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化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の概要

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群は、遺伝性の自己炎症性疾患で、別名「PAPA症候群」ともよばれます。名前の通り、関節の炎症、皮膚の潰瘍、重度のにきびといった症状を特徴とします。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群のなかでも、特に重い症状がみられるものは「‌Hz/Hc 症候群(高亜鉛血症/高カルプロテクチン血症症候群)」とよばれています。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群は非常にまれな疾患で、世界的にも症例は限られており、日本国内での患者数は5名ほどと報告されています。
(出典:難病情報センター「化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(指定難病269)」

原因は、免疫系に関わる遺伝子の変異によるものと考えられていますが、詳細なメカニズムはまだ解明されていません。

症状の程度には個人差がありますが、幼少期から関節炎による痛みがあらわれ、成長にともなって皮膚症状を繰り返すことが多いとされています。細菌感染がないにもかかわらず、強い炎症が起こることが特徴です。

現時点で根本的な治療法は確立されておらず、主に非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド薬、免疫抑制剤などによる症状を抑える治療が行われます。一般的に、治療後の経過は良好とされていますが、血液疾患や炎症性疾患などを合併することもあるため、慎重な経過観察が必要です。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の原因

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群は「PSTPIP1」という免疫に関与する遺伝子の変異が原因とされています。

PSTPIP1遺伝子に変異が生じると、炎症を抑える働きが弱まり、体内の炎症反応が過剰になると考えられていますが、くわしいメカニズムはまだ明らかになっていません。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の前兆や初期症状について

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の症状のあらわれ方には個人差がありますが、3つの症状が同時にみられることは少ないとされています。また、他の自己炎症性疾患のように周期的な発熱をともなうことはありません。

初期症状は関節炎からはじまることが一般的です。とくに、3歳以下の乳幼児から発症することが多く、細菌感染がないにもかかわらず、関節の炎症や痛みが生じます。関節炎は再発を繰り返しやすく、進行すると関節が破壊されたり、関節が硬直して動かしにくくなったりすることがあります。

また、ワクチン接種などの際に、注射部位に膿のたまった水ぶくれ(膿疱)ができる過剰反応がみられることがあり、これが診断の手がかりになる場合があります。

10歳前後の思春期になると、壊疽性膿皮症やにきびなどの皮膚症状が目立つようになります。壊疽性膿皮症では、主に下肢に炎症をともなう赤い発疹や膿疱、しこりが生じます。これらは再発を繰り返し、潰瘍へと進行しやすい傾向があります。瘢痕(傷あと)が残ることもあります。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群でみられるにきびは、一般的なにきびとは異なり、膿がたまり、しこりを形成する重度のものです。

さらに、血液疾患(脾腫、溶血性貧血、血小板減少)、炎症性疾患(炎症性腸疾患、ブドウ膜炎)、糸球体腎炎、糖尿病などを合併することもあるため、注意が必要です。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群のなかでも、特に重症なものは「‌Hz/Hc 症候群(高亜鉛血症/高カルプロテクチン血症症候群)」と診断されます。‌Hz/Hc 症候群では、関節炎や皮膚症状に加えて、貧血、肝脾腫、リンパ節腫大、成長不全などの症状がみられます。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の検査・診断

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群は、臨床症状と遺伝子検査をもとに診断されます。

幼児期に発症する関節炎や、思春期前後から生じる皮膚の潰瘍、重度のにきびは、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群に特徴的な症状であるため、診断の手がかりとなります。

確定診断には、PSTPIP1遺伝子の変異を調べる遺伝子検査が必要です。遺伝子検査によって特定の変異が確認されれば、診断が確定されます。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の治療

現時点では、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の根本的な治療法は確立されておらず、症状を抑えるための対症療法が行われます。

関節炎や皮膚の症状には、炎症を抑えるために、ステロイド薬や免疫抑制剤が使用されることが一般的です。ただし、ステロイド薬は長期間の使用による副作用のリスクがあるため、慎重な管理が必要です。

また、近年では生物学的製剤とよばれる新しいタイプの薬剤が有効であることが報告されています。とくに、炎症に関与するタンパク質(「IL-1」や「TNF-α」)を標的とする薬が効果を示すことが知られています。

皮膚症状に関しては、感染を防ぐために抗生剤を併用することもあります。

また、けがや過度の日焼けが症状を悪化させることがあるため、日常生活ではこれらを防ぐように注意する必要があります。

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群になりやすい人・予防の方法

化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群は遺伝性疾患であるため、家族に同じ病気の人がいる場合は、発症リスクが高まる可能性があります。

常染色体優性遺伝という遺伝形式で遺伝するため、両親のいずれかが遺伝子変異を持っている場合、子どもが発症する確率は50%です。ただし、両親に遺伝子変異がなくても、突然変異によって発症するケースも報告されています。

現時点では、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群の発症を予防する方法は確立されていませんが、早期に診断を受け、適切な治療を行うことで、症状の進行を抑えることが可能です。

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