歯の「クリーニング」と「ホワイトニング」の違いは「目的」にあり
歯のクリーニングとホワイトニング。どちらも歯をきれいに保つために行うイメージがありますが、厳密には、それぞれ実行目的が違います。大別するならば「健康」か「美」かということ。両者の特徴や違いについて、医療法人修愛会上前津歯科医院の今井健二先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
今井 健二(医療法人修愛会上前津歯科医院 院長)
朝日大学歯学部卒業、朝日大学大学院歯学研究科修了。朝日大学歯学部歯周病学講座非常勤講師を経て、医療法人修愛会上前津歯科医院に勤務。2002年同院院長就任。「患者様と一緒に治す」を基本に、誰もが安心して治療を受けられるよう心がけている。特にインプラント、審美歯科、歯周病の治療に力を入れており、CTスキャナや手術室のほか3D技工製作機を備えた技工室を併設。さらに、咬合診断装置や口腔内スキャナも揃え、矯正の診断及び補綴処置もワンストップで行える。
「歯のクリーニング」とは歯磨きの磨き残しをきれいにすること
編集部
「歯のクリーニング」とは、具体的に何をするのですか?
今井先生
歯垢・歯石・着色を除去するのが歯のクリーニングです。歯垢(プラーク)は、歯磨きの際に磨き残しがあると、唾液に含まれているミネラル成分と結びついて「歯石」となってしまいます。歯石は歯周病をより悪化させたり、むし歯や口臭の原因になったりします。しかし、歯石は歯みがきだけでは取り除くことが難しいほどに、歯の表面に固くこびりついています。そこで、歯科医院での歯のクリーニングが必要なのです。
編集部
「歯のクリーニング」はどうやって行うのですか?
今井先生
まずは、口の中を検査し、人それぞれに適したクリーニングを提案するのが一般的です。具体的な手法としては、歯の表面の沈着物と歯石を、スケーラーという特別な器具で除去する「スケーリング」「超音波スケーリング」、スケーラーを使って歯根表面の汚染や軟化されたセメント質、象牙質を除去して歯根面を硬く滑沢に仕上げる「ルートプレーニング」、歯間の歯垢を取り除く「フロッシング」、汚れや色素を落とす「エアフロー・ジェットクリーニング」などがあります。
編集部
歯をクリーニングすると、どのようなメリットがありますか?
今井先生
歯垢や汚れ、歯石を落とし、口腔内を清潔な状態に保つことができるほか、歯の表面に付着したステイン(着色)や、タバコのヤニを除去することができます。色素も落とせますので、見た目の印象を明るくしたり、美しく見せたりすることも可能でしょう。白い歯は相手に対する印象を良くし、海外では身だしなみのひとつと考えられています。もちろん、口のなかがすっきりすることで、心地良さを感じていただけるのもメリットです。
クリーニングとホワイトニングの違いは?
編集部
歯のクリーニングは、ホワイトニングとどう違うのですか?
今井先生
一般的に、歯を白くすることに特化し、見た目の美しさに寄与するためものを「ホワイトニング」、歯石・色素を除去し、口内環境を整えて健康と美容の両面をサポートするものを「クリーニング」と呼びます。また、ホワイトニングはすべて保険適用外になるのに対して、クリーニングの一部には保険が適用されます。
編集部
「保険適用になるクリーニング」とは、どのようなものですか?
今井先生
歯ぐきが健康で歯周病の疾病がなく、歯の表面の汚れを落とすことが目的である場合や、ヤニ、茶渋、着色、汚れ等を取ったりする場合は保険適用外とされます。通常は、検査で歯周病や歯肉炎が認められた場合に限り、保険が適用されます。保険適用外の場合、一般的なクリーニングの金額は1回あたり約5千~2万円が目安となります。
編集部
ずいぶん、価格に差があるのですね。
今井先生
これは、各歯科医院のクリーニングに対する考え方、すなわち、「どこまで完璧を求めるか」の違いによります。しっかりクリーニングを受けたい場合は、PMTCを行っている歯科医院を選ぶのがおすすめ。PMTCとは、「専門家」が、専用の「機器」を駆使して、「歯」を「磨く」ことです。「 」内の英単語「Professional」「Mechanical」「Tooth」「Cleaning」の頭文字からそう呼ばれています。このPMTCを行うと、1回あたり1~2万円が目安になります。ちなみに、当院は1回あたり1万円です。
編集部
クリーニングを行っていたら、ホワイトニングは不要ですか?
今井先生
前述の通り、クリーニングとホワイトニングは目的がまったく異なります。「歯を白くするなら、クリーニングよりホワイトニングの方が良い」と思われるかもしれませんが、実際はクリーニングも大切。ホワイトニングの効果を最大限発揮するためには、歯の表面についた汚れを落としてからホワイトニングをしなければ、歯を効率よく白くすることはできないからです。部屋の掃除と同じく、まずはゴミや汚れを片付けてから、見た目をきれいにすることが必要になります。
歯をもっと健康で美しく保つために
編集部
歯のホワイトニングは、どのように行われるのですか?
今井先生
基本的にホワイトニングには「クリーニング」のほか、歯の汚れを薬品で落とす「ブリーチング」、歯の表面をプラスチックでコーティングする「マニキュア」などがありますが、一般的によく利用されているのがブリーチングです。当院では先ほどご説明した、専用機器を用いてのPMTCも行っています。歯の汚れだけでなく、雑菌も落とせるので、歯周病を予防することにもつながり、多くのメリットがあります。
編集部
ホワイトニングは、どれくらい持続効果がありますか?
今井先生
当院で行っているホワイトニングには、クリニックで行うもの(=オフィスホワイトニング)と、自宅で行うもの(=ホームホワイトニング)があります。歯が白くなるスピードはオフィスホワイトニングの方が早いですが、効果の持続期間は3~6か月と短め。一方、ホームホワイトニングは効果が表れるまで時間がかかりますが、持続期間は長めです。もちろん個人差もあるので、ライフスタイルなどを考慮しながら、歯科医師や歯科衛生士と相談して選ぶと良いでしょう。
編集部
最近は、どちらのホワイトニングが人気ですか?
今井先生
当院ではオフィスホワイトニングですね。「ホワイトニングをすると冷たいものがしみやすくなる」と聞いたことがあるかもしれませんが、確かにケアのあと、「知覚過敏症」のような症状が出る方もいます。そのような場合でも、歯科医院でホワイトニングを行えば、すぐに手当てしてもらえるというメリットがあります。ただ、ホームホワイトニングでも、使用する薬剤を変えたり、薬剤の濃度を調整したりすることで、冷たいものをしみにくくすることも可能です。ご不安な場合は、歯科医師に相談すると良いでしょう。
編集部
ホワイトニングの料金はどれくらいですか?
今井先生
当院の場合、オフィスホワイトニングは3万円。また、ホームホワイトニングとオフィスホワイトニング4回を組み合わせた「デュアルホワイトニング」は10万円です。デュアルホワイトニングの場合、各ホワイトニングを単体で行うよりも短期間で白さアップが期待でき、効果も長持ちしやすいのが特徴です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
今井先生
クリーニングは口の健康を保つために必要なもの。痛みがなくても定期的に歯科医院へ通い、クリーニングを行うことが大事です。少なくとも3か月に1度は、掛かりつけの歯科医院でチェックしてもらうと良いでしょう。一方、ホワイトニングは歯を美しくして、見た目を改善するという点で大きな効果が期待できます。ご自分の状態や目的に応じて、正しく使い分けるようにしましょう。
編集部まとめ
白く健康な歯は憧れですが、ホワイトニングだけでは不十分。まずは、定期的なクリーニングで口腔内に問題がないかしっかりチェックし、問題があれば速やかに改善してから、ホワイトニングを行うと良いでしょう。
医院情報
所在地 | 〒460-0011 愛知県名古屋市中区大須4-11-17 |
アクセス | 地下鉄名城線「上前津駅」徒歩0分 地下鉄鶴舞線「上前津駅」徒歩0分 |
診療科目 | 一般歯科、審美歯科、インプラント・口腔外科 |