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矯正歯科の費用は医療費控除の対象? 税理士が控除条件や申請の流れを解説

 更新日:2023/10/17
矯正歯科の費用は医療費控除の対象? 条件や申請の流れを解説 いくら戻る?

矯正歯科の費用は数十万円単位となることも多いため、「医療費控除の対象になったら……」と考える人も多いでしょう。では、矯正歯科の費用を医療費控除の対象とすることはできるのでしょうか? また、医療費控除の対象となる場合、どのような費用を控除対象として計上することができるのでしょうか? そこで、ごちょう税理士事務所の牛腸真司さんに、矯正歯科費用の医療費控除について解説してもらいました。

松井 潔

監修税理士
牛腸 真司(税理士)

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税理士。立命館大学卒業(2000年)後、一般製造業ベンチャー勤務を経て2011年に税理士登録。2015年千葉県税理士会松戸支部登録。2023年A-connect税理士法人に改組。法人の税務申告から個人の資産税対策まで幅広い業務に携わる。

医療費控除とその対象となる主な費用

医療費控除とその対象となる主な費用

編集部編集部

そもそもの医療費控除について教えてください。

牛腸 真司さん牛腸さん

医療費控除とは、自分や一定の親族の分も含めて、1月1日から12月31日までの間に支払った医療費の合計額が一定の基準額を超える場合に、確定申告を行うことで基準額を超過して支払った分の医療費が課税対象の所得から控除される制度です。原則として、1年間に支払った医療費のうち医療費控除の対象となる金額が多いほど、その年分の所得にかかる所得税が安くなるということになります。

編集部編集部

矯正歯科の費用が医療費控除の対象となる条件は?

牛腸 真司さん牛腸さん

矯正歯科の費用の中には、医療費控除の対象にならないものもあれば、医療費控除の対象となるものもあります。受けようとしている治療が医療費控除の対象となるかどうか知りたい場合は、そのクリニックの医師などにあらかじめ相談してみるとよいでしょう。矯正歯科の費用が医療費控除の対象となるための主な条件は、以下のとおりです。

  • 年間の医療費が原則として10万円を超えること
    大前提として、医療費控除は少しでも医療費を支払ったら必ず受けられるようなものではありません。医療費控除を受けるには、年間の医療費が10万円(その年の総所得金額などが200万円未満の人は総所得金額などの5%)を超えていることが必要です。そのため、対象年に発生した医療費の総額がこの金額を超えない場合は、矯正歯科の内容にかかわらず医療費控除を受けることはできません。
  • 年齢や目的などからみて歯科矯正が必要と認められること
    矯正の費用が医療費控除の対象となるかどうかは、対象者の年齢や目的などから判断されます。たとえば、容貌を美化するために行う矯正歯科の費用は、医療費控除の対象外です。一方、発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正など、治療が必要と認められる場合の費用は医療費控除の対象になります。

編集部編集部

では、どのような費用が医療費控除の対象となるのでしょうか?

牛腸 真司さん牛腸さん

矯正歯科の費用が医療費控除の対象となる場合であっても、そのクリニックに通うための自家用車のガソリン代などは医療費控除の対象とはなりません。医療費控除の対象となる主な費用は次のとおりです。

  • 診察代や治療代
    医師や歯科医師による診療や治療の対価として支払う費用は、医療費控除の対象となります。ただし、クリニックからの請求とは別途任意に支払う医師への謝金(報酬)などは、医療費控除の対象とはなりません。
  • 治療に必要な医薬品の購入対価
    治療や療養に必要な医薬品の購入対価は、医療費控除の対象となります。一方で、ビタミン剤など、病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費控除の対象となりません。
  • 矯正器具の調整料や処置料
    歯科矯正では、矯正器具やその調整料、処置料が発生します。矯正歯科の費用が医療費控除の対象となる場合、これら治療に必要な費用も医療費控除の対象となります。
  • 通院費
    通院にかかる交通費のうち、電車やバスなどの公共交通機関の利用費で通常必要な範囲のものは医療費控除の対象となります。一方、タクシー代を医療費控除の対象とすることができるのは、電車やバスなど公共交通機関が利用できない場合に限定されます。また、自家用車のガソリン代を医療費控除の対象とすることはできません。

クレジットカードなどで払った場合も医療費控除は受けられる?

クレジットカードなどで払った場合も医療費控除は受けられる?

編集部編集部

クレジットカード払いでも医療費控除は受けられますか?

牛腸 真司さん牛腸さん

矯正歯科の費用は高額となることが多いため、支払いにクレジットカードやデンタルローンを利用する場合もあるでしょう。矯正歯科の費用をクレジットカードやデンタルローンで支払う場合であっても、医療費控除を受けることは可能です。クレジットカードやデンタルローンで支払ったことを理由に、矯正歯科の費用が医療費控除の対象から外れることはありません。

編集部編集部

矯正歯科の費用をクレジットカードで支払う場合の医療費控除の注意点を教えてください。

牛腸 真司さん牛腸さん

矯正歯科の費用をクレジットカードやデンタルローンで支払う場合、医療費控除の適用を受ける際は次の2点に注意が必要です。

  • ローン契約が成立した年の医療費控除の対象となる
    クレジットカードやデンタルローンで矯正歯科の費用を支払う場合、信販会社などからクリニックに治療代が立替払いされたとき(カードを利用したときやデンタルローン契約が成立したとき)と、実際に患者側がローンを返済する時期やカードの引き落とし日との間にズレが生じます。治療を受けた時期によっては、たとえば令和5年中に受けた矯正歯科費用のローン返済やクレジットカードの支払いが、令和6年以降となる場合もあるでしょう。その場合であっても、その矯正歯科費用は、信販会社などからクリニックに治療代が立替払いされた(患者がカードやローンを利用した)年分の医療費控除の対象となります。なお、デンタルローンの金利や手数料は、医療費控除の対象になりません。
  • デンタルローンの契約書や信販会社の領収書が医療費支出の証明書となる
    クレジットカードやデンタルローンで医療費を支払う場合、患者の手元に歯科医の領収書がないこともあります。この場合、デンタルローンの契約書や信販会社(クレジットカード会社)の領収書が、医療費を支出したことの証明書類となります。

医療費控除の計算方法

医療費控除の計算方法

編集部編集部

医療費控除はどのように計算するのでしょうか?

牛腸 真司さん牛腸さん

以下に順を追って解説します。

  • 1年間で支払った医療費を合計する
    はじめに、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費の領収証を用意し、金額を合計します。ここでは、医療費控除の対象となる1年間の医療費の合計額が100万円であったと仮定して説明します。
  • 保険金などで補填された金額を差し引く
    医療費の中には、生命保険金や高額療養費、出産育児一時金などで補填されるものもあるでしょう。支払った医療費のうち、これらによって補填されたものがある場合、支払った医療費から保険金などで補填された金額を差し引きます。例のケースにおいて保険金などで補填された金額が30万円である場合の計算結果は、次のようになります。

    ● 100万円(医療費の合計額)-30万円(保険金などで補填された額)=70万円

  • 一定金額を差し引く
    計算をした金額から、一定額を差し引きます。差し引くべき一定額は、次のいずれかの金額です。
    ● 原則:10万円
    ● その年の総所得金額などが200万円未満の場合:総所得金額などの5%

    原則のケースである前提で算定すると、例の場合における医療費控除の金額は、次のようになります。
    ● 70万円-10万円=60万円
    この60万円をほかの所得から差し引き、所得税額を算定します。なお、給与所得者の場合、毎月の給与から所得税が源泉徴収されていることが一般的です。そのため、確定申告をして医療費控除の適用を受けることで、その年分の所得金額が少なくなり、いったん徴収されていた税金の一部が還付されます。

医療費控除の申請の流れ

医療費控除の申請の流れ

編集部編集部

続いて、医療費控除の申請の流れを教えてください。

牛腸 真司さん牛腸さん

医療費控除を受けるための一般的な流れは次のとおりです。

  • 医療費明細書を作成する
    はじめに、対象となる医療費の領収証を取りまとめ、「医療費控除の明細書」を作成します。医療費明細書は国税庁のホームページでダウンロードすることが可能です。なお、e-Tax(電子申告)のシステム上で直接、医療費明細書を作成することもできます。また、国税庁のホームページには医療費集計フォームが掲載されており、医療費の数(領収証の枚数)が多い場合はこのフォームを使うと集計がスムーズです。なお、医療保険者から交付を受けた医療費通知がある場合は、医療費通知を添付することによって医療費明細書の記載を簡略化することができる場合があります。
  • 確定申告書に記入し提出する
    医療費明細書が作成できたら、確定申告書を作成します。給与所得者である場合、勤務先から配布される源泉徴収票を確認しながら作成しましょう。確定申告の期限は、原則として対象年の翌年2月16日から3月15日までです。還付の場合は対象年の翌年1月1日以降5年間以内に申告すれば問題ありませんが、申告が遅くなると失念する可能性が高くなるうえ、数年分をまとめて申告することには手間もかかるため、早期に申告することをおすすめします。確定申告は管轄の税務署へ持ち込んだり郵送したりして行うこともできますが、e-Taxを使ってオンラインで行うことも可能です。
  • 還付金の振込を確認する
    確定申告が還付申告である場合、申告後1か月から1か月半程度で還付金が振り込まれます。また、e-Taxで申告する場合、申告後3週間程度で還付されることとされています。申告後おおむねこの程度の期間が経過したら、還付先として指定した口座を確認して振り込みを確認しておきましょう。ただし、これらの期間はあくまでも目安であり、状況によってはこれ以上の期間がかかることもあります。

編集部編集部

最後に、Medical DOCの読者にメッセージをお願いします。

牛腸 真司さん牛腸さん

年齢や目的などからみて矯正が必要と認められる場合、矯正歯科の費用は医療費控除の対象となります。矯正歯科の費用は高額となることも多いため、医療費控除の対象となる場合は忘れずに確定申告を行ってください。矯正歯科の費用が医療費控除の対象となるかどうか判断に迷う場合は、治療を受けるクリニックや医師にあらかじめ確認し、相談するとよいでしょう。

編集部まとめ

なにかと難しそうに見えてしまい、「わからないから」で済ませてしまいがちな人もいるかもしれません。今まで取り組んでこなかった人は、本記事を参考に矯正歯科費用の医療費控除を行ってみてはいかがでしょうか。