ダイレクトボンディングとセラミック治療、どっちの方法でむし歯を治すのがおすすめ?
むし歯治療として、注目を集めている「ダイレクトボンディング」。従来のセラミック治療と比較して、どのような特徴があるのでしょうか。また、歯の状態に応じて、治療の向き不向きがあるのか。「坂寄歯科医院」の三木先生にお話を伺ってきました。
監修歯科医師:
三木 雄斗(坂寄歯科医院 院長)
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業後、新潟大学医歯学総合病院歯周病科にて勤務。その後、2017年12月に「坂寄歯科医院」の院長就任。取手市で3代続く歯科医院として地元の人の信頼を集める。「丁寧な説明」と「精密な治療」を二つの柱に、医療スタッフ自らが、「自分や家族に受けてほしい」と思えるような医療を提供している。日本メタルフリー歯科学会認定医。日本顕微鏡歯科学会、日本歯科保存学会の各会員。
「ダイレクトボンディング」と「セラミック治療」の特徴
編集部
まず「ダイレクトボンディング」とは、どのような治療ですか?
三木先生
ダイレクトボンディングは、多種類のプラスチックを直接お口の中で盛りつけて、不自然のない天然歯のような色や形を作る治療法です。多数の色調を重ね合わせて、治療跡が目立たない自然な歯を再現していくのが特徴で、主にむし歯の治療でおこなわれます。
編集部
一方、「セラミック治療」とはどのようなものですか?
三木先生
むし歯の治療をおこなった後に、セラミック製の型を歯の上に被せて、元の歯と同じような状態にするのがセラミック治療です。かつては、むし歯の治療をした後に銀歯を被せるのが一般的な方法でしたが、現在ではセラミックを好む人が多くなってきました。セラミックは、銀歯よりも本来の歯に近い色味や素材をしているため、見た目に違和感のない仕上がりになります。
編集部
どちらもむし歯の治療に用いられ、見た目を白く、美しくするものなのですね。
三木先生
そうです。そのほか、すでにあるむし歯の治療だけでなく、欠けたり割れたりしてしまった歯や、一度治療をおこなった歯などにも適応できます。どちらも用途と目的はほぼ同じなのですが、特徴や適応範囲は異なります。
それぞれの治療法の違いとは?
編集部
ダイレクトボンディングとセラミック治療では、どのような違いがあるのですか?
三木先生
最大の違いは、歯を削る量です。ダイレクトボンディングは、必要最小限の範囲のみを削って治療することができます。もう一方のセラミック治療は、強度を保持するために厚い型を被せなければなりません。そのため、ダイレクトボンディングに比べて、大きく削る必要があります。
編集部
予後にはどのような違いがありますか?
三木先生
ダイレクトボンディングは変色しにくく、定期的なメインテナンスで綺麗な状態が維持することができます。また、万が一治療部位が欠けたり変色したりした場合は、その部分だけを補修することができます。
編集部
一方、セラミックはいかがでしょうか?
三木先生
セラミックは非常に硬い素材であり、ダイレクトボンディングに比べてほぼ劣化をせず、汚れが付きにくいという特徴があります。そのため、歯磨きの磨き残しが少なく、歯周病のリスクを下げることに一役買っています。その反面、非常に硬いので、衝撃に脆いというデメリットもあります。また、水分や粘り気が少なく、強い衝撃やひどい歯ぎしりなどが原因で割れてしまうこともあります。
編集部
総合的に見ると、どちらも一長一短なのですね。
三木先生
材質のクオリティでいえば、セラミックの方が上といえるのではないでしょうか。ただし、先述の通りセラミックは、ダイレクトボンディングに比べて歯を削る量が多いので、その点を考慮して治療法を選択する必要があります。
編集部
そのほかに、どういった違いがありますか?
三木先生
ダイレクトボンディングは直接、歯の上に素材を塗り固めていくので、1回の治療が30〜60分に及ぶことがあります。しかし、型取りをする必要がないので、早ければ1回で治療が完了します。一方、セラミック治療は型取りをしなければならないため、最低でも2回は通院しなければなりません。
ダイレクトボンディングとセラミック治療、どちらが自分に向いている?
編集部
どちらの治療が自分に向いているのか、どのように判断したらいいのでしょうか?
三木先生
まずは、「治療範囲がどれだけ大きいか」ということを検討する必要があります。ダイレクトボンディングの場合、むし歯が広範囲に及ぶときには適応できないこともあります。また、ダイレクトボンディングはセラミックと比べると強度が劣るため、奥歯などの強い力がかかる部位には向いていません。ただし、歯科医師の経験や考え方に左右される部分も多いので、カウンセリングの際、「自分の歯はどちらの治療が適しているのか」をしっかり相談するといいでしょう。
編集部
そのほか、両者を比較するうえで注意する点はありますか?
三木先生
ダイレクトボンディングは、直接、歯の上に素材を塗り固めていくので、歯科医師の技量に大きく左右されます。そのため、「普段から信頼している歯科医師を選ぶ」、「症例数の多い歯科医師を選ぶ」などの配慮が必要になるでしょう。一方のセラミックは、歯科技工士が歯の型を作ります。そのため、「それほど歯科医師の技量に左右されないのではないか」と思われがちです。しかし実際は、歯科技工士が作った型を整えてお口の中にはめるとき、歯科医師の細かな調整が必要になります。その点では、歯科技工士と歯科医師の間で、技術と知識の調和が取れていないと難しいと言えるでしょう。
編集部
ダイレクトボンディングとセラミック治療は、保険適用されるのでしょうか?
三木先生
セラミック治療は保険適用外で、費用は歯科医院によって異なります。また、厳密に言えば保険適用のコンポジットレジン修復もダイレクトボンディングに分類されます。ただし、今回のテーマであるセラミック治療と比較するとなると、自費のハイブリットレジンが前提になるでしょう。一般的に同じ歯を治療する場合、セラミック治療の方がダイレクトボンディングに比べて、2〜3万円ほど高額になることが多いようです。これは、歯科技工士に歯の型を発注する分が上乗せされています。そのため、費用面だけを考えれば、ダイレクトボンディングに軍配が上がるでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
三木先生
当院でも、ダイレクトボンディングとセラミック治療のどちらをおこなえばよいか、よくご相談をいただきます。その際、1つの目安として私がお答えしているのは、「若い人やお子様ならダイレクトボンディング」、「ある程度年齢を重ねた人ならセラミック治療」ということです。ダイレクトボンディングの一番のメリットは、健康な歯を大きく削らなくてもいいということです。将来のことを考えれば、健康な歯は極力、残しておきたいものです。一方、セラミック治療は非常に耐久性に優れているので、何度も治療を繰り返す心配がなくなり安心感を得られるでしょう。ただし、その人の歯の状況にもよるので、詳しくはかかりつけの歯科医師にしっかりご相談されると良いと思います。
編集部まとめ
むし歯の治療で選択肢として考えられる「ダイレクトボンディング」と「セラミック治療」。どちらも見た目を美しくすることに変わりはありませんが、それぞれ耐久性や適用範囲、価格の面で違いがあります。両者の特徴やデメリットをしっかり把握し、納得のいく治療をおこないましょう。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |