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治療しても「むし歯」を繰り返しやすいのはナゼ? 二次むし歯の原因や再発予防、治療を受ける際のポイントを歯科医が解説

 公開日:2023/04/30
治療しても「むし歯」を繰り返しやすいのはナゼ? 二次むし歯の原因や再発予防、治療を受ける際のポイントを歯科医が解説

「昔治療した歯がまたむし歯になった」「同じ歯が何度もむし歯になる」など、繰り返すむし歯にお悩みではないでしょうか。そこで、治療した歯が再びむし歯になる「二次むし歯」の原因や特徴、さらにその問題点やむし歯を食い止める方法などをくらた歯科医院の倉田先生に聞きました。

倉田 友宏

監修歯科医師
倉田 友宏(くらた歯科医院)

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徳島大学歯学部卒業。医療法人にて勤務医・院長の経験を経たのち「くらた歯科医院」の院長に就任。予防治療をベースにインプラント治療・矯正治療など、多角的で包括的な歯科診療を提供している。日本口腔インプラント学会、日本顎咬合学会、ITI(International Team for Implantology)、日本メタルフリー歯科学会所属、ILSC即時荷重研究会理事・インストラクター。

治療をしたのになぜむし歯を繰り返す? むし歯が再発する原因や二次むし歯の特徴を歯科医が解説

治療をしたのになぜむし歯を繰り返す? むし歯が再発する原因や二次むし歯の特徴を歯科医が解説

編集部編集部

一度、治療をした歯が再びむし歯になってしまうのはどうしてでしょうか?

倉田 友宏先生倉田先生

治療した歯に再び発生するむし歯を一般に「二次むし歯(う蝕)」と言います。二次むし歯は健康な歯にできるむし歯よりもリスクが高い。つまり最初のむし歯よりもそうなりやすいのが特徴です。

編集部編集部

健康な歯よりも治療した歯のほうがむし歯になりやすいのはなぜですか?

倉田 友宏先生倉田先生

むし歯を「治療した」といっても、それはあくまでむし歯がそれ以上進行しないように悪くなった部分を削り、そこを人工物で補っているに過ぎません。例えば、これが皮膚にできた切り傷であれば、時間が経てば元通りの綺麗な皮膚に戻ります。しかし、むし歯の場合はそうではなく、皮膚でいうなら表面がえぐれて中が見える状態のところに何かしらの人工物を入れるのと同じなわけです。このような治療後の状態と健康な皮膚を比べた場合、次に感染しやすい・トラブルが起こりやすいのはどちらだと思いますか?

編集部編集部

皮膚の表面に人工物が入っている状態を想像すると、「治療後」のほうが感染やトラブルのリスクは高いように思います。

倉田 友宏先生倉田先生

そうですよね。むし歯治療をした歯というのはまさにこれと同じ状態なわけです。健康な歯は「エナメル質」という硬いバリアで守られていますが、皮膚とは違ってこのバリアは一度壊れてしまうと元に戻ることがありません。したがって、むし歯でエナメル質のバリアが壊れた歯は、仮に治療をしても健康だったときよりもむし歯になるリスクがはるかに高くなります。

編集部編集部

むし歯は「治療をした」といっても厳密な意味で「元の状態に戻った」とは言えず、次にむし歯になるリスクが以前よりも高くなるわけですね。

倉田 友宏先生倉田先生

その通りです。むし歯でできた穴は埋まって見た目には綺麗ですが、その人工物と自分の歯の間には目には見えないすき間や段差があって、そういうところに細菌は増殖していきます。また、環境変化の激しいお口の中では、熱収縮や化学変化などによる詰め物の変形や劣化、装着時に使用したセメントの劣化は避けられません。したがって、普通に考えれば、治療した部位が同じ状態を長く保ち続けるのは非常に難しいわけです。さらにそこに、「ダラダラ食べる」「歯を磨かない」「糖分の多いジュースを飲む」などの習慣が継続されれば、むし歯を繰り返すことは避けられないでしょう。

むし歯を繰り返すとどうなってしまう? 二次むし歯の問題点について

むし歯を繰り返すとどうなってしまう? 二次むし歯の問題点について

編集部編集部

治療をしても繰り返すむし歯には、どのような問題がありますか?

倉田 友宏先生倉田先生

先ほどお話ししたように、むし歯は治療をしても元の健康な状態には戻りません。したがって、同じところがむし歯を繰り返せば、歯の神経に向かって歯質がどんどん削られ、最終的に神経が残せなくなってしまいます。最近の研究では、歯の神経を取るとその後の寿命は平均で11年程度と言われていますから、神経を取るということはおのずとその歯の寿命を縮めることにもつながります。

編集部編集部

歯の神経を取ると、なぜ寿命が短くなってしまうのでしょうか?

倉田 友宏先生倉田先生

神経を取ると、以後その歯には酸素や栄養が行き届かなくなります。そうすると、歯は枯れ木のように次第にもろくなりますから、強い衝撃が加わると割れたり折れたりすることが多くなってしまうわけです。実際に、20年前と比べると破折で歯を失う人が増えています。

編集部編集部

つまり、むし歯は治療を繰り返すほど、その歯を失う可能性が高くなるのですね。

倉田 友宏先生倉田先生

その通りです。くわえて、詰め物や被せ物にできる二次むし歯に関しては、ある程度大きくならないとレントゲンで発見するのが難しいのも問題点の1つです。歯科医師であっても、プラスチックの詰め物や銀歯の中の状態を正確に把握するためには、その詰め物や銀歯を外すほか方法がありません。ただ、詰め物を外すこと自体も歯にはダメージとなるため、二次むし歯はそれを早期に発見するのも健康な歯と比べてハードルが高いといえます。

二次むし歯の予防は難しい? 繰り返すむし歯をストップする対策や治療を受ける際のポイント

二次むし歯の予防は難しい? 繰り返すむし歯をストップする対策や治療を受ける際のポイント

編集部編集部

繰り返すむし歯を予防するには、どのような点に注意したらよいでしょうか?

倉田 友宏先生倉田先生

まずは、最初のむし歯で「なぜ、むし歯ができたのか」という原因をしっかり突き止め、それに対するアプローチの方法を歯医者さんにアドバイスしてもらうことが大切です。むし歯はその原因が食習慣なのか、生活習慣なのか、さらに歯並びなのかで予防法や対策も変わってきます。したがって、そのあたりを歯医者さんでしっかり説明を受けて、自分にできること・やるべきことを確認しておきましょう。

編集部編集部

まずはむし歯の原因を突き止めることが肝心なのですね。そのほかに、個人でできる対策はありますか?

倉田 友宏先生倉田先生

先ほどもお話ししたように、二次むし歯は健康な歯にできるむし歯に比べ発見が遅れやすい傾向があります。したがって、治療が終わっても歯医者さんで定期的にお口の中をチェックしてもらう、いわゆる「歯科定期健診」を継続していくことが重要です。繰り返しになりますが、むし歯は治療をしても元の状態に戻ることはなく、むしろ治療したことでむし歯のリスクは以前よりも高くなります。したがって、歯医者さんでの定期的なチェックで小さな変化も見逃さないようにしていきましょう。

編集部編集部

詰め物や被せ物では「セラミック」という材質がむし歯になりにくいとよく聞きます。むし歯を繰り返す人がこのような材質を選ぶのも効果はあるのでしょうか?

倉田 友宏先生倉田先生

あると思います。セラミックは保険適用の治療で使用される銀歯(金属)や白いプラスチック(レジン)に比べ熱による膨張・収縮が起こりにくく、さらに劣化しにくい素材です。したがって、むし歯の大きさによってはプラスチックや銀歯よりもセラミックのほうが利点の多い場合もあるでしょう。ただし、セラミックにもデメリットはあるので、「どんなケースでもセラミックが良い」というわけではありません。むし歯になりやすい方がセラミックにする利点は確かにありますが、本当にセラミックにしなければならないかどうかは歯科医とよく相談して決めていく必要があります。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

倉田 友宏先生倉田先生

むし歯で治療した歯は、5年ほどでやり直しが必要になるとも言われています。これは詰め物の材質やむし歯の大きさにもよりますが、いずれにしろ治療した歯は「健康な歯よりも条件が悪い」という点に変わりはありません。したがって、治療をしてそれで終わりとは思わず、自身にはそういうリスクがあると思ってセルフケアや歯科医院の定期メンテナンスはしっかり続けていきましょう。

編集部まとめ

むし歯は治療をしても元の健康な状態には戻らず、削ったところを人工物(詰め物)で補うしか方法がありません。そのため、治療した歯は健康な時よりもむし歯になるリスクが高くなり、これがむし歯を繰り返す原因になっています。繰り返すむし歯を食い止めるためには、はじめのむし歯でその原因を特定し、さらに治療後も定期的なチェックを受けることが大切です。自身のむし歯の原因がどこにあるのか、歯医者さんにしっかり聞いていきましょう。

医院情報

くらた歯科医院

くらた歯科医院
所在地 〒399-4511 長野県上伊那郡南箕輪3444
アクセス JR飯田線「北殿」駅から徒歩5分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師