

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
尿細管間質性腎炎の概要
尿細管間質性腎炎とは、尿細管と尿細管の周囲の組織(間質)が障害される疾患です。
尿細管が位置する腎臓には、血液をろ過して余分な老廃物を尿として排泄させる役割があります。また、血液中の電解質の濃度を調整したり、血圧を調整するホルモンを分泌したりする機能もあります。
「尿細管」は、糸球体で作られた原尿から必要な成分を再吸収し、体内に戻す働きを担っています。その尿細管を取り巻いている「間質」は毛細血管の豊富な組織です。 尿細管や間質は、薬剤のほか感染症などの影響によって障害され、尿細管間質性腎炎を発症することがあります。
尿細管間質性腎炎は原因や病態によって、急性のものと慢性のものに分けられます。急性の場合には炎症反応に伴う発熱や腎臓の肥大による腰痛、腎機能低下により尿量の増加などが見られます。一方、慢性の場合には、比較的ゆっくりと進行するため目立った自覚症状がなく、たまたま受けた健康診断などで偶然発見されるケースもあります。
いずれの場合にも、原因となる疾患に対する治療をおこなったり、原因となる薬剤を中止したりする必要があります。また、必要に応じて薬物療法をおこなったり、一時的に「人工透析」をおこなったりすることもあります。
腎臓の構造
腎臓はさまざまな働きを持つ重要な臓器で、腰のあたりに左右2個存在します。ソラマメのような形をした臓器の中には、「ネフロン」と呼ばれる微小な構造がそれぞれ100万個存在しています。さらに個々のネフロンは、糸球体と尿細管の2つの組織を中心に成り立っています。
糸球体は「ざる」のような組織で、腎臓に送られた血液をろ過する働きがあります。尿細管には、糸球体を通り抜けた血液成分のうち体内に必要な栄養素などを再吸収する働きがあります。
尿細管間質性腎炎の原因
尿細管間質性腎炎の原因には、薬剤や感染症などが挙げられます。
急性の尿細管間質性腎炎の多くは、薬剤による副作用やアレルギー性の薬物反応、あるいは感染症による影響によって発症すると考えられています。
原因となる薬剤は多岐に渡りますが、特に非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や抗菌薬を使用した際に発症するケースが多く見られます。
感染症によっておこる「急性腎盂腎炎」の併発症として発症するケースもあります。
一方、慢性尿細管間質性腎炎の場合は、多くが「慢性腎盂腎炎」などの感染症によって発症するとみられています。
他には、特定のハーブやNSAIDsなどの鎮痛剤、シクロスポリンなどの薬物や、水銀や鉛などの重金属、「シェーグレン症候群」「サルコイドーシス」などの自己免疫疾患、「尿路結石」などの尿路異常、「高カルシウム血症」「低カリウム血症」などの代謝異常、「骨髄腫」「アミロイドーシス」などの腫瘍によっても発症するケースもあります。
尿細管間質性腎炎の前兆や初期症状について
急性尿細管間質性腎炎で薬剤が原因となる場合には、原因となる薬剤を摂取してから数週間程度で発熱や関節痛、湿疹、尿量の増加、夜間頻尿、腎臓が肥大することによる腰痛などが見られます。
急性腎盂腎炎に併発して発症する場合には、悪寒、震え、高熱、嘔吐、腰痛などが見られることもあります。
一方、慢性尿細管間質性腎炎は比較的ゆっくりと進行するため、無症状で経過するケースが多く見られます。そのため、発症者本人は気づかず、健康診断で腎機能の異常を指摘されて偶然発見されることもあります。
尿細管間質性腎炎の検査・診断
尿細管間質性腎炎の検査では、問診や身体診察のほか、血液検査や画像検査、腎生検などがおこなわれます。
問診では、薬剤の使用歴や既往歴、自覚症状などを確認します。
血液検査では、腎機能の指標となる「血清クレアチニン(Cre)」や「血清尿素窒素(BUN)」をはじめとし、さまざまな項目について確認します。
画像検査では、超音波検査やCTのほか、点滴で造影剤を投与して腎臓の形態をくわしく調べる「経静脈的腎盂造影検査」がおこなわれることもあります。
確定診断のためには、皮膚に針を刺したり外科手術をしたりして腎臓の組織を採取し、細胞の状態を顕微鏡で調べる腎生検が必要です。
尿細管間質性腎炎の治療
急性腎盂腎炎など、原因となる疾患がある場合にはその疾患に対する治療がおこなわれます。
特定の薬剤によって発症している場合には、該当する薬剤の使用を中止し、腎機能や症状の経過観察をおこないます。
自己免疫疾患や薬剤によるアレルギー反応として発症している場合には、過剰な免疫の働きを抑える副腎皮質ステロイド薬を使用することもあります。
このほか、病状が進行して腎不全に進展している場合には、人工的に血液を濾過する「人工透析治療」が必要になるケースもあります。
尿細管間質性腎炎になりやすい人・予防の方法
抗菌薬やNSAIDsなど、特定の薬剤を使用している場合には尿細管間質性腎炎を発症するリスクがあります。薬剤は自己判断で使用せず、医師に処方されたものを適切に使用するようにしましょう。また、薬剤の使用中に気になる症状が見られた場合には、速やかに医療機関を受診することが重要です。
このほか、急性腎盂腎炎や慢性腎臓病などの腎臓疾患がある場合にも、尿細管間質性腎炎を発症するケースがあります。これらの腎臓疾患を発症している場合には、適切な治療と経過観察を受け尿細管間質性腎炎の早期発見と予防に努めましょう。
参考文献




