あなたは「歯ぎしりの自覚がない」だけでは? 自分でチェックする方法や治療法を解説
知らず知らずのうちに癖になっている歯ぎしり。「自分はやっていない」と思っても、実は、多くの人が歯ぎしりの癖を持っています。歯ぎしりは歯にダメージを与えるだけでなく、全身に影響を与えることもあるそうです。歯科医院ではどんな治療を行うのでしょうか。シールズデンタルクリニックの大石知弘先生に教えてもらいました。
監修医師:
大石 知弘(シールズデンタルクリニック 院長)
2012年明海大学歯学部卒業。2013年明海大学歯学部付属明海大学病院臨床研修課程修了、明海大学歯学部付属明海大学病院歯周病科入局。2014年同科退局後、都内某歯科医院とさいたま市某歯科医院にて勤務。2018年シールズデンタルクリニック開院。「セルフケア向上による根本治療」をコンセプトに、一人ひとりに合った口腔内の環境改善法をコーディネート。地元である池袋を口腔内から日本一健康な地域にしたいと思い、この地に開院した。
歯ぎしりの原因は?
編集部
そもそも、なぜ歯ぎしりしてしまうのでしょうか?
大石先生
歯ぎしりをしてしまう理由は、さまざまです。まずは、骨格や噛み合わせの問題です。たとえば、上下の歯の噛み合わせが悪かったり、歯の収まりが悪かったりすると、歯ぎしりをすることがあります。また、1本だけ嚙み合わせの高さに差があって、ほかの歯と接触しているという状態も、歯ぎしりの要因になります。
編集部
ほかにはどんな理由があるのですか?
大石先生
ストレスがたまると、睡眠中に歯ぎしりをしてしまったり、普段気づかないうちに食いしばりをしてしまったりすることがあります。それから格闘技のように、無意識に歯を食いしばるようなスポーツをしている人も、睡眠中に日中の癖が出て、歯ぎしりをしてしまうことがあります。また、飲酒や喫煙も歯ぎしりの原因になります。
編集部
ストレスも歯ぎしりの原因になるのですね。
大石先生
女性に多いのですが、たとえば洗濯物を干しているときなど、家事をしているときに知らず知らずのうちに歯ぎしりをしている人がいます。そのため自覚がなくても、ふと「自分は歯ぎしりをしていないかな?」と意識を向けることが、予防につながります。
編集部
自覚なく歯ぎしりをしている人は、意外と多いのでしょうか?
大石先生
さまざまなデータがありますが、一説によると、日本人の約70%は歯ぎしりをしているとされています。歯ぎしりのなかには「ギリギリ」という音がするものもあれば、まったく音を立てないものもあります。そのため、自分はもちろん周囲の人にも気づかれにくい場合があります。
編集部
音を立てない歯ぎしりもあるのですね。
大石先生
「歯ぎしり」と一口にいっても、実際は3タイプあります。1つ目がグライディング。ギリギリ音を立てながら歯を擦り合わせるもので、もっとも多いタイプです。2つ目がクレンチング。これは食いしばりや噛み締めともいわれ、上下の歯を強く噛み込んでしまうものです。3つ目がタッピング。これは上下の歯がぶつかってカチカチと鳴るタイプのものです。
歯ぎしりをしていると、どんなデメリットがある?
編集部
歯ぎしりをしていると、体に影響があるのですか?
大石先生
まず、歯に対して大きなダメージを与えます。歯ぎしりをすることによって、詰め物が欠けたり、すり減ったりすることもありますし、さらに摩耗することで、歯がしみるようになったり、痛んだりすることもあります。ひどい場合は歯が割れるなど、破損することもあります。
編集部
ほかにはどのような問題があるのですか?
大石先生
歯ぐきや顎にも影響を与えます。たとえば、歯槽膿漏(しそうのうろう)、歯肉炎などの症状が現れますし、もっとひどい場合は、顎関節症になることもあります。
編集部
歯だけでなく、顎にまで影響を与えるのですね。
大石先生
それだけではありません。口や顎周辺だけでなく、頭痛、肩こり、腰痛、倦怠感などを引き起こすことがあります。また、顔まわりや顎のえらの筋肉が発達して、えらが大きくなるということもあります。反対に、歯ぎしりがよくなると片頭痛が改善されたり、筋硬直がなくなったりするので、治療の効果を実感しやすいと思います。
編集部
体のあちこちに影響を及ぼすのですね。歯科医院で治療を受けることはできるのですか?
大石先生
はい、できます。歯ぎしりに対する治療としてさまざまな手法が用意されていますが、中でも多くのケースで用いられるのが、ナイトガードによる治療です。これは、簡単にいえば「睡眠中だけ装着するマウスピース」。これをつけて眠ることで、歯ぎしりによる歯の摩耗や欠損を防げますし、また、歯ぎしりの回数も減らすことができます。
編集部
市販されているマウスピースを使用しても良いのですか?
大石先生
気をつけて欲しいのは、マウスピースの素材です。シリコン製のマウスピースの場合、確かに歯の磨耗を防ぐことはできますが、噛み応えがある分、かえって咀嚼筋を鍛えてしまうことになります。そのため当院では医療用プラスチックであるレジン製のものを使用しています。噛む力を適度に跳ね返す強度のものですね。
編集部
マウスピースによる治療は、保険が適用になるのですか?
大石先生
保険適用です。状態によりますが、治療にかかる費用は、だいたい数千円~1万円。4000〜5000円が平均です。
歯ぎしりをしていないか、自己チェック
編集部
無意識のうちに歯ぎしりをしている場合もあるのですよね。自分で気づく方法はありますか?
大石先生
たとえば日中、何かに集中しているときなど、ふと気づくと歯を食いしばっていたり、上下の歯を噛み込んでいたりすることはないでしょうか? また、朝、起きた時に顎や頬の筋肉が疲れていたり、張っていたりする場合は、就寝中に歯ぎしりや噛み込みをしていたのかもしれません。
編集部
それらを意識していれば、自覚することができそうですね。
大石先生
そのほか、歯がすり減っていたり、歯の根元が割れていたり、詰め物がよく取れたりする場合も、歯ぎしりをしている可能性があります。特に、犬歯がすり減っていたり、尖っていたり、丸くなっていたりする場合は要注意。また、歯ぐきと歯の境目がくさび状に欠損している場合も歯ぎしりをしているかもしれません。
編集部
そういった症状が見られたら、早めに歯科医院に相談した方が良いのですね。
大石先生
歯ぎしりは、大事な歯を失う原因になる可能性があります。また、噛み合わせを悪くする可能性もありますので、気になる場合は歯科医師に相談すると良いでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
大石先生
同じように歯ぎしりをしている人でも、歯にダメージを与えている人もいれば、まったく与えていない人もいます。そのため、歯ぎしりをしているからといって、絶対にマウスピースを装着しなければならないというわけではありません。ただし、歯ぎしりを治すだけで睡眠が深くなったり、頭痛が治ったり、QOL(生活の質)が上がることもあります。ぜひ歯ぎしりをしていることに気づいたら、まずは歯科医師にご相談ください。
編集部まとめ
自分ではなかなか気づきにくい歯ぎしり。特に歯ぎしりが起こりやすいのは、睡眠中です。家族など親しい人に指摘されたら、早めに歯科医師に相談を。症状がひどくなると、歯を失う原因になるので、できるだけ早めに対処するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-34-8 1F |
アクセス | 「池袋駅」JRメトロポリタン口より徒歩6分、地下鉄1b出口より徒歩5分 |
診療科目 | 一般歯科・小児歯科・矯正歯科・口腔外科・予防歯科・咬合治療・審美歯科・インプラント・歯周病・ホワイトニング |