インプラントで「痛い」はもう古い? 切らない・腫れない「フラップレスインプラント」を歯科医が解説
インプラントにしたいけど、なかなか一歩を踏み出せない理由、その1つに「インプラント治療には手術が必要」という点があります。「手術」と聞くと歯ぐきを切ったり、縫ったりするのも不安ですが、術中・術後の痛みや腫れも気になるところです。そこで、歯ぐきを切らず、痛みや腫れも少ない「フラップレスインプラント」について、ウィズ歯科クリニックの小澤先生に話を聞きました。
監修歯科医師:
小澤 勇介(医療法人社団オハナ会 ウィズ歯科クリニック)
目次 -INDEX-
インプラント手術は「痛い」って本当? 痛み・腫れはいつまで続く?
編集部
実際に、インプラント手術は痛いのでしょうか?
小澤先生
インプラント手術については手術前に局所麻酔をしっかり効かせてから行うため、術中に痛みを感じることはほとんどありません。歯科医院によっては、手術に1時間以上かかるケースや恐怖心が強い方に対して「静脈内鎮静法」という、麻酔を同時に行う場合もあります。静脈内鎮静法を用いると「うたた寝」をしているような感じになり、リラックスした状態で手術を受けていただくことができます。
編集部
手術中は痛くないと聞いて少し安心しました。一方で、術後の痛みや腫れはどうでしょうか?
小澤先生
一般的なインプラント手術は歯ぐきを切開するため、術後に腫れや痛みがでやすくなります。個人差はありますが、痛みのピークは術後1~2日、腫れは術後3日ほどです。
編集部
歯ぐきを切開すると、痛みや腫れがでやすくなるのですね。
小澤先生
歯ぐきを切ったり骨から剥がしたりすると、どうしても細かい血管を傷つけることになってしまいます。これらの血管が歯ぐきを閉じた後に内出血を起こし、術後の「腫れ」や「痛み」につながってしまうわけです。ただ、症状の多くは1週間程度で治まりますし、痛み止め(鎮痛剤)の服用で痛みを和らげることができます。
切らない「フラップレスインプラント」とは? インプラントなのに痛くない・腫れない仕組みやメリットを歯科医が解説
編集部
「フラップレスインプラント」は痛みが少ないと聞きますが、どのような治療なのでしょうか?
小澤先生
従来のように「歯ぐきを切って開く」という処置は行わずに、インプラントを骨に埋め込む治療法です。パンチのような器具で歯ぐきに穴を空け、そこにドリルを通してインプラントを埋入します。
編集部
歯ぐきを切らずにすむというのは、嬉しいメリットですね。ほかにもメリットはありますか?
小澤先生
従来の手術と比べて出血も少ないので、術後の腫れや痛みもほとんどありません。また、手術時間もインプラント1本あたり10~15分程度と大幅に短縮されるため、身体的な負担も少なくなります。日常生活においても、手術の翌日以降から普段通りの生活を送れるのもメリットです。従来の手術では術後3日ほど血行が良くなる行為を控えていただきますが、フラップレスインプラントは当日のみ注意していただければ、翌日以降とくに制限はありません。
編集部
1つ気になるのですが、歯ぐきを開かなくても手術を正確に行えるのでしょうか?
小澤先生
おっしゃる通り、フラップレスインプラントは直接骨を見てインプラントを埋入するわけではないので、事前に「サージカルガイド」という装置を作製する必要があります。
編集部
「サージカルガイド」とはどのような装置ですか?
小澤先生
簡単にいうと、インプラントを安全かつ正確に埋め込む「ものさし」のようなものです。フラップレスインプラントでは事前にCT画像を用いて手術のシミュレーションを行い、インプラントを埋入する位置や深さ、角度を正確に測定します。そのシミュレーションの結果を正確におとし込んで作られたのが「サージカルガイド」というマウスピース型の装置です。手術の際に患者さんのお口に装着し、目印に沿ってドリルを挿入すると、シミュレーション通りにインプラントを埋入することができます。
編集部
「サージカルガイド」があるから、歯ぐきを切らなくても正確に手術が行えるわけですね。
小澤先生
サージカルガイドを用いたフラップレスインプラントの大きなメリットは、手術の精度が格段に上がることです。フリーハンドで行う手術はどうしても1~2mmほど誤差が生じてしまいますが、インプラントの場合はこのわずかな差がとても重要になるシーンがあります。とくに神経や血管が近い場所にインプラントを埋入する場合は、その誤差が麻痺など、重篤な後遺症を引き起こすおそれもあります。サージカルガイドはこのような術中のトラブルを回避し、インプラント手術を安全に進めるうえでも大きな役割を担っているわけです。
痛くないフラップレスインプラントの注意点やデメリットも聞いておきたい!
編集部
フラップレスインプラントにデメリットはありますか?
小澤先生
サージカルガイドの作製に2週間ほどかかるため、すぐに手術ができない点が挙げられます。また、サージカルガイドに別途費用がかかる(費用相場:5~10万円ほど)ため、通常のインプラント手術よりもコストが高くなります。
編集部
フラップレスインプラントは、希望すれば誰でも受けられますか?
小澤先生
必ずしもすべてのケースでフラップレスインプラントができるわけではありません。この方法は術中に骨を直接目で確認できないため、事前の検査で骨の状態に不安要素のあるケースでは適応できない場合があります。具体例を挙げると、インプラントを埋入する部位の骨の量が少ない・厚みが足りないといったケースです。また、通常のインプラント手術と同じく糖尿病や高血圧、心臓疾患などの持病がある方は病状によって手術を行えない場合もあります。くわえて、フラップレスインプラントはどの歯科医院でも受けられる処置ではないので、その点も注意が必要です。
編集部
フラップレスインプラントを希望する場合は、歯科医院選びも重要になるわけですね。
小澤先生
フラップレスインプラントの実施にあたっては、CT装置やシミュレーションソフト、サージカルガイド用の外科器具など、専用機器の導入が必須となります。したがって、治療をご希望の際は、受診する歯科医院がフラップレスインプラントに対応しているかをチェックしておくことが重要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
小澤先生
インプラントは費用面にくわえ、外科手術をともなうことで治療を躊躇される方も少なくありません。フラップレスインプラントは、このように手術に対する不安感や恐怖心の強い方にぜひおすすめしたい治療法です。当院でもフラップレスインプラントを受けに来院された方から、「こんなに楽だったら、もっと早くに受けておけばよかった」という声を多くいただいています。インプラントにしたいけど手術が心配という方は、ぜひ一度フラップレスインプラントをご検討ください。
編集部まとめ
歯ぐきを切らない・縫わない「フラップレスインプラント」は術後の腫れや痛みも少なく、手術時間も短いのがメリットです。これまで「手術が怖い」「痛みや腫れが心配」という理由でインプラントをためらっていた方にとっては、選択肢の幅が広がる画期的な治療といえます。ご興味のある方はぜひホームページ等を参考に、専用設備の整った歯科医院で一度相談してみましょう。
医院情報
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アクセス | JR常磐線「南柏」駅西口より徒歩15分 JR常磐線「柏」駅より徒歩18分 |
診療科目 | 歯科、小児歯科、口腔外科 |