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メタボリックシンドローム
田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

メタボリックシンドロームの概要

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積にくわえて、高血圧や高血糖、脂質代謝異常が組み合わさっている状態のことです。

この状態の特徴として、自覚症状がほとんどないことがあげられます。
そのため、多くの場合、健康診断や医療機関の受診で指摘されて初めて気づくことになります。

2019年の厚生労働省の調査では、20歳以上の成人2,383人中、425人がメタボリックシンドロームを強く疑う状態であり、さらに337人がメタボリックシンドロームの予備軍であることがわかりました。
これは日本の成人の約30%がメタボリックシンドロームまたはその予備群に該当することを意味しています。
(参考:令和元年 国民健康・栄養調査報告|厚生労働省

メタボリックシンドロームを放っておくと、生活習慣病の悪化により動脈硬化が進行し、心疾患や脳卒中などを発症してしまう可能性が高まります。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームの原因

メタボリックシンドロームの原因は、内臓脂肪の蓄積です。

内臓脂肪とは、主に腸間膜(腸を固定する組織)や大網(胃腸を保護する脂肪組織)に付着している脂肪組織のことです。 

本来、内臓脂肪は絶食や極度な空腹状態のときにエネルギーとして肝臓に供給される、一時的な備蓄の役割を果たしています。
しかし、内臓脂肪が多く蓄積すると、脂肪組織の分解やさまざまなホルモンの分泌により、体のホルモンバランスに変化が生じます。その結果、高血圧や高血糖、脂質代謝異常などの生活習慣病を引き起こしやすくなり、メタボリックシンドロームにつながります。

内臓脂肪がつく主な理由は以下のとおりです。

  • 加齢
  • 運動不足
  • ストレス
  • 睡眠不足
  • カロリーや糖質の過剰摂取

これらの要因が組み合わさることで、摂取するエネルギーが消費エネルギーを上回り、あまったエネルギーが脂肪分として蓄積されて内臓脂肪となります。

メタボリックシンドロームの前兆や初期症状について

メタボリックシンドロームそのものに特有の症状はありません。

しかし、高血圧や高血糖、脂質異常症などが進行すると、さまざまな症状があらわれます。

生活習慣病 症状の特徴
高血圧 ・頭痛や肩こりがある
・めまいの自覚がある
・軽度の場合は自覚症状がないこともある
高血糖 ・尿が多い
・疲れやすい
・食後の強い眠気がある
・のどが渇きやすい
脂質異常症 ・自覚症状や見た目の変化はほとんどない

このように、生活習慣病の程度によっては自覚症状のあらわれない場合もあります。

症状がないからと油断せず、生活習慣の見直しをすることがメタボリックシンドロームを進行させないためには大切です。

メタボリックシンドロームの検査・診断

メタボリックシンドロームの診断は、必須条件である腹囲と、脂質代謝や血圧、血糖の指標を組み合わせておこなわれます。

必須条件
腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
以下の条件のうち2つ以上該当
脂質代謝 血圧 血糖
トリグリセライド
150mg/dL以上
かつ/または
HDLコレステロール
40mg/dL未満
収縮期血圧
130mmHg以上
かつ/または
拡張期血圧
85mmHg以上
悪空腹時血糖値
110mg/dL以上

(参考:メタボリックシンドロームの診断基準 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準は「腹囲が大きい=内臓脂肪の蓄積がある」という考えに基づいて作られました。

内臓脂肪の蓄積が高血圧や高血糖などを招くことから、腹囲が大きくなればそれらのリスクも高まるとされています。

これらの指標を総合的に評価することで、メタボリックシンドロームの診断がおこなわれます。
診断基準に該当する場合は、生活習慣の改善や、必要に応じて医療機関での治療が推奨されます。

メタボリックシンドロームの治療

メタボリックシンドロームの治療は、内臓脂肪の減少を目的とした食事療法や運動療法などが一般的です。
摂取エネルギーを減らし、消費エネルギーを増やすことがメタボリックシンドロームの改善につながります。

また、高血圧や高血糖などの程度によっては、病状をコントロールするために薬物療法が必要なケースもあります。

食事療法

メタボリックシンドロームの食事療法は、以下のポイントをおさえながら進めていきます。

  • 夕食は軽めにする
  • 副菜を多く食べる
  • 糖質(炭水化物)の摂りすぎに注意する
  • バランス良く食べる
  • 食塩摂取は控えめにする
  • 油を使った料理は控えめにする
  • 間食を摂りすぎないようにする
  • アルコールを摂りすぎないようにする

食事療法の注意点として、摂取エネルギーが少なくなると、タンパク質やビタミンが不足しがちなことがあげられます。

カロリーコントロールだけでなく、あらゆる栄養素をバランスよく摂取することが重要です。

運動療法

食事療法とともにメタボリックシンドロームの治療に効果を示すものが、運動療法です。
内臓脂肪は作られるのも分解されるのも早いという特徴があり、運動によりこの分解過程を促進する効果が期待できます。

30分以上の有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど、ややきついと感じる程度)を、週に3回以上取り組みましょう。
あわせて週2~3回程度の筋力トレーニングを組み合わせるとより効果が高まります。

運動療法は、エネルギーの消費とともにインスリンの効果(インスリン抵抗性)も改善させます。
しかし、その効果の持続は3日間といわれ、それ以降は徐々に下がり、1週間後には消失するとされています。そのため、週3日以上の運動が推奨されているのです。

連続して30分以上の運動を続けることが難しい場合は、まずは日常生活に自然に取り入れられる運動から始めましょう。
たとえば、通勤時の駅1つ分を歩いたり、買い物に自転車で行っていたのなら徒歩に変更したりという方法があります。

日常生活の中で運動量を増やすことを意識しましょう。

メタボリックシンドロームになりやすい人・予防の方法

以下の習慣や特徴を持つ人はメタボリックシンドロームになりやすいとされています。

  • 飲酒量が多い
  • 喫煙習慣がある
  • 運動不足である
  • 塩分を多くとる
  • ストレスが溜まりやすい
  • お腹いっぱいになるまで食べる(過食習慣がある)

これらの要因は、すべて内臓脂肪の蓄積や動脈硬化の進行を促します。
そのため、メタボリックシンドロームを予防するには、内臓脂肪をためやすい状況を作らないことが大切です。

メタボリックシンドロームは特有の症状がないため、自分ではなかなか気が付きにくいものです。そのため、メタボリックシンドロームの早期発見には定期的に健診を受けることが重要です。

メタボリックシンドロームに着目した健診を、特定健康診査といいます。生活習慣病のリスクを早期に発見することを目的に、毎年、医療保険者(自治体や健保組合、共済組合など)が主体となっておこなわれています。

また、特定健康診査の結果によって、食生活や運動習慣、喫煙などの生活習慣を見直すための特定保健指導がおこなわれます。
生活習慣病の予防や改善を目的に、個人の生活スタイルに合わせた指導を受けられるため、積極的に活用するようにしましょう。


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