「マイクロスコープ」を歯科治療で使うメリットを歯科医が解説 導入している歯科医院の探し方
歯科医院のホームページで設備紹介を見ると、近年は「マイクロスコープ」という機器の名前をよく目にすると思います。マイクロスコープによる歯科治療は、従来と比較してどのように変わるのか気になりますよね。歯科医院の選び方のポイントなどと一緒に、「大塚歯科第3ビル診療所」の大塚先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
大塚 淳平(大塚歯科第3ビル診療所)
目次 -INDEX-
マイクロスコープとは? マイクロスコープを使うと治療はどう変わる?
編集部
マイクロスコープとは、どのような医療機器なのでしょうか?
大塚先生
マイクロスコープは、治療部位を拡大する医療用の顕微鏡です。歯科治療のほかにも、医科の分野では耳鼻咽喉科や眼科、脳神経外科、心臓外科など幅広い領域で使用されています。拡大率は機種によって異なりますが、最大で24倍まで視野を拡大することができます。
編集部
マイクロスコープは肉眼と比べて、どのような点が違ってくるのでしょうか?
大塚先生
一番の違いは、肉眼で見るときよりも圧倒的に情報量が多くなる点です。先ほど、拡大率は「最大で24倍」という話をしましたが、これを我々が見る2次元に換算すると縦×横でおよそ400倍以上も情報量が増えることになります。また、マイクロスコープにはLEDライトが搭載されているので、通常では光が届かない部分でもはっきり見えるのも大きな特徴です。
編集部
実際の治療はどのような変化がありますか?
大塚先生
視野が明瞭になることで、肉眼では見えなかった感染源の取り残しや歯の小さなヒビなどの見逃しが少なくなります。肉眼の治療でむし歯を取り切ったつもりでも、マイクロスコープで見ると取り残しが見つかったというのは意外と少なくありません。マイクロスコープはこのような人間の目の限界をフォローして、治療の精度を飛躍的に向上させます。
編集部
マイクロスコープは、主にどのような治療で用いられているのでしょうか?
大塚先生
マイクロスコープの活用は多岐にわたりますが、その中でもとくに大きく貢献しているのが「根管治療」と呼ばれる歯の根っこの治療です。そのほかに、歯周外科やインプラント手術などでも活用されています。
マイクロスコープを使った歯科治療のメリット・デメリット
編集部
歯科治療にマイクロスコープを使うと、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
大塚先生
先述したとおり、歯の内部の細部まで確認できるようになるため、感染源や歯の小さなヒビ、歯根の色の変化などを見逃さずに済みます。とくに、根管治療は肉眼だとどうしても感染源を取り残してしまいますが、感染源が残ってしまうと治療の予後も悪くなってしまいます。そのような意味において、マイクロスコープは感染源を目で確認しながら除去できるほか、実際に治療の効果が出ているのか、その質を見極められるのもメリットです。
編集部
実際、治療の予後も肉眼の治療よりもよくなるのでしょうか?
大塚先生
そのような実感はあります。マイクロスコープを使うと感染源を確実に除去したという確証が持てるので、仮に良好な予後が得られなかった場合でも根拠を持って次の治療に進むことができます。無駄な治療を繰り返す心配がないのも、マイクロスコープの大きなメリットです。
編集部
そのほかに、マイクロスコープを使用するメリットはありますか?
大塚先生
歯を削る量を最小限にして、健康な歯質をできるだけ多く残すことができます。肉眼での治療ではむし歯の取り残しを警戒するあまり、歯を余分に削ってしまうことも少なくありません。しかし、マイクロスコープを使えば、このような歯の削りすぎを防ぐことができます。選択的にむし歯だけを除去できるので健康な歯質が多く残り、それが結果的に歯の延命につながるのもマイクロスコープのメリットでしょう。
編集部
では反対に、マイクロスコープを使った治療にデメリットはありますか?
大塚先生
患者さんにとってのデメリットはとくにないと思います。強いて言うなら、マイクロスコープ下の歯科治療は多くが保険適用外になるため、治療費が従来よりも高くなる点です。保険適用でマイクロスコープを使用できるケースもありますが、現状だと症例が限られてしまうのが患者さんにとってはデメリットかもしれませんね。
マイクロスコープを導入している歯科医院の正しい選び方
編集部
実際のところ、マイクロスコープはどの程度普及しているのでしょうか?
大塚先生
正しいデータは公表されていませんが、現在のところ国内の歯科医院における普及率は10%程度と言われています。かつては3%ほどでしたが、近年は補助金制度なども活用できるようになってきているので、今後ますます導入する歯科医院は増えてくると思います。
編集部
マイクロスコープがさらに普及すれば、近くの歯科医院で治療が受けられる可能性も高くなるので、患者側にとっては嬉しいニュースです。
大塚先生
そうですね。ただし、ここで注意しておきたいのはマイクロスコープにも様々な種類が合って、機種によって性能も大きく異なる点です。単に導入していればいいということではなく、どんな機種のマイクロスコープを使っているかも、今後は重要になってくると思います。
編集部
そのほかに、マイクロスコープを導入する歯科医院を選ぶ際に注意したいことはありますか?
大塚先生
マイクロスコープをどのぐらい活用しているか、あらかじめよく確認しておく必要があります。設備欄にマイクロスコープと記載していても、実際のところ診療では使っていない歯科医院も少なくありません。したがって、どのくらい有効活用しているのかもホームページなどでチェックしておきましょう。
編集部
院内にマイクロスコープが設置されていても、それが実際に使われているかはまた別の問題なのですね。
大塚先生
実際、マイクロスコープを使うと従来の治療よりも時間と手間がかかります。マイクロスコープ下の治療は事前準備を要しますし、治療器具を細かく繊細に動かしていくため最低でも1時間ほど治療時間が必要です。歯科医院によってはその時間が確保できず、活用できていないところも少なくないようです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大塚先生
もし、私が患者さんの立場だったら「マイクロスコープなしの治療は希望しない」と断言できます。なぜなら、一度きりの人生において自分の歯で美味しく食事をすることは何ものにもかえがたい幸せの1つだからです。歯は治療を重ねるごとに寿命が短くなるため、必要最小限の処置で確実に治すことが何より重要になります。そのような意味において、マイクロスコープは数ある医療機器の中でも非常に優秀で、歯の温存につながる有効な手段と言えるでしょう。
編集部まとめ
マイクロスコープを使った歯科治療は肉眼の治療と比べて、むし歯やそのほかの感染源の取り残しがないほか、歯のヒビなど小さな病変の見逃しも少なくなります。患者さんにとっては「1回の治療が確実になる」という点が治療に対する安心材料となるでしょう。一方で、マイクロスコープを導入していても、それがうまく活用できていない歯科医院も少なくないようです。ホームページで情報を収集する際は、マイクロスコープの設置の有無だけでなく、治療実績や活用例などもチェックしておきましょう。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |