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顎の骨が薄くてもインプラントを入れられる!? これってホント?

 更新日:2023/03/27

インプラント治療では、顎骨(がっこつ)の中に、人工歯の土台となるスクリューを埋め込みます。このとき問われるのが、顎骨の厚みです。薄いとスクリューをしっかり固定できないのが道理でしょう。しかし、「城山通りデンタルクリニック」の笠井先生は、やり方次第で可能だと言います。インプラント治療の最新事情を伺いました。

笠井 俊輔

監修医師
笠井 俊輔(城山通りデンタルクリニック 院長)

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東京歯科大学卒業。慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科入局後、同歯周病外来医長を経た2015年、東京都世田谷区に「城山通りデンタルクリニック」開院。根本から改善する原因療法と、中長期的な治療計画で、将来の健康に備えた治療を提供している。日本歯周病学会歯周病専門医、日本口腔インプラント学会口腔インプラント認定専修医、日本臨床歯周病学会認定医。

こんなにあった、顎骨を補う方法

こんなにあった、顎骨を補う方法

編集部編集部

インプラントの治療が向いていないのは、どんな人でしょう?

笠井先生笠井先生

歯周病などで、インプラントを埋める顎骨の多くが溶けてしまった方ですね。もちろん、先天要因などで、元から顎骨の形成が十分でない方もいらっしゃいます。いずれにしても、そのままの状態では、インプラント治療のリスクが高まります。

編集部編集部

対策や治療方法はあるのですか?

笠井先生笠井先生

患者さんの顎の状態によってさまざまにあります。例えば、「サイナスリフト」や「ソケットリフト」は、上顎骨の厚みを補う方法です。方向でいうと「上下の厚み」になります。これに対して、横方向の厚みが薄い場合は、「GBR(骨誘導再生法)」などを試みます。

編集部編集部

ほかにも主だった補填治療があれば、お願いします。

笠井先生笠井先生

抜歯予定の歯を抜く前に、矯正治療によって動かしながら抜くことで抜いた後の骨を増やす「矯正的挺出(ていしゅつ)」という方法があります。また、抜歯した部位は骨が吸収してしまうのですが、抜歯直後にインプラントを入れることで骨の吸収を抑える、「抜歯即時埋入」、短いスクリューを使用する「ショートインプラント」などがあります。

治療方法それぞれの特徴一覧

治療方法それぞれの特徴一覧

編集部編集部

各治療方法の向き・不向き、メリット・デメリットについて、整理してください。

笠井先生笠井先生

各治療の特徴について比較表にしてまとめました。参考にしてみてください。

※クリックで拡大できます

編集部編集部

いずれにしても、自分で「顎骨が薄い」とは気づかないと思います。

笠井先生笠井先生

そうですね。基本的にCT撮影などで診断をしてみて、初めて発覚します。このとき、引き出しの多い歯科医師なら、「インプラントを施術できる可能性」が高まるでしょう。最初の歯科医院で「できない」と言われても、そこであきらめず、複数の医院へ相談してみてください。

編集部編集部

昔に比べてインプラントの可能性が広まりましたね?

笠井先生笠井先生

たしかにそうなのですが、個人的には、「歯がなくなったところはお口の中全体でどのような役割をしていて、どうすれば解決できるか」を診断するのが先決だと思っています。私なら、最初にかみ合わせを考慮して、それに適した人工歯の形状をシミュレートし、最後に歯の形状に合わせた支え方を決めていきます。単に、「難しい場所へインプラントが入れられたか」ということではなく、「将来まで考えてインプラントを入れたか」が重要なのです。

インプラントに至る原因の多くは歯周病だから

共通項として見えてきた「頑張る」というキーワード

編集部編集部

上述の治療方法って、誰でも受けられるとは限らないですよね?

笠井先生笠井先生

もちろんです。患者さんの状態にもよりますし、医師の技術力、考え方にもよります。そもそも、施術可能かどうかというより、患者さんのためになるかどうかが問われますよね。患者様にメリット、デメリットを理解していただき、しっかりと相談した上で始めていく必要があります。

編集部編集部

自分にとってベストな歯科医院を見分ける方法について教えてください。

笠井先生笠井先生

難しいですね。資格が全てではありませんが、一つの指標としてインプラント関連の資格だけでなく、歯周病専門医の資格も持っていると安心できるでしょうか。先天要因を除くと、顎骨が薄くなる原因の多くは歯周病です。歯周病で歯を失ったということは、他部位にまだ歯周病が残っているかもしれません。インプラント治療の前に歯周病治療は必須です。また、インプラント治療には歯肉に対する繊細な手術が必要なことが多いのです。そういう意味でも歯周病専門医の元でインプラント治療を受けることは、安心ではないでしょうか。

編集部編集部

治療を受けた後の注意点についても教えてください。

笠井先生笠井先生

再生した骨は吸収されることがあるので、より慎重な経過観察を続ける必要があります。インプラント周囲炎の早期発見も含めて、定期的な通院を心がけましょう。メンテナンスの中でトラブルの兆候が発見できれば、最小限の対応で済ませられるかもしれません。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

笠井先生笠井先生

歯のないところにただインプラントを入れれば良いわけではありません。骨が薄いということは、歯周病で骨を失った可能性があり、隣の歯にも歯周病があるかもしれません。インプラントを入れることで咬み合う歯がダメになってしまう可能性もあります。そうならないために、最初にお口の中全体を総合的に診断して、そこにインプラントを入れることが適切なのかどうかを診断してからインプラント治療を始めることをおすすめします。

編集部まとめ

結論としては、「骨の薄い場所でも施術可能」ということになりそうです。しかし、インプラントを入れたために、対抗する歯が傷んでしまったら、治療行為として成り立ちません。何より重視すべきは、口腔環境全体の維持です。その維持のために、「顎骨の薄い部分へのインプラント治療が必要」となれば、治療選択肢の一つに上がってきます。「まず入れる」のではなく、「後のことを考えて入れる」。この視点に立ち、患者が歯科医師を見極めてもいいのではないでしょうか。

医院情報

城山通りデンタルクリニック

城山通りデンタルクリニック
所在地 〒156-0052 東京都世田谷区経堂5-28-14 MAISON do 経堂1F
アクセス 小田急線「経堂駅」より徒歩6分
診療科目 一般虫歯治療、小児歯科、予防、審美治療、ホワイトニング、矯正歯科、口腔外科

この記事の監修歯科医師