか対応ができません。そうすると、さらに歯を削ることになるため、場合によって神経を取る治療が必要になる可能性もあります。しかし、ラミネートベニアであれば仮に再治療が必要になっても、もう一度ラミネートベニアで対応できる場合もありますし、難しい場合は被せ物で対応することも可能です。このように、初回の治療でワンクッション置くことで、歯質を可能なかぎり残すことができるほか、神経を温存できる可能性も高くなります。
編集部
ラミネートベニアの治療の流れを簡単に教えてください。
南先生
1日目に前歯の表面を削り、シリコンで型取りした後、仮歯を入れていきます。そこから、1週間~10日後にもう一度来院していただき、完成したラミネートベニアを削った面に接着していきます。
編集部
そうすると、最短で2回の通院でラミネートベニアが入れられるのでしょうか?
南先生
通院回数の目安としては2~3回です。ラミネートベニアは最終的なデザインを歯科医がイメージしておくことが重要なので、削る前に模型上でデザインを設計し、そこから歯を削っていきます。したがって、実際は3回の通院が必要になると思います。ただし、むし歯があればそちらの治療を優先するため、その場合はもう少し回数がかかると思ってください。
ラミネートベニアのデメリットや注意点 誰でも治療は受けられる? すぐに剥がれたりしない?
編集部
ラミネートベニアにもデメリットはありますか?
南先生
ラミネートベニアを一度入れると、後から色を変えられない点はデメリットと言えるかもしれません。ラミネートベニアの希望者は歯を白くしたい人も多いのですが、先にラミネートベニアを入れてしまうと、後からホワイトニングをしてもベニア部分は白くなりません。したがって、ホワイトニングを先におこなって、その後にラミネートベニアを入れることをおすすめしています。
編集部
ラミネートベニアは希望すれば、誰でも治療を受けられるのでしょうか?
南先生
ラミネートベニアは「エナメル質がある程度残っていること」と「歯に動揺(揺れ)がないこと」が治療の適応条件になります。例えば、神経がない歯の場合、過去の治療でかなり歯質が削られていることが多いので、そのようなケースは構造上、ラミネートベニアでの対応は難しいと言えます。また、ラミネートベニアは一歯単位でおこなう治療なので、歯周病などでグラグラしている歯をつなげて固定することもできません。
編集部
そのほかに、ラミネートベニアでは対応が難しいケースはありますか?
南先生
歯ぎしりや食いしばりのある人などは、ラミネートベニアが割れるといった破損のリスクが高くなります。そのため、もともと噛み合わせの強いケースについては、被せ物などの別の治療法を選択した方がいいでしょう。
編集部
表面に貼り付けるだけのラミネートベニアは、すぐに剥がれたりしないのでしょうか?
南先生
これは歯科医や歯科技工士の技術によると思います。ラミネートベニアの内面処理をしっかりおこなうほか、接着に際しては「ラバーダム防湿」をするなど、正しい手技でおこなえばすぐに剥がれ落ちることはありません。
ラミネートベニアの寿命は? 治療後に長持ちさせるポイント
編集部
ラミネートベニアはどのぐらい持つのでしょうか?
南先生
セラミックの素材自体の寿命は、10年生存率で9割程度です。症例をきちんと選んで正しい手技を守り、治療後のメンテナンスをしっかりおこなえば、10年以上は持ちます。
編集部
長持ちさせるためには、治療後のメンテナンスも重要なのですね。
南先生
はい。治療した歯が後からむし歯になってエナメル質が壊れると、ラミネートベニアの接着力が落ちてしまいます。したがって、治療後は毎日の歯磨きもしっかりおこなうほか、歯科医院に定期的に通院してクリーニングやフッ素塗布などのメンテナンスを受けることが大切です。とくに、むし歯になりやすい人は通院の頻度を増やし、カリエスコントロールをしっかりおこなうことがラミネートベニアを長持ちさせる上では非常に重要となります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
南先生
我々歯科医は、歯質や神経の保存を強く意識しながら治療をおこなっています。かつては「削って被せる」という従来の方法もある程度は仕方なかったのですが、近年は接着技術が進歩したおかげで、歯を削る量もコントロールできるようになりました。そのような意味において、ラミネートベニアは削る量を最小限にできる点でメリットのある治療だと思います。
編集部まとめ
ラミネートベニアは歯を少量(表側を1mm以内)削るだけで、歯の色や形を変えることができる治療法です。一方で、「エナメル質が十分に残っていること」「歯がグラグラしていないこと」「歯ぎしり・食いしばりがないこと」が治療の適応条件となります。ラミネートベニアをご希望の際はメリットだけでなく、デメリットや適応条件などもよく理解の上、歯科医と相談しながら検討していきましょう。
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