インプラントの人工歯って、どうやって選べばいいの?
インプラント治療とは、何らかの理由で歯がなくなってしまった場所に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を作ってかみ合わせを回復する治療です。このインプラント治療に使う人工歯にはいろいろな種類がありますが、どうやって選べばいいのでしょうか。レイクタウンデンタルケアクリニック院長の伊藤宏太郎先生に教えていただきました。
監修医師:
伊藤 宏太郎(レイクタウンデンタルケアクリニック 院長)
鶴見大学歯学部を卒業後、同大学の歯学部補綴学第二講座に入局、審美治療、インプラントを専門とし、診療科助手として勤務。ブローネマルクインプラント、リプレイスインプラント、GCインプラントの認定医を取得。スウェーデンのマルメ大学にてインプラント研修を受ける機会があり、北欧の最新のインプラント技術を習得。日本抗加齢医学会専門医。日本補綴歯科学会、日本口腔インプラント学会、青葉臨床研究会、抗加齢歯科医学研究会の各会所属。
現在の主流は、オールセラミックとジルコニアセラミック
編集部
まず、インプラント治療について簡単にご説明いただけますか?
伊藤先生
例えば「虫歯がひどくて歯を抜いた」など、何らかの理由で歯を失った場合に選択できる治療の一つです。歯を抜くとそこには骨しか残りません。その顎の骨に人工の歯根を埋め込み、さらにその上に人工の歯を作ってかみ合わせを回復してあげるのが、インプラント治療です。
編集部
歯がなければどのような状態でもインプラント治療は可能なのでしょうか?
伊藤先生
基本的には可能ですが、歯が失われた後の骨の残り具合によります。骨自体がなくなっているとできない場合もありますし、骨を足すことで可能な場合もあります。
編集部
インプラントの構造や材質について教えて下さい。
伊藤先生
インプラントは、骨の中に埋まる根っこの部分と、その上の人工歯の部分に分かれているのが特徴です。歯の根っこの部分には主にチタンやチタン合金が使われていますが、上部の人工歯の部分に関してはいろいろな種類があり、用途や見た目の好みなどによって選ぶことができます。
編集部
人工歯の部分に使われる材質には、具体的にどのようなものがありますか?
伊藤先生
今は「オールセラミック」や「ジルコニアセラミック」を選ばれる人が多いですね。特にオールセラミックは、見た目、色、形が自由に変えられるし、何といっても汚れがつきにくいのが一番の利点です。金属ではないので体に悪影響もなく、非常にメリットの多い材質です。
編集部
オールセラミックにデメリットはありますか?
伊藤先生
「脆性素材」のため少し衝撃に弱い点でしょうか。オールセラミックは、陶器と同じガラス素材。陶器よりは丈夫に作られていますが、少しもろいという特徴はあります。硬さはあるのでおせんべいなどもかむことができますが、かみ合わせがものすごく強い人などは欠けたり割れたりしてしまうことがあります。
編集部
ジルコニアセラミックのメリットとデメリットについてもお聞かせください。
伊藤先生
セラミックの一種で強度があるのが特徴です。「割れないセラミック」といわれているように密度が濃く丈夫なので、あまり欠けたり割れたりすることはありません。ただし、オールセラミックに比べて透明感は出にくいので、前歯は審美性を重視してオールセラミックを入れ、奥歯は機能性重視でジルコニアセラミックを使うというケースが多いですね。
他の素材が選ばれなくなっているワケ
編集部
セラミックで他に選べる素材はないのでしょうか?
伊藤先生
「ハイブリッドセラミック」という素材があります。オールセラミックやジルコニアセラミックに比べ数万円価格が抑えられる点が大きなメリットで、一世を風靡した時代もありました。しかし、今はだんだん使われなくなってきています。
編集部
なぜ選ばれにくくなっているのでしょうか?
伊藤先生
これは、プラスチックとセラミックの中間の素材で、特徴としてはプラスチックに近いものなのです。最初はきれいなのですが、2~3年経つと経年劣化で水分を吸い、ツヤがなくなったり変色したり、徐々に表面にカビやばい菌が生えてきてしまう性質があります。セラミックに比べ強度も劣ります。
編集部
では、銀歯など金属はどうでしょうか? 安く治療ができそうなイメージがあります。
伊藤先生
確かに、金属は割れないですし安く治療できるというのが一番のメリットです。ただ昨今、金属は人体に影響が出るといわれていますし、審美的な面からも入れたくないという人が増えています。汚れがつきやすいというデメリットもあるので、基本的にはおすすめはしていません。「メタルボンド」も最近は好まれない傾向にありますね。
編集部
メタルボンドとはどのような治療法なのでしょうか?
伊藤先生
30~40年前からある治療法で、金属の上にセラミックを焼き付けたものなのですが、セラミックが割れてきたり人工歯がすり減ってくると金属が見えてきてしまうのです。ジルコニアセラミックなどに比べて強度も落ちますし、先ほども申し上げましたが、昨今は金属アレルギーが問題視されているのでやはり敬遠されています。
価格はどれくらい? どんな医院がおすすめ?
編集部
価格の相場を教えて下さい。
伊藤先生
自費診療のため医院によって大きく価格設定は違いますが、人工歯にセラミックを使ったインプラントの場合は1本約40万円から50万円くらい、メタルボンドで35万円くらいが相場でしょうか。
編集部
オールセラミックとジルコニアセラミックで価格の違いはありますか?
伊藤先生
インプラントのアバットメント(人工歯と歯根部の間にある土台の部分)から全てジルコニアにすると値段が高くなりますが、人工歯の部分に関してはそんなに価格は変わりません。
編集部
相場からはずれる価格の場合、どういった要因が考えられますか?
伊藤先生
おそらく一つはメーカーの素材の違いだと思います。例えばスイスやスウェーデンの有名メーカーのインプラントは長年研究されてきた歴史と実績があるのでそれなりに高くなります。また、手術する際の麻酔方法や消毒方法、歯を作るときの型どりの方法、それに検査や保証などが価格に入るかどうかによっても価格は変わってくるでしょう。
編集部
10万円~20万円など極端に安いインプラントには何か問題があるのでしょうか?
伊藤先生
その価格ですと、実績のあるメーカーのインプラントが使われている可能性は低いのではないでしょうか。極端に安い価格で出している新興メーカーは最近多くなっていますが、最初はよくても後々問題が出てきたという話はよく聞きます。
編集部
具体的にはどんな問題が?
伊藤先生
例えば、人工歯との接続部分が破損したり、止めているネジがポキっと折れたり。また、術前のカウンセリングや検査、術後のメンテナンスなど、インプラント治療における重要な部分がおろそかになることも懸念されます。
編集部
どのような医院を選んだらよいのでしょうか?
伊藤先生
ドクターや歯科衛生士ときちんとお話ができるような医院がいいと思います。あとは専門性や治療技術の高さも重要です。例えば、オールセラミックやジルコニアセラミックはメーカーや作り方によって強度が違うのですが、専門性の高い医院ではそういった点にも気を配りしっかりしたものを作ってくれます。
編集部
経歴をチェックすることも大切ですか?
伊藤先生
そうですね。どこで勉強してきたかという点は見ておいた方がいいと思います。例えば、基礎を学んだかどうかよくわからない先生より、大学病院の口腔外科などで勉強してきた先生の方が確実でしょう。また、見極めは難しいですが、価格をウリにするなど医療というより商売になっているような医院は避けた方がいいかもしれません。
編集部まとめ
いろいろな種類があるインプラントの人工歯ですが、今の主流はオールセラミックやジルコニアセラミックだそうです。ハイブリッドセラミックのように汚れがつきやすいものは徐々に使われなくなっており、金属アレルギーが問題視される昨今では金属を使ったものも敬遠されているようです。価格相場は1本40万円~50万円と決して安くはないですが、大切な歯を失い悩んでいる人は、一度インプラントを専門とする歯科医院に相談してみるといいかもしれません。
医院情報
所在地 | 〒343-0828 埼玉県越谷市レイクタウン3-1-1 イオンレイクタウンmori 2F |
アクセス | JR武蔵野線「越谷レイクタウン駅」徒歩1分 |
診療科目 | 歯科 |