歯科の「オゾン治療」について詳しく教えて! 削らないむし歯治療ができるって本当!?
3つの酸素原子からなる「オゾン(O3)」。かつてから消毒や治療目的で使われてきたようですが、その割には、目に触れる機会が少なかったように感じます。もしかしたら、適用症例が限られているのでしょうか。「黒木歯科医院」の黒木先生に、詳しく説明していただきました。
監修歯科医師:
黒木 克哉(黒木歯科医院 院長)
大阪歯科大学卒業。その後、父親が開院した現・医療法人「黒木歯科医院」に勤務。2010年、院長継承とともに、法人化に伴い同理事長就任。現在、大阪歯科大学附属病院口腔インプラント科に在籍し、米国インディアナ州立大学歯周学インプラント科教授を兼任。歯学博士。日本口腔インプラント学会認定専門医。
「削らない治療」というより「削る前の治療」に有効
編集部
先生は歯の治療に「オゾン」を取り入れていると伺いました。
黒木先生
はい、実は約30年前から導入しています。オゾンは自然界にある物質で、地球の成層圏で「オゾン層」を形成し、有害な紫外線の吸収などに一役買っています。また、「塩素の7倍」ともいわれる高い殺菌力があり、ヨーロッパ諸国ではかつてから、むし歯治療などに用いられてきました。その一方、否定的な見解をもつ国やグループも存在していますね。
編集部
医療用オゾンは身体に無害と考えていいのでしょうか?
黒木先生
もちろんです。今までオゾンによって亡くなった方は、世界規模で1人もいません。なお、硬い組織、つまり「歯のむし歯」に対しては、殺菌効果が望めます。他方、「歯ぐきや血管」などの柔らかい組織の場合は、血液の活性化による抗炎症作用が期待できます。
編集部
液体などを媒介にして、歯に塗るのですか?
黒木先生
いいえ。ガス状のオゾンを吹きかける専用の機器が開発されています。実際に治療するときは、患部の歯をしっかり乾燥させてからでないと、オゾンが奥まで届きません。なお、肉眼でハッキリとわかるようなむし歯は、オゾン治療の範囲外になります。つまり、肉眼やレントゲンでは発見できず、機械にかけてみつけられるような“初期むし歯”での運用が効果的です。
編集部
顕微鏡レベルのむし歯が、主な適用症例なのですね?
黒木先生
わかりやすくいうと、むし歯が「肉眼で確認できる穴」まで進行してしまったら、ほかの治療法を検討します。穴まで至らない「目に見えない傷」程度でしたら、オゾンで殺菌処置しておけば、再石灰化によって元に戻るでしょう。
早期発見とセットでおこなうのが理想的
編集部
「目に見えない傷」って、どのようなイメージなのでしょうか?
黒木先生
歯の表面はエナメル質で覆われていて、その中に象牙質(ぞうげしつ)があります。また、この象牙質には、内側から無数の「象牙細管(ぞうげさいかん)」という細いパイプが走っています。このパイプにむし歯菌が侵入すると外見からは区別できず、非常に厄介です。特殊な機械でしか見つけられません。
編集部
オゾンを、そのパイプに届かせているわけですか?
黒木先生
そういうことです。オゾンの濃度や照射時間にもよりますが、最大で「外側から6mm」程度までは消毒することができます。誤解されがちですが、「むし歯の穴が6mmまでなら有効」ということではありません。前述のように、穴が空いたら、オゾンだけでは対処しきれないでしょう。ただし、医師によっては、消毒目的で使うケースがあるかもしれません。
編集部
初期むし歯の治療は、オゾンガスを吹きかけて「終わり」ですか?
黒木先生
場合によっては、歯の再石灰化が促されるフッ素やミネラルペーストなどを塗布します。
編集部
気になる費用体系についてもお願いします。
黒木先生
自由診療なので医療機関によって異なりますが、1回あたり数千円といったところではないでしょうか。相場は競合によって決まるので、地域差もあるようです。
歯周病など、むし歯以外の適応も
編集部
オゾンの仕組みが「殺菌・活性化」だとしたら、ほかの治療にも使えますよね?
黒木先生
その通りです。当院では、マウスピースを通してオゾン噴出ができる「オゾニトロン」のご用意もあります。オゾンをマウスピースの中に一定時間、閉じこめておくようなイメージで、むし歯のほかに歯周病治療でも有効です。
編集部
通常のメインテナンスで用いることもあるのですか?
黒木先生
あくまで当院の場合ですが、「オゾニトロン」は定期メインテナンス時にご提案しています。もちろん費用が別途かかりますから、患者さんのご希望次第です。特徴としては、同じような「液体による消毒方法」と異なり、マウスピースが患者さんの歯や歯ぐきの形にフィット“していなくても”いいことです。オゾンは気体ですから、既製品のマウスピースでも、その内側を満たしてくれます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
黒木先生
治療用オゾンの安全性は担保できているということを、ぜひ、知っておいていただきたいですね。たしかに、フッ素に関しては、高濃度処方による事故例が報告されています。しかし、オゾン療法を約30年間やってきてトラブルになったことは、一度もありません。
編集部まとめ
オゾンには殺菌効果が望めるものの、削る必要のあるむし歯には「向いていない」ということでした。しかも、特殊な機械を使って検知できるような「肉眼では見えないむし歯」に有効とのことです。ということは、日頃から初期発見に努めていないと、オゾン療法の恩恵が受けられません。他方で、顕微鏡レベルの段階からむし歯を封じ込めたい人には、朗報といえるのではないでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒562-0001 大阪府箕面市箕面6-5-7 くもんぴあ箕面ビル2階 |
アクセス | 阪急箕面線「箕面駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 歯科 |