「クラウン」or「ラミネートベニア」、前歯の見た目を良くしたいときの治療方法の絞り方は?
前歯の歯並びを整えたいとき、じつは矯正治療以外にも治療選択肢があることをご存知でしょうか。それが、「クラウン」や「ラミネートベニア」です。一体、それぞれどういった特徴があるのか、また、何を基準に選べばいいのでしょうか。今回は、「Miho歯科医院」の前原先生が詳しく解説します。
監修歯科医師:
前原 美保(Miho歯科医院 院長)
岡山大学歯学部卒業。岡山大学歯学部歯科保存学第二講座臨床研修医を経て民間の歯科医院勤務。2013年、大阪府堺市に「Miho歯科医院」を開院。「お口の健康を作る歯科医療」を心がけている。日本口腔インプラント学会、日本臨床歯周病学会、日本補綴歯科学会の各会員。
矯正治療以外で前歯の見た目を良くする選択肢
編集部
前歯の見た目を良くしたいのですが、矯正治療以外の選択肢はありますか?
前原先生
はい。症例によってはクラウンやラミネートベニアで対応することが可能です。クラウンは歯を一周ぐるりと削った後にかぶせる「冠」で、ラミネートベニアは例えるならネイルチップのような歯の上に貼る「板」とイメージしてもらえればわかりやすいでしょうか。
編集部
ラミネートベニアは貼るだけなので、歯を削らなくて済むということですか?
前原先生
患者さんの歯並びによります。貼るだけで整えられるケースもあるのですが、原則として、「貼る板の厚さ分は削る」と考えておいてほしいです。ただし、削る箇所は前歯の前面のみなので、クラウンと比べると量的に少なくなります。
編集部
貼るよりも被せた方が長持ちしそうな印象です。
前原先生
技工士さんの腕によっては、ラミネートベニアでも十分に長持ちしますよ。その一方、ラミネートベニアの耐用度は対合歯、つまり上下の反対側の歯にどう当たるかでも、変わってくると思います。ですから、歯科医師による噛み合わせの見立ても重要になってきます。さらにいうと、患者さんの歯の質にも左右されます。接着に耐えるだけのエナメル質が十分だと、しっかりとくっつきます。
編集部
クラウンの場合は「どれだけ歯を削られるか」が心配です。
前原先生
クラウンの場合、1本の前歯だけ削って終わるケースは少ない傾向にあります。例えば右側に動かす場合、右方向に新たなスペースが必要になりますし、逆に左方向は空いてしまいます。空いた左側を補うとしたら、左側の歯にもクラウンが必要です。
審美性と耐用度の両立が重要
編集部
そこで本題です。クラウンとラミネートベニアは、どちらが綺麗に仕上がるのでしょうか?
前原先生
審美面からすると、両者の違いはあまりない印象です。まず、それぞれの治療方法に適応があるか、そして患者さんが削る量に対してどう思われるかで決まるのではないでしょうか。もちろん、症例写真などはお見せしています。
編集部
結局、患者としては「歯を削られる量」で決めそうです。
前原先生
歯は削れば削っただけ耐用度が落ちます。残った細い歯で「噛む力」を受け止めなくてはいけないからです。ただし、前歯には、そもそも「噛む力」が強くかかりません。奥歯と比べて、多少は耐用度を犠牲にできます。そのバランスをどう取るかが重要ですね。
編集部
耐用度をどこまで担保するのか、担当の歯科医師によって変わりませんか?
前原先生
医師の技量や経験量によって変わると思います。また、患者さんの食生活も関係してきます。「前歯で噛み切る行為」が多い食事内容なら、それなりの耐用度を考えるべきです。したがって、「クラウン VS ラミネートベニア」論は一概に決まりません。加えて、治療費も変わってきます。
編集部
歯の機能を考えると、「仕上がりの綺麗さ」だけで選んではいけないような気がしてきました。
前原先生
そうですね。大前提として、クラウンにしてもラミネートベニアにしても、「歯を本来あるべきところへ動かす治療」では“ない”ことにご留意ください。噛み合わせも含めた歯の機能を優先するなら、矯正治療が治療の第一選択肢になるでしょう。
矯正治療も視野に入れるのがベター
編集部
カウンセリング時、矯正治療の説明も受けておくべきでしょうか?
前原先生
ぜひ、そうしてください。何事も「知っていないと判断できない」ですよね。「最初から矯正治療はしない」と決めるのではなく、「説明を受けた結果、選択肢から外す」という判断をした方が、後悔も少ないと思います。
編集部
ただ、矯正治療でネックになるのが「治療期間」です。
前原先生
やはり、治療期間の問題は依然として残ってしまいます。その一方で矯正器具の見た目の問題は、「歯の裏側に装着する器具」や「透明なマウスピース型の矯正器具」の登場により、ある程度、回避できるようになってきました。
編集部
本来なら、矯正治療で歯並びを解決すべきですか?
前原先生
必ずしもそうとは言い切れません。先入観にとらわれるのではなく、そもそもの適応があるのかどうかを歯科医師と相談してから決めるようにしてください。また、歯並びは個人ごとに異なりますし、歯に対する考え方も様々ですから、あらゆる結論があっていいのだと考えます。要するに、ご自身がその選択に納得できるかどうかが大事になってきます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
前原先生
歯並びが悪いと、見た目によるコンプレックスを覚えるほか、長期の咬合不良による悪影響も生じてしまいます。ですから、純粋に審美面だけの問題ではないと思います。どのような観点と治療方法があるのか、お話だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。ご自身のニーズや価値観を歯科医師とすり合わせたうえで、焦らずに決断してくださいね。
編集部まとめ
クラウンでもラミネートベニアでも、仕上がりはほとんど変わらないということでした。しかし、治療の適応が双方にないと、比較自体ができません。クラウンでしか処置できない症例もあるでしょう。また、比較という意味で矯正治療の説明を受けておいた方がよさそうです。「一般的な仕組みや理屈」ではなく、自分にどのような効果が及ぶのかという観点で、カウンセリングを受けてみてください。
医院情報
所在地 | 〒599-8273 大阪府堺市中区深井清水町3985番 HS深井ビル1F-B号室 |
アクセス | 泉北高速鉄道線「深井駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 歯科 |