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水尿管症
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

水尿管症の概要

水尿管症は、尿管(腎臓から膀胱につながる管)に狭窄や閉塞が生じ、その上流部分に尿が貯まり拡張する病気です。尿管だけでなく腎盂(腎臓の出口にある袋状の部分)も同時に拡張している場合は「水腎・水尿管症」と呼ばれます。

通常、腎臓でつくられた尿は尿管を通って膀胱へと流れますが、なんらかの原因で尿の流れが妨げられると尿管が拡張し、腰痛や腹痛、尿路感染症などの症状があらわれることがあります。

水尿管症は生まれつきの場合(先天性)と、後から発症する場合(後天性)があります。先天性の場合は小児期に発見されることが多く、後天性の場合は尿管結石やがんなどが原因となります。

いずれにしても早期発見・早期治療が重要です。とくに両側の尿管に影響が及んだ場合や、腎臓の機能に問題がある場合は、深刻な状態となる可能性があります。
重症化すると腎機能の低下や尿路感染症などの合併症を引き起こすことがあるため、症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。

水尿管症の原因

水尿管症の原因は、先天性と後天性に大きく分けられます。

先天性の原因

先天性の場合は、生まれつき尿管に狭い部分があったり、尿管の走行に異常があったりすることが原因となります。また、膀胱と尿管のつなぎめの異常により、膀胱から尿が逆流することも原因となることがあります。

後天性の原因

後天性の原因として最も多いのは尿管結石です。結石が尿管内に詰まることで、その上流部分が拡張します。
その他の原因としては、尿路系(腎臓、尿管、膀胱、尿道)や周辺の臓器にできたがんが尿管を圧迫することが挙げられます。さらに、手術後の影響や膀胱の機能障害なども原因となることがあります。

水尿管症の前兆や初期症状について

水尿管症の症状は原因によって大きく異なります。とくに先天性と後天性では、症状のあらわれ方に違いがあります。

先天性の場合

先天性の場合は、徐々に尿管の拡張が進むため、痛みなどの症状をほとんど感じないことが特徴です。そのため、無症状のまま経過し、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。

ただし、尿路感染症を繰り返すことがあるため、感染症の症状をきっかけに発見される場合もあります。また、拡張した尿管を体の表面から触れることで気付く場合もあります。

後天性の場合

後天性の場合は比較的急速に症状が進行します。とくに尿管結石が原因の場合は、激しい腰痛や背中の痛みといった症状が突然あらわれます。また、血尿が見られることもあります。
周辺の臓器に発生したがんが原因の場合は、がんの進行にともなって徐々に症状があらわれます。

また、先天性・後天性いずれの場合も、尿路感染を起こしやすくなります。感染すると高熱や腹痛が生じ、炎症が腎盂にまでおよぶことで腎臓でも炎症が引き起こされることがあります。さらに重症化すると敗血症(感染症で全身の臓器機能が障害される病気)などの深刻な状態に陥る可能性もあります。

水尿管症により腎機能が低下すると、高血圧やむくみといった全身症状があらわれることもあります。両側の尿管が影響を受けた場合や、もともと腎機能に問題がある場合は、とくに注意が必要です。

水尿管症の検査・診断

水尿管症の診断の主体は画像検査です。まず腹部超音波検査を行い、尿管や腎盂が拡張しているかどうかを確認します。超音波検査は簡便で身体への負担が少ない検査ですが、原因の特定が難しい場合もあります。

その場合は、腹部CT検査やMRI検査を行い、尿管の拡張の程度や原因となっている病変部位を調べます。必要に応じて造影剤を使用し、尿の流れを確認しながら原因を特定します。

また、感染症の有無や腎機能を調べるために血液検査や尿検査などを行うこともあります。がんが疑われる場合は、さらに詳しい検査が必要です。

水尿管症の治療

水尿管症の治療は、原因と症状の程度によって異なります。

先天性の場合

先天性の場合、手術による尿管の形成が根本的な治療となります。しかし、開腹手術は体への負担が大きいため、症状の程度や今後の見通しを考慮して、手術の適応を判断します。
尿路感染症を繰り返している場合や、腎機能の低下が見られる場合には、手術が必要となることが多いです。

後天性の場合

後天性の場合は、原因となっている病気の治療を行います。たとえば、尿管結石が原因の場合は結石の除去を、がんが原因の場合はがんの治療を優先します。
しかし、これらの治療は時間がかかるため、腎機能の急激な低下や重症感染症の危険がある場合は、緊急の処置として尿の流れを確保する必要があります。
あくまで一時的な処置のため、原因となっている病気の治療と並行して行わなければなりません。

水尿管症になりやすい人・予防の方法

水尿管症は、尿管結石の既往がある方、前立腺肥大症のある高齢の男性、妊娠中の女性、尿路系のがんや周辺臓器にがんのある方などに発症しやすいと言われています。また、尿路の手術歴がある方や、尿路感染症を繰り返す方も注意が必要です。

先天性の場合は生まれつきの要因によるため予防は難しいですが、後天性の場合はいくつか予防法が挙げられます。

まず水尿管症の原因となりうる尿路結石を予防するために、日頃から十分な水分摂取を心がけましょう。塩分の過剰摂取を控え、バランスの良い食事を心がけることも大切です。

前立腺肥大症のある方は、定期的な泌尿器科の受診と治療が必要です。とくに中高年の方は定期的な健康診断を受けることで、がんなどの病気を早期に発見できます。

尿路感染症を起こしやすい方は、トイレを我慢しないことや、入浴後は十分に体を乾かすことなど、日常生活での衛生管理が大切です。また、発熱、排尿時の痛み、頻尿などがあらわれた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

すでに水尿管症と診断された方は、医師の指示に従って定期的な検査を受け、症状の変化に注意が必要です。発熱や腹痛などの症状があらわれた場合は、すぐに受診することをおすすめします。

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