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入れ歯が合わない原因は?合わない場合の症状や放置するリスク、対処法を解説

 公開日:2025/08/16
入れ歯が合わない原因は?合わない場合の症状や放置するリスク、対処法を解説

入れ歯を使い始めたものの、合わないと感じて違和感を抱える方は少なくありません。長期間使っている方も、新しく作った方も、さまざまな理由で入れ歯が合わなくなることがあります。 入れ歯が合わない状態を放置すると、食事が楽しめないだけでなく、残っている歯や顎の骨にも悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。 この記事では、入れ歯が合わなくなる原因や放置するリスク、対処法や入れ歯以外の治療法を詳しく解説します。最後まで読むと、快適な口腔環境を保つための方法がきっとわかるはずです。

石毛 俊作

監修歯科医師
石毛 俊作(大神宮デンタルクリニック)

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東北大学歯学部卒業。千葉大学医学部附属病院 歯科・顎・口腔外科 臨床研修医。千葉大学大学院 医学薬学府 医学博士。独立行政法人地域医療機能推進機構。船橋中央病院。歯科口腔外科/インプラントセンター勤務。いとう歯科クリニック勤務、海岸歯科室勤務。

入れ歯が合わない原因は?

歯が痛いシニアの女性 入れ歯が合わないことは、決して珍しくありません。入れ歯が合わない原因は、大きく分けて入れ歯そのものに問題がある場合と、口腔内に変化が起きた場合の二つが考えられます。 ここでは、入れ歯が合わない主な4つの原因を詳しくみていきましょう。

入れ歯の劣化や変形

入れ歯を長年使用していると、目に見えない細かな傷やかすり傷が生じます。小さなヒビや傷でも、装着感に違和感を生じさせる原因になります。 また、素材の経年劣化や落下による衝撃などで、わずかに変形する場合もあるでしょう。 食事による噛む力や、歯ぎしり、食いしばりなどによってもすり減りや歪みが少しずつ生じていきます。 このような劣化や変形の積み重ねが、歯茎との間にすき間を作り、合わないと感じる原因になります。

入れ歯の汚れ

実際の歯と同じように、入れ歯にもさまざまな汚れが付着します。入れ歯に歯垢や食べかすなどの汚れが蓄積すると、入れ歯が滑りやすくなり、歯茎に炎症が起きて合わないと感じる原因になります。 一見きれいに見えても、入れ歯には目に見えない汚れが付着しているケースは少なくありません。

歯茎の変化

入れ歯は、製作した時点での歯茎の形に合わせて精密に作られています。そのため、土台となる歯茎の形が変化すると、自然と入れ歯は合わなくなってしまいます。 歯茎の変化の原因の一つが、歯茎の痩せです。加齢や体調の変化、歯周病などによって歯茎の状態は徐々に変化します。 歯茎が痩せると入れ歯との間にすき間が生まれ、合わなくなったと感じるケースは少なくありません。

顎の骨の変化

鏡で歯を確認する女性 顎の骨の変化でも、入れ歯が合わなくなる原因になります。歯茎の下にある顎の骨(歯槽骨)は入れ歯全体の土台となる重要な部分です。 歯を失うと、噛む刺激がなくなり、顎の骨は徐々に吸収されて痩せていきます。総入れ歯の場合、顎の骨全体が痩せるため、数年で形が大きく変わってしまうケースも少なくありません。 土台である顎の骨が痩せてしまうと、入れ歯が合わなくなり、がたつきや外れやすさといった問題が生じやすくなります。

入れ歯が合わない場合に出る症状

歯の痛みに悩む 入れ歯が合わないと、日常生活にさまざまな不調が生じます。これらの不調は入れ歯の調整や作り直しが必要なサインです。 ここからは、入れ歯が合わない場合に起こりやすい代表的な5つの症状を解説します。

食べ物を噛むときに痛い

食べ物を噛むと、痛みが生じる場合は、入れ歯が歯茎に密着していない可能性があります。 歯茎や顎の骨が痩せて入れ歯との間にすき間ができると、噛む力が均等に分散されないため、特定の箇所に集中しがちです。 強い圧力が歯茎を傷つけ、鋭い痛みを感じることがあります。入れ歯の縁が食い込んだり擦れたりするため、口内炎や潰瘍ができる原因になります。

入れ歯が外れやすくなる

入れ歯がずれたり外れたりしやすくなるのも、入れ歯が合わないときの症状の一つです。入れ歯と歯茎の間にすき間ができると、入れ歯の吸着力が低下します。 さらに、唾液の減少により吸盤のような効果も弱まり、より外れやすくなってしまいます。会話中や食事中に突然外れると、恥ずかしい思いをする場合もあるでしょう。

吐き気が出る

入れ歯が合っていないと、口腔内で異物感が強くなり、特に上顎の入れ歯では嘔吐反射を引き起こす原因になります。 これは、入れ歯の後方の縁で、喉の奥にある敏感な部分が過剰に刺激されるのが主な原因です。 また、入れ歯が緩んで口腔内で動くことでも、不快感や吐き気が誘発されることがあります。 慣れてきたのに症状が改善しない場合や、急に吐き気が出るようになった場合は、入れ歯が合っていない可能性があります。我慢せずに歯科医師に相談しましょう。

喋りにくい

入れ歯がしっかり合っていないと、発音が不明瞭になったり、特定の音が発しにくくなったりするケースがあります。 歯茎との間にすき間ができると、空気が漏れてしまい、シ・ス・チ・ツなどの音が不明瞭になるでしょう。 さらに、入れ歯に厚みがありすぎたりガタつきがあったりすると、舌の動きが妨げられてしまいます。 特にサ行やタ行の発音に影響が出やすく、思うように話せず、強いストレスを感じる方も少なくありません。

味や温度を感じにくくなる

入れ歯を装着すると、味覚や温度の感覚が鈍くなることがあります。これは、入れ歯が口腔内を覆う面積が広く、舌や上顎の感覚を遮断してしまうためです。 また、入れ歯の素材であるレジンは熱を伝えにくい性質を持っています。 そのため、食べ物や飲み物の温かさや冷たさを感じにくくなり、熱いお茶やスープで口腔内をやけどしてしまうリスクも高まります。食事の満足度も低下してしまうでしょう。

入れ歯が合わないまま放置するリスク

リスクを提示する 入れ歯の不具合を放置していると、お口の中のトラブルだけでなく、全身の健康にまで悪影響を及ぼす可能性があります。 ここでは、入れ歯が合わないまま放置すると生じる、3つの大きなリスクを解説します。

残っている歯に負担がかかる

合わない入れ歯は、残っている歯の寿命を縮める原因となるため、注意が必要です。部分入れ歯は、残っている歯に金属のバネをかけて固定し、安定させています。 しかし、入れ歯がガタついたり沈み込んだりするようになると、噛んだときの力がバネをかけている歯に集中してしまうことがあります。 その結果、歯がグラグラになり、場合によっては抜歯が必要になることもあるでしょう。

咀嚼力が低下する

入れ歯が合わないと、噛むたびに痛みや不快感が生じるため、自然と咀嚼を避けるようになります。 無意識に硬い食品を避け、うどんやおかゆなどやわらかいものばかりを選ぶようになるでしょう。 また入れ歯が安定しないため、食べ物をうまくすり潰すことができず、十分に噛めないまま飲み込んでしまうことが増えます。 結果的に、消化器官への負担や栄養の偏りなどの問題が生じやすくなります。

口腔内に傷ができやすくなる

口腔内に傷ができやすくなるのも問題の一つです。入れ歯の縁が歯茎や頬の内側に強く当たり続けることで、慢性的な口内炎やただれができてしまいます。 また、傷口が慢性化すると細菌感染や口臭の原因となり、衛生面にも悪影響を及ぼします。 なかなか治らない傷やしこりがある場合は、放置せずに、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

入れ歯が合わない場合の対処法

対処法 入れ歯が合わないと感じた場合は、自己流での対処は避けるべきです。間違った対応はさらに症状を悪化させてしまうこともあります。 ここでは、入れ歯の不具合を感じたときに取るべき適切な対処法を解説します。

自己判断せず歯科医院を受診する

違和感を覚えたら、自己判断せずにすぐに歯科医院を受診しましょう。入れ歯の不具合は、自分では原因を正確に判断しにくいため、専門的な診察と調整が必要です。 市販の入れ歯安定剤に頼ったり、自分で削ったりしないようにしましょう。合わない入れ歯を使い続けていると、歯茎や顎の骨に負担がかかり、症状が悪化します。 些細な違和感でも放置せず、早めの相談を心がけましょう。

入れ歯の清掃方法を見直す

入れ歯に付着した汚れや歯垢は、フィット感の低下や炎症の原因になります。入れ歯を快適に使用するためには、毎日の正しいお手入れが欠かせません。 入れ歯専用のブラシや洗浄剤を使用し、やさしく丁寧に洗浄しましょう。熱湯の使用や歯磨き粉での清掃は、変形やキズの原因になるため、使用はおすすめしません。 就寝前には入れ歯を外し、専用の洗浄液に浸けて保管するのが理想的です。

日常の口腔ケアを見直す

入れ歯だけでなく、お口全体の健康を維持することも重要です。入れ歯を支える土台である、残った歯や歯茎のケアを徹底しましょう。 残っている歯は歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも活用し、丁寧に清掃しましょう。 また歯茎や舌、頬の内側などもやわらかいブラシやガーゼで優しく清掃し、清潔な状態を保つことも大切です。さらに、歯科での定期的なチェックやクリーニングも、トラブルの予防につながります。

入れ歯を作り直した方がよい目安は?

入れ歯 入れ歯は一度作れば一生使えるものではありません。使い続けるうちにフィット感が失われたり、劣化が進んだりして、生活の質に影響を及ぼすことがあります。 ここからは、入れ歯を作り直した方がよい目安を解説します。もし当てはまるものがあれば、作り直しのタイミングと考え、歯科医師に相談しましょう。

痛みが続く場合

入れ歯を装着するたびに痛みを感じたり、歯茎に炎症や傷ができやすくなったりしている場合は、入れ歯が合っていない可能性があります。 調整で改善するケースもありますが、症状を繰り返す場合は、入れ歯そのものに問題があるのかもしれません。 部分的な修正では対応しきれないほど不適合が大きくなっている場合、入れ歯を作り直さない限り、慢性的な痛みが続いてしまいます。

うまく咀嚼できない場合

食事中に食べ物が噛み切れなかったり、うまくすりつぶせなかったりする場合は、入れ歯の咀嚼機能が低下しているサインです。 長年使用していると、人工歯がすり減ってしまい、食べ物をうまくすり潰せなくなります。また、噛み合わせの高さが低くなると、顎の動きも不自然になります。 放置すると消化不良や栄養不足の原因になる可能性があるため、早めに入れ替えを検討しましょう。

うまく発音できない場合

以前は問題なかったのに、発音が不明瞭になった場合も、入れ歯が合っていない可能性があります。発音のしにくさは、入れ歯と歯茎の間に調整では埋めきれないほどの大きなすき間ができていることが原因です。 また、入れ歯の厚みや形が、現在の舌や唇の動きに合っていない可能性も考えられます。 発音に違和感があると、会話中にストレスを感じやすくなるため、作り直しの検討がおすすめです。

顎骨や歯茎に違和感がある場合

歯の痛みがある 顎全体が疲れやすかったり噛むと顎の関節がカクカクしたりするなど顎の違和感も、入れ歯が合っていないときのサインの一つです。 入れ歯の長期使用により、顎の骨や歯茎が徐々に痩せて変化するケースがあります。 これにより噛み合わせのバランスが崩れ、顎関節や周囲の筋肉に負担がかかっている可能性が考えられます。放置すると顎関節症を引き起こすリスクもあるため、作り直しが必要です。

入れ歯の素材や構造が劣化している場合

入れ歯そのものに、目に見える劣化や破損がある場合は、すぐに作り直しを検討しましょう。変色やひび割れ、摩耗や変形などがあれば、経年劣化による寿命のサインです。 破損した入れ歯を使い続けるのは危険なばかりか、劣化したプラスチックは細菌の温床となり衛生的にも問題があります。 入れ歯の素材や構造が劣化している場合は、速やかに作り替えましょう。

入れ歯以外の治療の選択肢

歯の模型 近年では、失った歯の機能を補う治療法として、入れ歯以外の治療も一般的な選択肢として広く取り入れられるようになっています。代表的な選択肢がブリッジとインプラントです。 それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分に合った治療法を見つけましょう。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両側にある健康な歯を支柱として、その間に人工の歯を装着する治療方法です。自然な見た目で、しっかりと噛む力が伝わるのが大きなメリットです。 また、外科手術を必要としないため、短期間で治療が完了するのも大きな利点でしょう。ただし、支えにする歯を大きく削る必要があるため、健康な歯に大きな負担がかかるため注意が必要です。 さらに、支えとなる歯にむし歯や歯周病がある場合は、ブリッジを適用できないこともあります。

インプラント

インプラント インプラントは、歯を失った部分の顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。 天然の歯に近い感覚で噛むことができ、見た目も自然に仕上がります。また、周囲の歯を削る必要がないため、ほかの歯に負担をかけません。 ただし、外科的な手術が必要であり、治療期間が長くなるのがデメリットです。保険適用外であるため、費用が高額になることも覚えておきましょう。 一本あたり、300,000~400,000円(税込)程度かかるのが一般的です。なお、顎の骨の状態によっては施術が難しい場合もあるため、事前の精密検査が必要です。

まとめ

男性歯科医

入れ歯が合わないと感じたときは、我慢せず早めの対処が大切です。 原因には入れ歯の劣化や歯茎、顎の変化などがあり、放置すると痛みや咀嚼力の低下、さらには残っている歯への負担につながります。 入れ歯が合わない場合は、歯科での調整や作り直しを検討しましょう。また、ブリッジやインプラントなどほかの治療法も選択肢の一つです。 自分に合った方法で、快適な食生活と口腔環境を取り戻しましょう。

この記事の監修歯科医師